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Mariotトークセッション

面出:
僕と小嶋さんとは20年位前に、小嶋さんが原先生の大学院の研究室に来ていた頃に知り合いました。
あの頃に発光ダイオードとか使ったりして、東大の生研に泊まり込んで、光仕掛けのロボットを作ったりしていました。
それ以降、小嶋さんと建築の仕事を一緒にしています。私達建築照明デザイナーって言うのは、あまり照明器具をデコラティブにデザインしなくて、出来れば空間に照明器具が無くて、「あれ照明器具はどこ」って言いながら、だけど気持ち良い空気・光が整っている...その事によってみんな幸せになれると信じています。
ですから小嶋さんのプロジェクトにあったように、デイライトをどう入れるかということも非常に大切なテーマです。
私自身も小嶋さんのような、また磯崎さんなり、いろんな建築家の人達と、その夢みたいなのを共有しながら光で一緒にコラボレーションするということを仕事としています。


小嶋:
でも、僕の場合は少し特殊だと思います。
設計の実務はどこでも習っていなくて、大学院に長い間いたんですけれど、その時に本当にプロフェッショナルに仕事していた人で、お付き合いした人って面出さんだけだったんですよね。
建築の設計を研究室ではやっていませんから、展覧会のためのオブジェを作ったり、オブジェって言ってもこの部屋なんていっぱいになっちゃうくらいのものなんですが、そういう時に面出さんから、照明の光だけでなく、建築は光で出来ているとか、光とはどういう事なのかとか、例えば光源が見えるのはダメだとかを教わりました。
そうやって面出さんからなるほどなって教わった事を、照明でない建築の空間でどうやって作ったらいいんだろうって考える順番になっていますね。


でも小嶋さんの建築設計の作品の中には僕らもドキドキするようないろいろな仕掛けが、デイライトに限らずありますね。
小嶋さんもそうだし、隈さんもそうだし、竹山さんもそうだし、みんな原広司さんの建築の中の光というものを、非常に大切にしていらしたと感じています。
僕自身が今からお見せするのは、どちらかというと僕の「仕事」であって、建築家の先生が「私の作品は」って言うのと違って、僕らはこれを「作品」とは言いません。
たくさんのいろんな出会いがあって、コラボレーションという共同作業があって、僕達は僕達なりに、建築っていうものの空気を最高にするために、光を考えてお手伝いしようという感じなんです。

3年前にシンガポールに事務所の分室みたいのを設立したこともあって、海外での仕事も増えてきました。
今、国内の仕事と海外の仕事では、海外の仕事が少し多くなっちゃったくらいですね。
シンガポールでは、例えば来春に出来るノーマン・フォスターの最高裁判所を僕達が照明デザインすることになったり、ケン・ヤンってマレーシアの建築家がやっている国立図書館もやっています。
その他チャンギ・エアポートとか、地下鉄の駅とか、シンガポールでは、そういうガバメントの仕事が多いです。
また、ザハ・ハディッドって建築家とアーバンスケールの都市計画の中で光がどうなるかっていうプロジェクトが延々と続いていたりします。
このところ急に私達が国内の仕事だけでなく、訳分からない沢山の種類の英語の中で仕事をしています。
...という事で、今日お見せするのは北京の仕事を持ってきました。


北京の仕事は二つだけ持ってきました。
ナショナルグランドシアターといって、国立のオペラ劇場です。
ここに紫禁城という北京の中心がありまして、ここに天安門広場がありますから、その隣にとんでもなく場違いな、宇宙からUFOが降り立ったような建築が建っています。
ポール・アンドリューというフランスの建築家がデザインしています。
これは来年の夏くらいには竣工する予定で、現場でいろんな実験を繰り返しながら作っています。
ずっと前の目抜き通りを行きますと、理顕さんのやつってこの辺かな、建外SOHOとか。このへんにワールドトレードセンターとか。なにしろ北京はいろんなところでクレーンが仕事してます。
CCTVという中国中央電視台という、中国で言うNHK、国営テレビ放送局の派手な建物が、ここに建とうとしています。
着工は予定されていたものより一年以上遅れているので、これはもうできないんじゃないか言われていましたが、9月21日着工とアナウンスが流れて、その通りになったので、「これは出来るんだ、建つんだ」と思いました。

こんな建物です。
ポール・アンドリューという人が建てている北京のオペラハウスです。
これが天安門広場ですから、すごく大きなものであることが分かります。
私達は大阪南港にできたマリタイムミュージアム(なにわの海の時空館)をお手伝いしたことがあって、ポール・アンドリューは私たちを指名してくれたそうです。
これも最後の最後になって、こんな時に私達がって言うくらいの時期なのに、照明のデザイナー、プロがアポイントされていなかったんです。
こんな大切なプロジェクトに。それで中国のいろんな都合もあったんでしょうけれど、最後に私たちがアポイントされて。複雑なんですけれど、この巨大なチタン製のドームのインテリアの照明計画を協力しています。
エクステリアは私たちの責任外ということになっています。
紫禁城が見える現場です。こんな建物です。
大体中国というのは、こういうのを設計はしてもらいたいけど、設計したら後は勝手にこっちにやらせてくれとなりますよね。

ひどいっちゃひどいですよね。

ひどいでしょ。

ちょっと油断すると何が起こっちゃうか分からない。

全然知らない内に出来ちゃうとかもあるし。あちらの事情に従って「先生分かった、あとはこっちがやるから」ってメンタリティが多い。
その中でこのポール・アンドリューという人は非常にしたたかですね...なにしろ管理までキチンとやると。自分のところの、フランス語を喋る人が常駐して結構やってるんですよ。見事なものです。
中国の技術でなかなか上手くいかなかったり、当然新しい素材を使ったりということなので、どうやったのか分かりませんが彼らの事務所ってのは最後の竣工までここで粘っている、そんな感じです。

