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Mariotトークセッション

面出:
今、北京のものを2件お見せしましたが、僕たちは名古屋にもいくつかの仕事があって皆さんも見覚えがあるようなものを少しいれてきました。
青木淳さん設計のルイ・ヴィトンの第一号店です。
この時にも随分、モックアップモデルという原寸大を作り、いろいろと光の当て方を変えながら実験をしました。
今は青い光ってのは多分使ってないのかもしれないけど、実際、青い光もいれてあっていろんなプログラムができるようになっています。

これはオアシス21という大きなバスターミナルです。
公共的なものの空気がこれだけ変わったってのは非常に稀なことだろうと思いました。
照明デザインでも非常にたくさんのことが設計者と共に仕組まれたので面白いものができた、という風に思ってます。
ただ単に光を与えるんじゃなくて昼とまた違った夜の楽しみ方なりができました。

これは国際照明デザイン賞という北米照明学会が主催する賞の、最優秀賞をいただくという名誉を受けました。
今、いろんなところで色のついた光も見るんですが、私たちはすごく青い光にこだわりながら色を作ってることが多いです。
青というのは空の残照も含めて、やはりオレンジ色の暖かい色に対してすごくキレイに見せるための秘訣だからです。
ですから照明のデザイナーが舞台であっても私達であっても「青」ということにどれだけ深い思い入れがあるか、ということで計られることが多いです。
これは駅前のR計画という計画中のもので、日建設計さんやたくさんのクライアントの方と一緒にランドマークとしてどう見えていったらいいのか、複合的な公共空間がどんな風な光だったらいいのか、とデザインしているものです。

その他、名古屋の三菱地所と高見というところに住宅の地区開発もやっています。
ひとつひとつじゃなくて街全体を、この高見という街をどう作ったらいいだろうかという、外区の計画・オープンスペースの計画・パブリックスペース部分の計画をやっています。
細かく「どんな風になったらいいんだろうねえ」と夕方から夜にかけて目をつぶってみてここを歩くような、そういうシークエンシャルなシナリオみたいなものを考えながら、丁寧にこれから作っていこうとしているところです。

ちょっと長くなりましたが建築照明の私たちの事例をお見せしました。
西沢さん、初めてみるヤツもあったでしょ?

西沢:
そうですね。名古屋のオアシスですかね?あれは初めてみました。
床で横断歩道のように光ってるあれは、どういう照明なんですか?


面出:
あれはフロストガラスの下から光をあてています。


西沢:
ああ、ガラスで!


面出:
あっという間に予定している時間が過ぎてしまいましたので、西沢さんにいろんなお話を聞きたいんですけど、西沢さんの自分のお名前でやる時と、SANAAの名前でやる時と、どんな風に違うのですか?


西沢:
元々はSANAAというのは僕が独立する時に同時に作った設計事務所でして、主には海外のコンぺを応募する時、それと国内でも大きな建物の場合は一緒にやった方がいいじゃない、と思って作りました。
主には海外のコンペ用に作った共同事務所ですね。

面出:
SANAAという名前でいえばヨーロッパなんかで随分仕事がありますよね?
今日のスライドにはなかったですけど。

西沢:
そうですね。いくつかやってますね。
まあ、実現したのは今のとこ無いですけど。


面出:
一番早く実現するのは何になるんですか?

西沢:
オハイオ州のトレドというガラスで有名な街があるんですが、ガラスアートを展示する美術館の別館を作っています。それが今年の夏に実現します。

面出:
それもコンペだったんですか?


西沢:
それはねえ....そうでした。コンペでした。
コンペっていうか人間を選ぶコンペみたいな感じ。コンペとはちょっと違う感じで、アメリカでは良くあるみたいです。過去の作品とインタビューで選ぶ。

その次にできるのは...スイスでオフィスビルを作ってるんですけどそれができます。それはノバーティスっていう世界でも結構大きな製薬会社なんですが、そこのキャンパスに作ってます。


面出:
僕だけじゃなくて思ってるのは、西沢さんと妹島さんのコンビがなんでそんなに海外で呼ばれちゃうのかな、と思っているんですけど。何かその内と外で違うことってあるんですかね?


