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Mariotトークセッション

面出:
では、時間も限られてるんで、今度は僕の用意したスライドを皆さんにお見せしたいと思います。

僕は、特に北京で やっているプロジェクトを持ってきました。
私達のスタッフは東京に今19人くらいいて、4年前にシンガポールにわけあって、というか少し日本を離れたところで自分達が叩かれたりすることによって気持ちも鍛えられるかな、というつもりで事務所を開いて、今シンガポールに7人いるんですけど...
そんなこともあって急に海外の仕事と日本の 仕事の比重が同じくらいになってきて、忙しくしています。

これはナショナルグランドシアターという建物、ポール・アンドリューというフランスの建築家の設計です。
ここにCCTVという、OMAという人がやってる建物も建ちます。
この2つが私たちが北京で今やってるプロジェクトです。
これはもう、去年の12月に完成してなくてはいけなかったんですけど、まだできていません。多分今年の6月・7月くらいでしょうか。
この大きなチタン製の屋根の中に3つの違ったオペラ劇場が入っている、というものです。
大きなUFOのようなものがちょうど天安門広場の横、紫禁城の目の前に建てられています。
私たちへも随分昔から「照明デザインは大切だから見積ってくれ!」と言われて、こういうことやるには見積をあんまり安くしてもいけないし、どうしようか、一生懸命やるにはお金もかかるよなとか考えながら...でも高めに出すと必ず駄目だっていうんですね。
案の定「こんなお金ないよ」「誰が出すんだ」とか言われました。

最後の最後になって一番大切なこのドームの中の照明計画だけ責任もってやってくれと言われ、建設途上で参加しました。
ですから私たちは全体照明計画に責任をもつ立場では無いんですが、一番大切な難しいドーム空間の光環境を計画しています。

これはエントランスです。
水を張ったところの中を潜っていくんですが、ポール・アンドリューとは大阪で同じようなドームのミュージアムをやったので、彼は是非とも私達にという話だったんです。
こういう大きな空間なので、明るさだけ考えていくと出来ちゃうんですけど、そういう話っていうのは照明計画とかデザインではなくて、光を与えるという電気設備の一環でしかない。
いろんな時間帯に素晴らしく見えて「さすがオペラ劇場だなあ」といわれるような感動を呼ぶ為には、もう少し細かく建築の形だとか見え方だとか材質だとか、そういうものに従った光が丁寧に考えられていかなくちゃいけない。ということで、僕たちはこの中でも間違いが起こりやすいことを潰していくような、そういうやり方をしています。

これは私達が空間を理解するために作ったコンピュータのシミュレーションです。
切り取られた、非常に特徴的な赤い色をした木の天井がいろんな場面で見えてくる、それを背景にしてオブジェクトが美しく見えなくちゃいけない、背景はどういう風にバックドロップをつくるんだ、ということで私達はいろんな視点・ビューポイントというものをシークエンシャルに考えました。
ここには代表的に12くらいあげてるのかな。当然体育館でないのでバッーと照らしちゃえばいい、というのではなく、一つ一つの情景をきれいに作っていこうと解析をして、それに従って照明がどこをどういう風に照らすとかっこいいかということを検証しながら理屈を積み上げていった。
いつも理屈ばかりじゃないんですけれども、この場合にはかなり理屈を積み上げ
ました。
そして、その中の天井のどこをどういう風に照らせばいいのかということを、蛍光灯でやろうとか、ウォールウォッシャーでなめあげようとか、アッパーライトゾーンのスポットライトを少し足そうとか、明るさの分布やエネルギーがどのくらいかかるってことを説明しながら、建ちつつあるその現場に入って、照明効果を説明しています。

中国でこういうやり方をするのは初めてでしょうから、僕たちはクライアントに対して、建築照明を少しづつ説明しながらやっています。

例えば、現場ではフランス語と英語と中国語と日本語が交じり合うんですが、ポール・アンドリューという建築家も「う〜ん、おまえ達が考えてることは解るけど俺は違うんだ。」ということもあるし。
でも、どうしてそう考えたかを丁寧に説明すると「わかった。」という風なことになったりしました。

そういうバトルをやって一応こちらは設計者の統一戦線を張るのです。
クライアントは非常に紳士な方で「よし、そういうことだったら、それでいきましょう!今コンクリートうっちゃってるけどそこ、はつりましょう。」みたいな事が随分でてくるんですね。
その上で、僕達は、それに対して責任を持たなくちゃいけない立場でもあるし、みんなの賛同もうけなくちゃいけないので、絵に描いた餅じゃなくて、現場でそういう光を与えるということはどういうことなんだ、という実験を繰り返すんです。
そうすると「ああ、そうか。この天井を照らす、ということはこういう効果があるのか」「それを組み合わせるとどんな風になっちゃうのか」とか。それが大切なんです。ほんの一部の実験なんだけど皆が「ああ、建築って光をうけるとこうなるんだ。」ということがわかってくる。

