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Mariotトークセッション


【 今はまさにあかりの進化の地点。前向きな観察と発想が大切である 】

風間 今、光そのものが変わってきていますよね。
LEDなどハードの部分でも進化があり、それによってできる部分も増えますよね。


内原 日本は今、LEDを生産している国としては、本当に驚くようなシェアを持っています。
材料で申しますと、1社が世界シェアで3割ぐらい占めていたり、LEDの素子と言われる部分でいうと、半分ぐらいを占めている可能性もあります。
それは日本が誇れる技術です。

先程も少し申し上げましたが、LEDは今現在、電気製品、大量工業製品として市場に供給されている光源の中では、ワッテージ当たりの明るさというメジャーでいうと飛躍的に明るいものができるだろうと言われています。
しかし私は、そのような価値観でLEDをすぐにわしづかみにしてしまってはいけないのではないかと考えています。

白熱電球ができた100年程前、それまでずっと床にろうそくを置いて暮らしていた人が、天井にランプを取り付けることになった。
当時は、電気の供給にはお金を払いますが、ランプ交換業者というのがいて、ランプ交換は無料でした。
そのように当時の人々は、突然この白熱電球のあかりを強要されたかもしれない。
そのとき、歴史には刻まれていませんが、生活スタイルを変えなければいけないことに対して相当のブーイングが起こったかもしれません。
しかしそうした時期を越えて、白熱電球とともに長い時間を経て熟成してきた。
こういう時間とともにあるというとらえ方がものすごく大切だと思います。
LEDも、1〜2年ですべてが決まるというわけではなく、大事に育てなければいけない部分もたくさんあるのではないか。
私は、少し冷静になって、100年先にどうなっているかを考えてLEDを見つめ直すと、先程の耳をそばだてるではないですが、見方が変わるのではないかと思っています。


堀木 今のことだけではなくて、100年後を見るのは大事なことですよね。

内原 例えば、CO2を一切排出しない電力という技術ができるかもしれません。
そうなるともう電気は使い放題ですよ。
20年後にそのような技術があることも踏まえた物の見方というのが絶対あるだろうと思っています。
そういう意味では今、節約する、数字を小さくするという片面にしか目が向けられていないのだとしたら、それはものすごく寂しいことだと思います。


堀木 今の状況というのは、かなり偏っているのですか?


内原 少し長くなりますが、例えば日本での一日の発電量は、午後2時がピークになります。
これは1年間を通じての話です。
そのものすごいピークのために、電力会社が電気発電というのを供給しているわけです。
ところが、このぐっと盛り上がっているところは、実はほとんど火力発電で補っている。
なぜかというと、原子力発電というのはオフできないから。


堀木 そうですね。オフにできないですね。

内原 水力発電や風力発電も少しはありますが、ほとんど瞬発的にエンジンをかけられる火力発電で補っています。
ところがそれを縦に切ると、火力発電がほとんどのCO2を排出しているわけです。
水力も、原子力も、発電に関してはCO2はほとんどゼロ。
つまり、一日のCO2排出量を時間帯で比較すると、夜はCO2を排出していないということになります。
原子力に関しては様々な世相の問題もありますが、海外に目を向けると、フランスは78%を原子力で補っています。
つい昨日の話ですが、エッフェル塔のイルミネーションが10分から5分に短くなりました。


堀木 え、そうなんですか。

内原 なぜ縮めるんだ、電力ではCO2を排出していないだろうと、すごいクレームがインターネットで集まっています。
それでもやはり、世の中は数字を小さくする方向へ動いているのです。
もっと前を見て、10年後に違うシステムがあることも含めて、いろんなことを想像することができないものかと思います。


堀木 パリのエッフェル塔のライトアップが10分から5分になったというのは残念な気がしますが、そういう行為そのものが及ぼす社会影響というのが、人々の認識を高めるわけですよね。

内原 大きいですね。

堀木 それはすごく大事なことですよね。
例えば白熱電球が廃止されて蛍光灯に変わっていくとして、今はブーイングもあるわけですが、ではそのことを残念だと思っている人が多いとすれば、蛍光灯だけれども、白熱電球にまさるあかりの開発がそこから行われる可能性はありますよね。