西沢:
日本と海外でってことですか?
僕ら、海外の仕事があることよりも、むしろ国内で仕事が無い...たとえば妹島なんか見てると同世代の建築家と比べて国内の仕事が圧倒的に少ない。
僕なんかも同世代の建築家、たとえば塚本さん、手塚さん、佐藤さんとかと比較するとみんなもっといっぱい作ってるのに全然少ないですよね。
そういうのがまずひとつにはあると思います。


面出:
それは海外の仕事が忙しくて国内の仕事ができない、というのが現実なんじゃないんですか?

西沢:
どうですかね。電話かかってこないですからね。
そういう事もあって海外のコンペに結構多く応募するわけですね。
指名コンペもありますがオープンコンペに結構果敢にチャレンジしています。元々SANAAというのはそういう目的で作ったものですから。この前スイスのローザンヌで大学の中の図書館のコンペに勝ったんですが、それもオープンコンペでしたね。日本人は何人かは応募してましたが、そんなに多くなかったですね。

面出:
ではSANAAではいつも世界中で起きているコンペ情報ってのをわかってて「あっ、これはちょっとおもしろそうだからやろうよ。」とかって西沢さんなり妹島さんなりが言う訳ですか?

西沢:
そうですね...まあ、所員の人が外人の人もいてやっぱりヨーロッパの人ってのは日本人もそうですけど自分の地域に深く根ざしてるじゃないですか。そうするとスペインの人ってのはスペインのことにすごく詳しい訳ですよね。


面出:
SANAAには今、何人の外国の方がいるんですか?

西沢:
スペインの人が一人と、スウェーデンの人が一人と、オランダの人が一人、アメリカの人が一人。あとフランスの人が一人ですね。


面出:
日本人がもっとたくさんいる?


西沢:
日本人はですねえ、20人弱くらい。
でも、金沢が終わって減りました。金沢の時は30人くらい。
あれが終わって大きな建物がなくなって、海外の仕事ってのは結局、現地の免許をもってないので、100%僕らはやれないんですね。


面出:
そうですね。

西沢:
現地の資格をもってるプロの建築家とジョイントベンチャーという形でやるんです。
そうすると我々がやることっていうのは最初はすごく多い訳ですけど、どんどん現場が進んでいくとやることが小さくなってきて、やることが進めば進むほど、現地の人のやる事が大きくなってくるんですね。
でも我々がやる仕事ってのは元々ほとんどコンペで始まってるから最終的にやることっていうのはもうコンペで成し遂げられちゃってるんですよね。
そういう意味では海外の仕事ってのは面積ほどは忙しくない。
多くは現地の人に託してるっていう感じですね。


面出:
ただ、建築ってのは最終的にできてくるものを管理するっていう意味では、やっぱり出来映えに対してものすごく難しいじゃないですか。
海外の仕事をやる時に、「最後こういう風にできちゃったのか〜」って我々照明なんかの場合は必ずそうなるんですよ。


西沢:
そうでしょうね。いや、僕らももう、それが心配で、心配でしょうがないですね。
だいたい僕らは設計期間と施工期間っていうよりはできあがる直前まで設計期間がずっと続いてる...こんなこと言うとクライアントの人に驚かれちゃうんですけど。
面出:
ああ〜。

西沢:
やっぱり色をどれにするか、とか細かいことの悩みってのは現場に入っても続く訳ですよね。で、可能な範囲はやっぱり立ち上がった建物を見て感じて「ここはこうした方がいい。」という風に、可能なとこは常に最後まで考えたいというところがあるんですね。
結構、日本の仕事でも現場には足繁く通って、考え方を変えて実物を見て新たに考え直すというのも多かったですけど、海外の仕事の場合はそういうことは絶対できないですからね。
設計期間は我々がやって、現場は彼らがやってとスパッとわかれるので、それは非常に心配ですよね。


面出:
たとえば海外でも谷口さんとか磯崎さんとかたくさんの先達がいい仕事をしてたりしてますが、海外の仕事は品質が確保されないから‘イヤ,という人もいるそうですね。
要するに施工精度が私の基準に合わない。
ただ我々から一般的に見ると妹島・西沢っていう名前は圧倒的に日本の建築家として有名になってしまった。ですからたくさんの若い人たちがSANAAの事務所に「行きたい!」って並んでるんじゃないんですか?

