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![]() 松下 きっかけとしてこういうスライドを見ていただきましたけれども、「光育(ひかりいく)」という今回のテーマですが、今のような新しい光源もしかり、日常の私たちが持っている文化性もしかり、そういったことを踏まえて、「光育(ひかりいく)」ということについてのイメージをお伺いできませんか。 安河内 内容的には重複するかもしれないんですが、「光育(ひかりいく)」と書くんですが、通常、食べて育つという気持ちがあるので、食品に例えますと、栄養の少ない食べ物を食べたり、バランスの悪い食べ物を食べたりすると、すぐ病気になるわけではないですが、健康に悪いというのは皆さんよくご理解できると思うんです。 光も同じで、私とか森田さんが申し上げております、光の扱いを間違えますと、リズムが狂うとか、本来体温が上がるべきときに上がりにくいとかいろんな問題がある。 これはすぐに病気になるわけじゃないですが、こういったことが毎日続くことによって、そのうちに健康を害するところまでいくこともあり得るということですね。 例えば森田さんのお話の中ですと、昼間たくさん日光を浴びたほうが夜メラトニンがたくさん出る。これは、毎日同じ光を浴びているんだけれども、たまたま今日たくさん日光を浴びたというときは、同じ光のもとでも光によって抑えられる量が減るんですね。 だから同じ光でも、昼間たくさん浴びたほうがメラトニンがたくさん出る。 毎日オフィスで働いている方は、お昼休みに外へ出て食事に行くというのは実にいい話です。 それから、地下街でずっと働いていらっしゃる方には光のケアが必要じゃないかという感じがしています。 光というのは体に感じないものですから、光に対していいの悪いのは、なかなか考えないわけですけれども、そういったことが毎日積もり重なっていくことが実はいろんな面で影響を及ぼしている。
ただ、それに気づかないだけであるということが非常に多いのではないかという感じがしています。松下 森田さん、いかがですか? 森田 遠藤照明さんのホームページで、「光育(ひかりいく)」ということについてどのように書かれているのかなと少し拝見してきたのですが、光を選択する力を習得すると書かれているんですね。 ああ、なるほどなと思いました。 そのことを発展させて考えていくと、私たちの生活環境の中によい光がたくさんあるように育てる、よい光を育てるというふうに解釈もできる。 そうすると次のステップとして、そういうよい光で私たちが育つというふうに考えることもできるなと思ったんですね。 今までの実験は、学生の協力で実験しているのですが、応用としては、高齢者の方々の生活環境の光をどう使うかということが研究としても行われていますし、私としてはもう一つ、乳幼児、生まれたての赤ちゃんから少し育ったレベルぐらいまでの光環境もすごく大事だなと思っていますので、よい光で人が育つというほうに繋げていただくような流れがあると良いなと思っています。 松下 それは自然光も含めた人工光ですね。 森田 人工光も含めてということですね。 安河内 「光育(ひかりいく)」ということで、まさに育つということと光の直接な関わりということからしますと、先程申し上げましたように、寝る直前まで浴びる光によって熟睡の程度が変わる、深い眠りがどのくらい持てるかということが影響されているわけです。 特に子供の場合に言えるのでしょうが、成長ホルモンが出るのは深い睡眠のときなんですね。 昔から寝る子は育つとよく言いますが、そういった意味では医学的な根拠がちゃんとある。 ですから先程、森田さんが言われたみたいに、我々は学生に実験台になってもらって実験をやっているわけですが、実は乳幼児とか子供たちに光がどう影響しているかということはやりたいんですね。 外国の文献ですと、光のリズムを感じ出すのは、前後は多少ありますが、受精してから32週齢ぐらいだそうです。 60人ぐらいいるんですが、たまたま27週齢で早産で生まれた1000グラムの赤ちゃんをすぐ保育器に入れて三つのグループに分ける。こういう実験をよくやるなと思うんだけど、一つは27週齢で生まれてすぐ明暗のリズムをつけた場合、32週齢で明暗のリズムをつけた場合、わざとそこから4週間おくらせて36週齢になって明暗のリズムをつけた場合では、体重の増加率が違うということがわかっています。 生まれてすぐからと32週齢で明暗のリズムをつけたほうが体重の増加が大きいんですね。 36週齢は少ないということで、特に未熟児の赤ちゃんの場合は、いかに体重を増やすかが非常に大事な要素なんですが、光によるリズムをつけるかどうかで体重の増加率まで変わってしまう。 そのリズムは、お母さんのおなかの中にいるときはお母さんのリズムに同期しているんですね。 