内原 ありますね。

堀木 つまり、それは先の発展にもつながることかもしれないということも考えられますよね。

内原 そうですね。

堀木 それがまさに進化の要因なんだと考えるとすれば、今がまさに、進化する地点といえるのではないですか。
ろうそくから白熱電球に変わったときもブーイングがあり、今、白熱電球から蛍光灯に変わることを真剣にみんなが考えるということは、100年後の未来につながる開発がなされていくということですね。


内原 その可能性を今秘めている時期なのに、なぜ引くかということです。
つい節約するとか、ネガティブな方向にいってしまう。
大いに謳歌しなければいけないことはたくさんあって、そのために技術が追随をしてきた。
この仕組みを止めてはいけないと思います。
そういう前向きな発想があって、世の中がどうなるのかということを誰かが考えていないと、間違いなくそこには到達できません。


堀木 時代を観察して発想するということですよね。

内原 ですから、もっとちゃんと説明をすべきだし、場合によっては、一人一人がそれを選択できるという位置づけの中で一つの条件として伝えられないと、大変大きな間違いを起こす可能性だって秘めている。
少なくとも今日来ていただいた方には、前向きに、一緒に考えていっていただきたいなと思います。


【 光の進化は伝統産業の未来をも支えている 】

堀木 LEDに関しても、照明の技術は今すごく発達していますよね。
私は和紙の世界にいますが、和紙の伝統産業を活性化していこうと思うと、和紙だけ見ていてはダメなんです。
今日は「光育
(ヒカリイク)」がテーマですが、私の世界では実は、光が伝統産業を育てるという状況です。
どういうことかと申しますと、照明の最先端の技術を使わなければできない和紙の表現というのは、今ものすごく幅が広がっているのです。

少し映像をご覧いただきます。
例えばこれは、ひつぎのような大きさで、人が生まれてきたり、命を見送るためのオブジェですが、薄い薄いところに光が入っています。
こんなことは白熱電球やハロゲン球ではできなかったのですが、電球色のスリムラインのような光源ができたことによって実現しました。

これはミッキーマウス。
私が所属する株式会社和空インターナショナルが、ウォルト・ディズニー・ジャパンのライセンスを受けて、Disney+WA-Quというブランドの元に制作したものです。
全体に平均的に光っているように見えると思います。
しかし、実際にはミッキーマウスの形はものすごく複雑で、腕は細いですが手が大きい。
足も、太ももで一度細くなって足は大きい。
首で一度締まって、顔が大きい。
そしてまた耳が狭いんです。
この形状で、胴体にぽんとあかりを入れても、ミッキーはうまく光らない。
ミッキーのおしりから光ファイバーを血管のように、「ごめんね」と言いながらぐーっと押し込んで、手の先、足の先、耳の先まで、すべてファイバーをめぐらせてこのように光っているんです。

内原 この場合、構造は和紙の硬さで支えられているのですか。

堀木 これは立体漉きです。
中に樹脂が入っているのですが、その樹脂を型にしながら立体的に紙を漉くという手法です。
のりも骨組みも一切使っていません。


内原 では、この和紙の下には樹脂があるのですね。

堀木 そうです。樹脂の型ごと漉き込んでいます。
一見、そういう苦労はわからないのですが、このように光らせるためには、最先端のファイバーの技術が必要だったわけです。

これはバカラとコラボレーションをした照明です。
こういったものも最新の技術でなければ実現できませんし、先程ご覧いただいたそごうの28mの天井高のものも、メンテナンスを毎年しなければいけないようでは採用いただけません。
ですから、白熱電球から蛍光灯に変えるとか、LEDなどを駆使して、メンテナンスのしにくい高所でも私たちの巨大な作品が入るようになっているわけです。

そういう視点で見ると、和紙の伝統産業、あるいは和紙に限らず、伝統産業を発展させようと思うと、その世界だけ見ていたのではダメで、まさに今の光源の技術の進化、照明器具の進化こそが日本の伝統産業さえも支えている、未来を担っていると言えます。

内原 それは本当に大事なことですね。文化とともに光が進化している。
今は、厚さ1cmのパネルでも今は面発光で光るわけですから、額縁のように部屋に光る和紙飾れるわけです。


風間 そういう進化したものを見たときに、やはりイメージが膨らみますね。

堀木 そうです。そこからまた発想が生まれてくる。