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Mariotトークセッション


【光によって、商品のデザイン・色が変わってきている 】

面出 卓さんが持ってきてる、映像を見せてもらえますか?

佐藤 いろいろ光で感じることはあるのですが...
このスライドを何故持ってきたのかと言いますと、皆さんもしかしたらご存知頂けているかと思うのですが、このクールミントガムは、約35年売られ続けていたものをリニューアルしたものです。
リニューアルしてからも10何年たちましたけれど、これをリニューアルするときに、実はお店で売られているときの明るさということを考えてこの色にしました。
昔はお菓子屋さんというのは暗かったわけです。
薄暗い。衣料品店から何から、駅前の商店街というのは大体薄暗いお店が多かった。
そういうところで設計されていたので、非常に微妙なグレーっぽいブルーで、何ともやわらかい色だったんです。
ところが、私がこれをリニューアルする段階では、コンビニエンスストアがそこら中にあるような時代でしたから、既にものすごく明るかった。
その明るいところに中ぐらいの明度のものを置いても目に入ってこないと思ったんです。
チューインガムをデザインするときに、コンビニエンスストアの光から変えたいというプレゼンテーションってなかなかできないじゃないですか。
それができたらすごいんですけどね。
だから、実際問題のコンビニエンスストアの明るい中で、物がどう見えなければいけないのかと考えたときに、やはり思いっきり暗くするところは暗くしないといけないと思いました。
例えばペンギンを認識してもらうにも、いわゆるコントラストを強くしないと、ペンギンが見えてこないわけです。ですからバックを思いっきり濃くしました。

営業の方はそれを見ると、暗過ぎるんじゃないかと言われました。
暗いというのはノーですから。
そうすると、なぜ暗いのか、色を濃くするのかというときに、この理論をお伝えしました。
今は昔のお菓子屋さんと違うんですと。
蛍光灯がものすごい並んでいるところできちっと見せることが必要である。
そして、クールミントというのはもともとブルーっぽい色でしたから、その財産も残さなきゃいけない。
その財産を残した上で見せるためには、明るくしていっちゃうとほとんど存在感を失うので、思いっきり濃くして、白いところを、そして金のペンギンをくっきりと見せる。


面出 僕、この前のクールミントはあんまり覚えてないのですが、これよりもっと明るい色だったんですか?

佐藤 明るかったです。どちらかというとグレーっぽい感じの色です。
詳しく申し上げると、これの少し前にグラデーションがついてるというのもあったのですが、基本的に昔のは、すごく中ぐらいの、ある意味ですごくおしゃれな色なんです。いわゆるデリケートな色です。


面出 だけど、1500ルクスのコンビニでは、そういうデリケートな色より、もっとペンギンがぱっと浮いてくるようなコントラストのほうがいいだろうと。

佐藤 ロッテという会社にとっては、チューインガムはビジネスの一つの柱です。
それがもし駄目だと大変なことになります。
リニューアルをするということは、今までのお客さんが離れる可能性もある。
だからやはりかなり目立たなくてはいけない。
どのような商品も、どう目立つかということは必ず言われます。


面出 そうだよね。

佐藤 店頭に置かれる場合には目立たなきゃいけない。
その目立つって、じゃあどういうことなのかというと、ものすごく明るい蛍光灯の光のシャワーを浴びている中で、かなり強く主張しなければいけない。
ですから、今のコンビニエンスストアに置いてある商品群と、昔のお菓子屋さんにあったお菓子とを並べて比べてみるとおもしろいと思います。
光によって、商品のデザイン、色が変わってきているはずです。
コントラストが強い。
それから強い色、派手である、ほんとに痛いほど強いものになってますね。


面出 なるほど。

佐藤 それはどうしても仕事の現場で強いられることです。
よくも悪くも現実なので、やはり目立たなきゃいけない。
つまり光は、こういう物のデザインにも大きく影響を与えているということなのです。

逆にこのピュア・モルトは、今からもう25年前1984年に発売されたので大分昔ですが、このときは、店頭では目立たない、周りで大きい声を出しているものの中で静かに存在してたほうが相対的に目立つんじゃないかと思い、すごく地味なデザインにしました。

面出 これは鮮烈でしたよね。

佐藤 みんなが大声を出しているところで声を出さないと、逆に目立つ。
商品というのはみんな、「私を買ってください」と大声を出している。
「僕を見て」「私を見て」と商品がみんな言っているわけです。
そういうときに目立たせる方法は二つ。
圧倒的に大きな声を出すというのと、静かになっちゃう、その二つしかないなと思います。
それで、どちらをやるかというと、圧倒的に大きな声を出すというのは無理だなと思ったので、静かな方向を選んだらどうですかという、そういう理屈をプレゼンテーションしました。


面出 それがこれなんだね。

佐藤 だから意外と、専門家ではないですが、光の中でどう見えるかというのは、やはり当然考えざるを得ない。

これはデザインの解剖というプロジェクトで光とは直接関係ないのですが、日常あるものがどういう背景でできているのかということを、外側から中に向かって解剖してみよう。
そうすることによって、今その目の前にある何でもない物がどういうものの積み重ねによって成り立っているかということを検証できる。
20世紀に我々がやってきたことは結構見えているのですが、21世紀に何をするべきかと考えたときに、まず今、目の前にあることを理解しないで先はないと思ったのです。
だから、光というものも、光をそれこそ解剖するということをやってみたらおもしろいんじゃないかと思いますね。


面出 是非。卓さんがやってくださいよ。光を解剖する。

佐藤 コンビニエンスストアの光を解剖するって、おもしろいですね。

面出 ねえ。じゃあ、約束。

佐藤 あー、いやいや、ちょっと待って。(笑)