ですからお母さんがきちんとしたリズムを持たないと、おなかの中の赤ちゃんは可哀想なことに同期せざるを得ないわけです。 それから生まれた後も、ネズミの実験ですと、その子供を世話するお母さんなり、産みの親でなくて育ての親のリズムに同期しているということがわかっています。ですから、リズムというものは子供にとってものすごく大事な要素だなという感じがしています。 松下 これは大きい問題ですね。 私どもも、目が痛くなったり、体内時計がずれたりということを漠然とは思って照明デザインをしていましたけれども、私たちが持っている機能というのは赤ちゃんのときからちゃんとすり込まれていることなんですね。 住環境においても、そういうことまで考えて照明計画なんて全然されていないように思います。 ある大きなメーカーさんの会社に行きましたら、サーカディアンを取り入れているところがありまして、お金を扱う総務部だけ、昼食後に照度が上がって明るくなって、色温度も上がるんですね。 彼らが眠くならないようにという実験をされているのですが、実際に眠くならないらしく、知らないうちにコントロールされる世の中が来るのかもしれないなと、そのときちょっと危機感を持ったんですけれども、実際にそこまで考えて色々な事を計画していく必要もありますね。 ![]() 私は、そういうことが本当に正しいかどうかはわかていませんが、ある一つの事例を今日持ってきました。 デジタル化した光は何から信号をもらうのかということで、ちょっと音楽も入っていますので、私がナレーションがわりに読みながら、一つのプロジェクトを紹介していきたいと思います。 赤ちゃんのお話が出ましたけれども、これからご覧頂きますのは、音と照明を映像に生かしてリラックス支援を可能にしたプロジェクトです。 株式会社シンフォニアが開発されたシステムです。 今日は男性の方が沢山いらっしゃるので、あまり入られることはないと思うのですが、以前の分娩室はこのような感じでした。 あたかも手術室のようで、怖くて、今から生を受ける赤ちゃんを出産するというのに何だか怖い感じ。 そういった雰囲気の中で出産が行われていたわけです。 照明はどうかといいますと、非常に明る過ぎて、真っ白い空間の中でグレーを感じながら、まるで手術をするように出産をしていたというのが一般的です。 このような状況を改善するために、バースサポートシステムというものが開発されました。 少し生々しいですがイラストにしたので、お許し下さい。 まず、赤ちゃんが生まれるというのは第1期、第2期、第3期に分かれます。分娩第1期では、緩やかな陣痛がやってくるんですね。 陣痛すなわち子宮の収縮で、赤ちゃんを産み出すために必要な収縮が定期的に始まり出すときです。 そして第2期になりますと、子宮口が開かれて、赤ちゃんの頭が見えるようになってきます。 この間は1分間隔で陣痛が起きてきます。 そして第3期がようやく誕生するところです。この分娩の進み方に合わせ、より有機的な音、照明、映像によるリラックス支援を可能にしたバースサポートシステムです。 ![]() まずシーン1です。 これは陣痛間欠時に鎮静の効果を持つと言われるブルー系の照明を変化させて、映像も照明の一部としています。 ここで再生される音楽は、お聞きのように空気のような存在で、飽きさせないで浮遊感のあるオリジナルの音楽を用いています。 使用する照明はフルカラーLEDを利用していまして、ゆっくりと色合いを変化させていきます。 そしてシーン2です。約1分毎に陣痛がやってきました。 分娩中には、子宮収縮を感知する目的と、胎児の心拍をモニターするための分娩監視装置という医療機器をおなかに装着しています。 子宮の発作を感知しますと、コントローラーを経由しまして、ダウンライトとLEDの光がリンクして変化を始めます。 あわせて、赤ちゃんに酸素を送るために母親に呼吸を促します。 今お聞きになっている呼吸法ですね。この呼吸音が再生されます。 その呼吸音に合わせて、お母さんは「ふーっ」と、光の変化とともに呼吸を整えて陣痛を促していくという効果になります。 これはシーン3です。ご覧の映像は陣痛間欠時のもう一つのパターンです。 今度はグリーン系の映像と照明を使っています。 分娩の時間には個人差がありますので、長丁場のお産に耐えられるように、映像と照明のシーンをたくさん用意しています。 その方の好みの色に合ったものを選択することも可能です。 ![]() そして最後ですね。無事に赤ちゃんが生まれました。 これはシーン4になります。 ここでは、赤ちゃんの状態を確認するために、または血管の確保など医療用の処置がありますので、ゆっくりと照度を上げていって、LEDは白色になるまで明るくゆっくり変化をさせていきます。 