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Mariotトークセッション

 プレゼンテーションの難しさ

川床
今のお話を光・音に転じますと、もっと説明しにくい部分が多いと思います。その辺はどういうふうにプレゼンテーションされるのでしょうか?

安原
非常に難しいですよね。
要は建築もインテリアもそうなんですけれど、デザインされた形があって、そこに光を表現していかないといけないじゃないですか。光だけどうだっていうことになってくると、数値化されたものしか話ができなかったりしてくるんですよね。
特に物販店ですと色温度の提案や光の抑揚というものになってしまいます。僕らもプランしていく上で頭の中でボリューム感を考えるんですが、例えばウィンドウが5の光だとしたら中央部分は2・一番奥が3・両サイドが2、そういう光のボリュームバランスの話をします。
そこで平均照度とか言っても意味が分からないものになってしまうので、基本的な明るさを設定した時の5だ・2だ・3だ・1だとそういう置き換えでのプレゼンテーションになります。
しかし飲食店の場合は、どうしても表現しづらく、今までやってきたビジュアル資料とか、ここの壁面はこういう光でこうなりますよ、というものがコラージュ的に必要になってきますね。
だからさっき仰ったように「でもできたら違いますよ」というのは本当にそうだと思います。この空間だからこうなっているけれども、「今やろうとしているものは、もっとすごい」「もっと違うものに見えてくる」とか、すごく補足的な言葉がたくさん出てきて、オーナーさんが頭の中でそれを処理しきれずに、「あー分かった」って終わってしまう事が多いんですよね。

川床
オーナーさんもそうですけど複数のクリエーターが一つの対象物を扱う場合、それぞれの言葉が違うと思うので、言葉のやり取りはもっと難しくなるのかなと思います。
辻さんは今のお話を聞かれていて、少なくとも今の二つのお話は視覚的にとらえることのできる話なのですが、「音響は空気のデザインだ」と仰っているように、もっと捉えどころのないものだと思うのですが...

そうですね。プレゼンテーションがもっとしにくいですね。(笑)
視覚的要素の鄭さんのジャンルも安原さんのジャンルも非常に難しいと仰っているのですが、音の場合は更にもっと難しいです。
自分の事務所に実験場としてカフェを作り、そこでシミュレーションしてこんなイメージですとプレゼンテーションしています。しかし完全に再現することはできませんので、あとは口で表現したりするんですが、それでも不十分な状態です。

私自身も最初の設計図面が上がってきた段階で、頭の中で想像して、天伏図を見てスピーカーを配置・配線し、後は現場で決めます。現場で決める要素はどういうのかというと、スピーカーは固定されているので現場で動かすことはできない。そうすると唯一現場で動かせるのは、スピーカーのボリュームとなり、これを現場で決めていく事になります。そのためにスピーカーの配線を、直列で繋ぐのではなく並列で繋いで、全てのスピーカーボリュームを可変できるように設定します。その分、電気工事の方からすごく嫌がられます。
つまり、直列ですと配線が非常にシンプルで短くてすむんですが、(並列だと)全部アンプまで戻すので、何十個となってきますとすごい配線になります。
最初のうちは、いつの間にか工事が進んで天井が貼られている事がありました。だから今は早い段階から打ち合わせをしています。

そして音のボリュームをコントロールしていくのですが、空気感に繋がる・なにか直感的なその場の空気を完成させる音チェックは最終の段階となります。
インテリアに家具が入り、厨房施設が整い、完全に整った形で音チェックをします。
その段階からが勝負でして、音の陰影をどういう風に・ボリュームをどうコントロールするか、しかしその段階でもお客さんは入っていないので、あくまで仮調整です。
ブティックやレストランのお店が始まってから本当の最終調整が始まり、お店の引渡し時、お店が安定してきた時、それぞれのステップで調整していくというやり方を私はとっています。