もう一つ、去年の年末にやっと着工したCCTVというプロジェクトです。
中国の世界制覇を狙う国営テレビ局です。
これは手前の建物と奥にちょっと隠れた建物があり、二つの建物が大きな敷地に建っています。
レム・コールハウスがデザインしてるんですが、光というものは非常に大切だということで、私たちはスタジオの照明を抜かしたその他の全ての場所に関わっています。
ロッテルダムにOMAの事務所があるんですけど、毎月私たちの所員が私も含めて5名くらい行って、建築設計者との打ち合わせを重ねました。
非常にみんなが忙しくいろんなところで分担してやっていますので、その細かいアジェンタに従って光の計画をしました。

一番大切なのは、建築が何を考えて、どういう失敗をしそうで、どういう野心があって、ということをこちらがちゃんと学ぶということだと思います。
相手の力量・期待の深さみたいなこともそうです。
しかし、理解したと思ったら彼らはまた設計を変えてくるので、日に日に変わっていくんですけども、建築の出来上がったものに光を与えるんじゃなく、建築空間そのものの構造なり材料を決める時、光をこういう風にやるから床の材料はこうしよう、という風な話も含めて打合せしています。
簡単にいうと、中国の政府の人達は、こういうかっこいい建物が夜は外からどういう風に見えるのか、ということにやっぱり一番興味をもっているだろうと思い、私達はこの建物の外観がどんな風に変化するのか、昼だけでなく夕方から夜をどのように迎えるかということを考えました。
まだこれは予断を許さなくて、非常に難しいところもたくさん残しているんですけど、私達のプロポーザルは昼の反射しているガラスのファサードが、夕方になって今度は中の光を伝えてくる。
下から照らしあげることによって表情を変えてくる。
もっと時間がたつと、ダイヤグリッドという一番外の構造だけがシルエットになって中がどんどん点いてくる。
本当にピキピキと音がしてダイヤグリッドの光が点灯して、それが変化してくる。
中国ですから、ちょっと色も必要かなと思ったら、OMAは「あまりやってくれるな」と。

一番最初の西沢さんのスライドにもあったんですけど、やっぱりガラスファサードというのは外を映しだしたり、非常に不可思議だと思います。
夜になると明らかに建築のいろんなものの要素が反転する。
特にOMAはこのダイヤグリッドという構造的な形が、夜にこそ象徴的に見えるんじゃないか、と考えていました。
そういう期待感なんですけど、こういう風にぴったりいくかどうかってのは難しいですね。
こういうものがどう見えるかというのは、明らかにオフィス照明の中の光がどういう風に整えられるか、という事と非常に関係してくる。
ミースファンデルローエの、ルミナスシーリングのようなものがすごくうまく出来ればいいんじゃないか、という風にOMAは思っていたのです。
しかし、そういう事はエネルギー事情の中でなかなか許されない。
やっぱり、オフィス一面を光天井にするなんてことは、平米14Wだ、17Wだっていう話ではきかないですね。
ですからいろんな代案を出しながら、たとえばシステム天井で行く場合のエネルギーコストがどうか、オフィスに対応する仕組みというのは一体他の設備とどういう風に組み合ったらいいのか、そういうことを提案しながら「これでいける!」っていう算術をします。
しかもたくさんの異なる表情をもったオフィスが一つ積み上げられた街みたいなものですから、こう見えてくる、ということを僕たちは建築の材料と光というバリエーションの中で考えているわけです。
そして、全般的な明るさっていうのはどれくらいとれるのか、こういう風に個室でかぎられた通路はどのくらいの明るさなのか、という風なことを提案しています。

これはTVCCというもう一つの建物でホテルと劇場が入るような、これもちょっと変わった建物です。
外観をちょっと照らしたり、カッパドキアのような風貌のホテルのユニットに光をいれたりしてます。
こういうものというのは、模型を作って、私達も光を当てながら「こんなの駄目かな、あんなの駄目かな。」って半ば遊びながら光を当てていると、建築家が「おっ。それはおもしろいな。」という風に...

これは理屈と全然違った話なんですが、西沢さんも模型作って自然光にさらしたりします?

西沢:
そうですね。そういうのはよくしますね。
特に僕らの場合は、原寸大だったり 1/5だったりと模型も結構大きいものを作って、そういう光を見ますね。

面出:
僕達も、音響モデルなんかは1/10で作るのでそれを借りる事もあります。
照明では1/10のモデルを作ると、スケールがしっかりしてるので、細かいことを作らなくちゃいけないので大変なんですけども。
建築的にはそうですね、1/20とか1/50で見ていったりします。
でも、このくらいのスケールになってくると西沢さんのさっきの話じゃないけど、いろんな材質の特性をなかなか予測できないですね。
だから、大雑把な光の入り方ってのは白いモデルで代用しながらやるんですが、だんだん材質感なり、反射特性が気になってきます。

OMAっていうのはレム・コールハウスって人だけがおじさんで後はみんな若い人達だけでやってるアバンギャルドなデザインチームなので、今までにない光をどこに仕込もうかということに非常に野心的です。
しかし、これだけ大きいからどこでもそういう事やっちゃうとヘトヘトになっちゃうんですね。
中国人の「なんでこんな事をやるんだ」という質問に答えるだけで大変になっちゃうんで、できるだけレム・コールハウス自体は一般的にさらっといくところはジェネリックにして、どこを光のデザインで勝利するのかってことを絞ろうという戦略です。