音楽も、聞いていただくとわかるのですが祝福の音楽になっていくわけです。 赤ちゃんをモニターで見ることができるようになっていて、すごくやわらかい音楽になります。 最後ですが、生まれた後、産後休息が必要です。 約2時間分娩台の上にお母様を残します。 徐々に照度が落ちるようにプログラムしてありまして、自分自身をねぎらうような音楽になります。 これはオリジナルの音楽を再生しまして、患者さんから、感慨深いというたくさん意見をいただいております。 もちろん、医療の現場ですから、お産に関しましては緊急事態になることもあります。 赤ちゃんの心拍が急激に落ちた場合、大量の出血で帝王切開になるとか、そういったときには、緊急モードスイッチを入れていただいて、即時にLEDが白色になり明るい空間になるという処置をとっております。 これがBSSのシステム図ですけれども、すべてお母さんの陣痛からサインをもらいますので、それに基づいて、スピーカー、モニター、ダウンライト、そういったものが一緒に動く可動性を持っています。 私ぐらいの身長ですけれども、これがシステムのときの実際のコントローラーになります。 ドクターとか看護師さんが扱うのはこのスイッチだけです。 例えば自動にしておいていただくと、心拍数に合わせて、お母さんの陣痛に伴って今のシーンが自動的に行われることになります。 分娩室が手術室のような大変怖いイメージから、こういうふうになさいますと、病気ではありませんので、たくさんの方がこれを取り入れたいと言っていただくようになり、急速に全国的に普及しております。 助産師、ドクター、実際の利用者から支援を受けることになりまして、現在、国内で120カ所、体験総人数が40万人を超えました。 この開発のおかげで医療の中に照明の効果が入っていくことができまして、それぞれに分娩室のデザインが違いますので、そこに合わせて簡易的につくったりもし、たくさんの照明の実例ができるようになりました。 これは一つのきっかけなのですが、出産という、病気ではない、すごくおめでたいところに遭遇するにもかかわらず、今まで医療現場のようなところで出産をしていたという実情に、お母さんの陣痛から信号をもらって照明を変化させる、これがデジタル化した光の応用として大変有効なところではなかったかなと思っています。 今回のお話のきっかけとなるといいなと思って、一つこのスライドを持ってまいりましたが、如何でしょうか。 私どもは、臨床実験があってやっているわけではなく、先ほどの青色街灯の話もそうなのですが、ブルーは心が落ちつく色だよと言われて、こういった環境のときにはブルーを選択するのですが、いかがでしょうか。 もっとこんなことをなさるといいのにというご意見ございませんか? 森田 残念というか、あの部屋は入ったことがないのですけれども、確かに光の応用の一つのシーンとしてあると思いました。 私たちは、その前とか後ろの普段の生活の部分しか、特に私は頭の中になかったものですから、今のような使い方も一つのやり方だなと思いました。 松下 こんな色にしたらもっと効果的だというのはないですか。 森田 それはちょっと難しいですね。 松下 安河内さん、いかがですか。 安河内 今までは、音とか、光とか、一方的なコンテンツで相手に提供するというやり方が非常に多かったのですが、これが違うのは、人の鼓動とか、色々な生体情報をモニターした、あるいは反映させたコンテンツを与えているということですね。 これから我々そっちのほうの研究に行きたいなと思っているんですけれども、一方的な情報の刺激といいますか、提供だけではなくて、我々の生体情報をうまく組み込んだインタラクティブな、双方向のアクションがあるような光なり音なりの提示の仕方がこれから出てくるんではないか。 それがどういう効果があるか。恐らく、いい効果もあるし、悪い効果もあるんだろうと思うのですけれども、その辺をきちっと調べていくことが大事になっていくかなという感じはしています。 松下 デジタル化した光は実にインタラクティブで、今ご覧頂いたようにオートアクティブでアトラクティブなんですね。 使い方によっては大変間違えた方向に行くんじゃないかと私も危惧しています。 だれでも簡単に扱えるようになって、コンピュータ上で何でもできるようになると、今もっとケアしなきゃいけない光環境が、ネオンのように、だれでもデザインできて、派手だったらいいというふうになっていかないようにと思っています。 つまり、照明デザインというのはとても大切な役割だなと改めて思っているところです。 私どもばかりでお話ししてもと思いますので、今のお話を受けられて、こんな悩みがあるのだけれど等、ご自分の住んでいる環境はこんなふうな光環境にしたらどうか等、悩みや、お仕事に関するご質問を受けたいと思います。 いかがでしょうか? |