面出 佐藤卓が解剖シリーズの第4弾で、コンビニエンスストアの光を解剖する。

佐藤 大変なことになっちゃいましたね。(笑)

面出 でもね、解剖という言葉を卓さんがこういうふうに使われて、いま言っている目の前のことも、そういう事実なり現象をちゃんと見る、ちゃんと認識するという、そういう視座というのが大切だというのが、この一連の展覧会でよくわかりましたね。

佐藤 とんでもないです。知らないことをないがしろにして先に行けない性分で、「え、それはどうしてそうなの?」って思ってしまう。
いろいろな物事を進めていくのに条件というのは必ずありますよね。
その条件がどういう背景からあるのかということを理解しないで先に進めないんです。


面出 それじゃあ、光の解剖シリーズはぜひ必要ですね。

佐藤 この展覧会空間は蛍光灯を思いっきり並べました。
なぜかと言いますと無菌室のような、いわゆる解剖空間なので、感情移入されない、いわゆるものすごく客観的に物事を分析する部屋ということで、無菌室のように蛍光灯を思いっきり並べたのです。
あったかい部屋にしませんでした。
これは先ほどの携帯電話です。光と音をデザインのツールにしました。


面出 これ、光が出るんでしょう。
卓さんは、もちろんこの中にキャンドルを入れる訳ではないけれども、線香花火のような光をLEDでつくったんですよね。


佐藤 いわゆる、水滴の最初のピチョンという音と、その水滴が広がるような感じを光で表現しました。
打ち合わせ中に「ブーッ」という音も何か嫌なので、例えば水滴一発の音と光だけでメールが届いたということを知らせるということがあってもいいのではないかと思い、ピチョンという音で光がふわっとついて消えるというのをやってみました。
それでおもしろいなと思って、音と光というものをいろいろ使っていくと、コミュニケーションのすごく重要な、もう少しデリケートなツールになるのではないかと思って実験してみました。


面出 おもしろいですね。

佐藤 このときはまだ、LEDが進化していなかったのですが、この次のバージョンで、微妙な震えるような光とかを光のデフォルトの中に準備して、使っている人が選べるようにしたりしました。

これは水の展覧会のときのシンボルマークです。
傘というのは普通雨をよけるためのものです。
でも、逆さにすると雨を集めるためのものになるという、見方を変えると全く意味が変わってくるというか、日常当たり前のものを反対側から見てみるとどうなるのかということを表現しました。
つまり、水という当たり前のもの、当たり前のものなんだけれども我々は実はほとんど知らない、違う角度から見てみようという展覧会だったので、シンボルマークにこういうものをつくりました。

それから、これは面出さんにも初めて見ていただきます。

面出 何ですか、これは?

佐藤 これは実は、1杯のご飯。
ご飯って大体3000粒入っているって知ってます?


面出 米が?

佐藤 お米。米粒。これは一個一個が全部、ご飯粒なんです。
黒い紙を巻いて、それに穴を開けご飯粒を整理整頓して、ピンセットで1個ずつ張りつけています。


面出 本物のご飯粒なの(笑)

佐藤 本物。もちろん乾いた状態です。

面出 炊く前なの、炊いてから。

佐藤 炊く前です。かたい状態。

面出 じゃあ、お米ですね。

佐藤 お米の炊く前の、あの白米を、ちっちゃい均等に開いた穴の裏から紙を当てて、両面テープがその穴からのぞくようにして、そのテープにこの米をピンセットで1個ずつ押しつけていくんです。
そして、中にろうそくを入れると、お米を通してろうそくの光が見えるというものです。
これは限定15個つくりました。(笑)限定15個。
ピンセットでつけていくわけです、3000個。
実はお米ってすごく性能がいい食べ物で、お米1粒から大体何粒ぐらいできると思いますか。いわゆる稲穂。


面出 稲穂1本で、要するにお米が何粒ぐらいできるかと。えー、3000粒ぐらい。

佐藤 あ、でも結構近い。1500なんです。もちろん約ですよ。
だから実は、ご飯粒二つでこれだけの米ってつくれるという、実はものすごく生産効率のいい食べ物なのです。
いわゆるご飯粒二つ分でできた、言ってみればこれはランタンです。


面出 中にキャンドルが一つ入っているだけ。

佐藤 一つ入っています。置けるようになっているんです。
いわゆるアルミのカップに入った、よく市販されてるティーキャンドルをぽこっと置けるようになっています。
お米には向きがあるので、ピンセットで全部向きをそろえて張りました。それを15個限定。(笑)。


面出 最初の何粒かは自分でやったんだろうけれど、15個もつくった人は大変でしたね。

佐藤 僕がもちろん全部やっているわけじゃないですよ。(笑)
僕はそのつくり方を考えて、こうやってやるとできるはずだと。
お米というのは、太陽の光をいただいて、光合成があって、いわゆる太陽の光とともにでき上がってる我々の食ですよね。
日本人を、日本人の体をつくってきた食ですよね。


面出 お米だけじゃなくて、例えばタマネギの皮とか、卵の殻も、ものすごくきれいですよ。
何かそういう有機物なり植物が持っている何か透過する力って、すごくきれい。


佐藤 言ってみれば太陽の光と、例えば水と、最低限必要な環境がはぐくんできたそのものを通った光。
その通った光というのは、何かとても豊かな気がするんです。


面出 そうですね。癒される感じがする。

佐藤 どうなるかがわからなかったのですが、先程の竹村さんと大手町カフェという東京駅の丸の内にあったカフェでお米をテーマにしたイベントをしたときにちょっとつくってみました。

面出 おもしろい。

佐藤 以上で画像は終わりですね。