西沢:
いや、あんまり並んでないです(笑)


面出:
でも今でもそれだけたくさんの外国籍のスタッフがいるってことは、まだたくさんSANAAに入りたいって人がいるんじゃないんですか?


西沢:
そんなにいないですよ。
海外の人からはやっぱり日本は遠いですからね。
日本に来るってだけでかなり若く野心的じゃないと...建物の造りとかもヨーロッパの建築とは全然違うから、なかなか難しいんじゃないんかな、と思いますけどね。


面出:
事務所の中では、そういう風に海外から来た人も含めていろんなコミュニケーションがあるんだろうと思うんですけど、海外の方とコミュニケーションが難しいと思うことはないんですか?


西沢:
それは基本的にそれはもうずっとそうですね。
日本人でも理解しあえるっていうよりは、むしろお互い誤解しあってる感じが強いですね。
その為にディスカッションがある、というか。議論しながら徐々に相手がいかに自分と違うことを考えているか、ということがわかっていく。そういうのは結構ありますね。

面出:
それはじゃあ、日本人だからとかスペイン人だとかオランダ人だからという、そういうメンタリティーじゃないってことですか?


西沢:
オランダ人てこういう人だ、とかフランス人てこういう人だ、とかそこまでまだ僕は理解してないですね。
でも、やっぱりヨーロッパの人たちと議論して感じたのはなんか日本では最終的に一つの理解にたどりつかないことはよくないことだ、というそういう前提があるような気がするんですね。
でもヨーロッパの人たちと議論していて感じるのはお互いの意見が違うということがはっきりするのもひとつの結論というか...その必ずしもひとつの理解に収束しないことがよくないという風には考えられていない気がしますね。

面出:
違いがわかる、という?

西沢:
違いがわかるということか、スペイン人とフランス人がいかに違うか、ということがやっぱり色々な角度から明らかになる、ということですね。
それはある意味で理解とは言わないですけれども、違った価値観で作り上げられていくものを違った角度から眺めるために必要なものだと思います。

そういうことを僕はヨーロッパの人たちにすごく学びましたね。
特にヨーロッパってのはすごい不思議なとこで、すごい狭いとこに違う人たちがいっぱい集約してる訳ですよね。
マドリッドとパリは2時間くらいで飛べて、パリからミラノも2時間くらい、チューリッヒとロンドンもだいたい東京と仙台、もしくは九州と名古屋というような感じの距離で違う国の違う首都が集約してる訳ですね。
あのネットワークというのは立派。
またそれだけ集中していながらもあそこまで違う人たちが今の今まできているというのが本当に驚きでした。
僕は日本というのはやっぱり、日本の各地域もそうですが、韓国とか中国、もしくはタイというような人たちも、ヨーロッパの人たちが成し遂げたような、ある違う人間が集合することで初めて意味を為すようなまとまりっていうんですか?そういうものをもうちょっと僕らは考えなければいけないのではないか、と思いますね。

今ユーロのような、アジアで統合された通貨を造るようなことは無理だと思うんですね。
この辺でもすごい差がある、と思いますね。


面出:
全般的にね、日本人の建築家も含めてグローバルにというか結構海外に行くようになってきた。
日本にも海外の方がたくさん来るようになって、日本人が英語をしゃべらない、ということに対して少しづつストレスがなくなってきつつあるかな...と思うんですね。
いいのかわからないけど、やっぱりヨーロッパの合理主義的な考え方の行き詰まりがどっかにあって、レム・コールハウスが中国を狙う、みたいなことも含めて考えてみると、やっぱりアジアとか日本も含めたこの辺に隠された何か違う価値観なにか魅力が期待されてるんじゃないのかな、と僕は思ったことがあるんですが。


西沢:
アジアに対して?


面出:
うん。アジアに対して。日本はそのアジアのひとつ、僕たちもアジアだといえるかどうかは難しいんですけど。

西沢:
まあ、中国は明らかにレムとかポール・アンドリューにしてもそうですけども、欧米の建築家がすごく注目してますよね。
中国は、これからのマーケットとして見てるんだと思うんですけどね。
日本はもうちょっと違った目で見られてると思うんです。