大建築家でいろんなところでやっているから、そんなに丁寧にやっていないのかと勝手に思っていたけど、違うんですね。

でも理顕さんの建外SOHOでも現場に随分行ったんでしょ。

あれは10人くらい張り付いていました。基本的にはそこをちゃんとやらないとね。

要するにそういう事なんですよね。
建築も当然そうですけど、光のデザインというのは現場に行ってヘルメット被って、こーやるんだって、絵に描いた餅じゃなくて、自分達の意図みたいのが現場でどう出来ているかってことに責任持たないことには、何もなくなっちゃう。


それは、やってる本人も、やらないと全然おもしろくないですよね。

だから現場に行かないで、後で出来上がったものにブーブーと「俺はこんなこと考えていない」って地団駄踏んでも何の役にも立たない。
自分の精神的にも良くないし...
だからできるだけ僕達はわずかな事でいいんだけど、現場が出来る最後の最後まで責任を持たせてくれと言っているんです。
これはパースです。こう水の中に入っていってあちら側に抜けるという。水のトンネルを通って行くと中にオペラハウスがあってコンサートホールがあって、実験劇場があるという三つの劇場がこの巨大なチタン製のドームの中に飲み込まれている。で、この中に木の赤い内装が天井にずーっと貼られているんです。


木なんですか。

これが木なんですねぇ。
僕達はこの建築自体がどう素晴らしい照明器具になるのかと考えます。
トップライトが入ってきますので、昼間外の明るい光が入ってきたときにすごく重たく、死んでしまいたくなりそうに中が重たく感じられるんじゃないかなって考えました。
昼間の話ですね。ちゃんと考えたら、とんでもなく大変な空間です。
照明というのは、ネガティブに考えると心配事ばかりで眠れなくなります。
でもあんまり悲観しちゃうといけないので、良くなるんだ!とういう信念を持って進めます。
僕達はCGでモデリングをしたりしてどういう空間なんだと、12個のビューポイントを決めて、必ずこのポイントは外せないってものをシミュレーションしていきます。
そのポイントで、ヴォールト天井っていう木の、非常にかっこ良く見えなくちゃいけない天井がどう見えるんだってことを分析していきます。
全てのところでかっこ良く処理しようってのではなくて、一番プライオリティの高い天井のその部分を分析しながら、体育館じゃないので全部照らしあげるというのではなくて、かっこ良く、どうやったらいいんだと細かい分析をしながら進めています。
尚且つ、細かくなりますが、ここで言うところの蛍光灯で天井をアップライトする部分がここであるとか、アップライトやウォールウォッシャの壁面はここだとか。
これが私たちのデザインの戦略ですね。
「この通りにやれば上手くいく」とは言っていますが、正直分かりません。
これはやってみないと分かりません!でも、必ずよくなるんだと信じてます。


おもしろい事されてるんですね。

非常に難しいんですけど、おもしろいですね。

どう知覚するかって事の領域分けから入っているわけですよね。

そうです。要するにいらないところとかプライオリティの低いところよりは、そこに来た人がどう視覚が連続するかという事を優先している。
天井を照らすためには、このブルーのところはあまり光はいらないだろうなと。これは天井の照度レベルですね。
それを分析しながら「こういう事だ!」って決めてかかって、「こういう所はこれくらいの光がこの空間にはあるよ」「こういうベクトルでここを照らすよ」とかを言いながら、現場で「よっしゃここだ!」ってところに当てつけています。
まだまだこういうことをやると、天井にホットスポットが映りこんだりして、きれいに照らされるって事以外に、ものすごくネガティブチェックが沢山あるんですが、毎月のように北京に行って、こういうことをクライアントやポール・アンドリューと話して、「そうじゃねーだろー」とかお互いに言いながらやっています。この人はフランソワと言って、北京にずっと常駐してやっている番頭さんです。
建築家だけでなく、クライアント筋も私達がやっている議論に加わって「いや、そこまで私たちはできる」とか「できない」とか。私達が「これはヨーロッパの照明器具持ってくれば良い」とか言っているのをみて「中国製でやるんだ」とか言っています。
私達もしたたかにプレゼンテーションしながら、クライントの方が非常に紳士な方なので、そういう意味でクライアントも見事なものです。
現場で実験したり、現場で光を作っていくという事がどれだけ大切かって事をクライアントに見せるために、僕たちも模擬的に実験しました。
これをやらないとなかなかみんな、アーキテクチュアルライティングは分からないですよね。

納得してくれませんよね。こういうことをやらないと。

分からないんですよ。
言っている事に、みんな騙されているんだと思う。
だから部分的で良いから、私が言っているのはこういう事なんだ、という実験をします。

見ると、照明くらいみんなが納得してくれるものもないですよね。  

そうですね。やっぱり一見にしかずですよね。
私たちは4台でやっているけど、実際には4台でなくて16台使うんだけど、この4台の効果がほぼ4倍になるんだぞというような事を付け足しながら、やっています。
それに少しずつ光を足す、蛍光灯だけでなく、メタルハライドランプを足すというのがどういう事なのか、とか、そういうことをやっていますね。
ポール・アンドリューも基本的には照明デザイナーの経験なり、私建の情熱を非常に信頼してくれているんですけれども、本当に心配し一緒に考えてくれています。