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Mariotトークセッション


【 一つ一つに真剣に向き合う姿こそが、「育」というもののあり方ではないか】

風間 例えば照明関係の技術者の方がここにもいらっしゃるかもしれませんが、何かを生み出すというのは、たった1人でもいいから強くそのことを思うことがすごく大事だなと思います。
このコップでも、このマイクでも、1人の人が本当にこれをつくりたいと思わない限りこの世の中にできてこないわけですから、そういう意味では、照明の世界でも同じことが言えるでしょうね。
内原さんも、新しいものをどんどん取り入れて、照明環境をつくっていらっしゃるわけですよね。


内原 デザイナーとしては、やはり新しい技術は使いたくなります。
ですから、LEDもたくさん使ってきましたし、もちろん、成功していることも失敗していることもある。
デザイナーというのは、どちらかというと物が世の中に出るまでに労力を使っているようですが、これからは、もう少しその先に我々がどう関われるかということも考えていかなければいけないと感じています。

例えば、堀木さんの作品には非常に存在感があって、これがなくなるきっかけというのは、経済的なことや、そのお店にとって危機的な状況など、相当大きなスイッチだろうと思うのですが、照明は、昨日まで点灯していても、今日のスケジュールによってはオフできるシチュエーションにある。
私は自分の身をかわいいと思って言うのかもしれませんが、そういう危うい環境にありながら、そうさせない、そうならない、あるいは、それを誰かが維持する、守るということがすごく重要だなと思っています。

実は今、社会的なこの状況になって、ライティングデザイナーがつくってきた照明が、どんどん消えています。
その理由は様々であり、ちゃんと守ってくれているところもあります。
しかし、そのあたりは無視してはいけないと思っています。
デザイナーとして、でき上がった後も見ていきたいし、場合によっては、それをどう運用するかということについても我々が介在していかなければいけないなと感じます。


堀木 でも、なくなる潔さみたいなものもありますよね。
なくなるとしても、そのときにすごくチャレンジしたことや実験的に行ったことは、確実に次の現場につながる。
だとすれば、内原さんは、私の作品や和紙の作品は残るからうらやましいとおっしゃいますが、私としては逆に、消えていくからうらやましい。

現場はどんどん変化します。
例えば担当者や社長がかわって、考え方が変わってしまうこともあるでしょうし、使う側の愛情や理解がなければ、あまり見せたくない姿のままそこで残ってしまうケースもあります。
私は、メンテナンスまですべてやるのですが、メンテナンスも依頼されない状況では、なかなか潔さがないなと感じます。
しかし伝統産業の世界だから、それを10年、50年、100年使ってもらって、つなげていかなければいけない世界だというジレンマもあります。


内原 メンテナンスに行くときというのは、つくったときとは全く違った条件が発生している場合もあるでしょう。

堀木 お金がないからメンテナンスのお金は払えないという場合でも、必要性を感じて行くこともありますし、いろいろです。
残る良さと残る悪さ、消えていく良さと消えていく悪さというのはなはりあります。
しかしその中でお互いに言えることは、そのときにチャレンジしたことは必ず次の現場につながって、それがどんどん進化していくということ。それが一番大切なことだと感じています。


内原 そうですね。
しかし、メンテナンスも請け負われるのでは、そこは余計切実ですね。


堀木 何も言われなくても、時々見に行きます。
作品のことが全然伝わっていなくて、メンテナンス用の蛍光灯がついていて本来のあかりが消えているところもあります。
ですから、生んだほうの愛情も注がなければいけないし、育てていってもらう現場の人の愛情も、作品にはいつまで必要です。
それも人間と変わらないと思います。


内原 堀木さんの作品は常にきれいで、本当に環境がよくて、お金をふんだんに使われて、ずっと守られていると思っていました。
でも、今日、いろいろ苦心されているというお話を聞けてよかったです。
今後、そういうことがすごく重要だし、我々が、プロジェクトを一緒にするクライアントと共有していかなければならないことだと思っています。

例えばセッティングが終わって現場を一緒に回るときに、「このダウンライトがいくらかご存じですか」という会話はしておくべき。
社長やトップであっても、この器具はこれぐらいのコストです、どう思われますか、でも、この技術からいうとコストパフォーマンスは非常に高いと思います、という会話もしていかなければいけない。


堀木 内原さんとお仕事をしたとき、内原さんのプレゼンテーションの仕方に感心いたしました。
コンピュータで光の環境を、すごい完成度で描かれていました。
本来光は絵に描けるものではないですよね.... でも実際に描いてらっしゃる。


内原 ライティングデザイナーや、ライティングに関して何とかコミュニケーションしようとしている人は、そこに時間をかけざるを得ません。

堀木 つまり、そういったコミュニケーションをすごく大事にされていて、何とか伝えようという気持ちがそうしてあらわれているのかなと思ったのです。

内原 プレゼンテーションする相手はやはり明確でなければいけないし、事業でいうと、クライアントにしっかりプレゼンテーションできるかどうかが大切です。
例えば設計事務所さんが間に介在していても、クライアントに対して、自分たちが大事だと思っている光を説得できるかどうか、あるいは納得してもらえるかということは必ず、光が後々どう生き延びていくか、どう磨かれるかを含めて、すごく重要なところだと思っています。
ですから、遠くにいて声が届きそうになくても、クライアントへのプレゼンテーションにはぜひ行かせてくださいと言います。
それは恐らく堀木さんも同じようなお気持ちだと思います。


風間 一番いいお話が伺えたような気がします。
さて、そろそろ時間も迫ってまいりましたが、最後に堀木さん、お願いいたします。


堀木 先程、どんなものも発想しないと形にならないというお話がありました。
命がけで何かに取り組むとか一つ一つに真剣に向き合う姿こそが、光も育てるし、食育であれば食の文化も育てる。
これが「育」というもののあり方であるのではないかと思います。


風間 今日のお話で、光というものにもう少し意識を持ってほしいという内原さんの思いが、私にも、もちろん堀木さんにも、伝わったと思います。
皆さんにも恐らく伝わったと思うので、それを持って帰っていただければと思っております。

本日はどうもありがとうございました。 (拍手)


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