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Mariotトークセッション


 【その他事例より】

松山 これは名古屋のある銀行の本店です。
リテール部門の銀行の1階フロアです。
まず照明計画は正直言って我々はやりませんでした。というのは、もともとこのフロアの照明がこのようなメイン照明がされており、それをそのまま照明計画に生かしています。

通常、銀行はカウンタートップで1000ルクスは絶対確保、執務エリアでも1000ルクス、お客さんエリアで800から1000ルクスという言われています。
もともとあった照明で全体を均一にそれだけの照度を確保していてくれたので、それに応じた下のデザインをしていると見ていただければと思います。
各記載台、各ローカウンターブースもメイン照明によって光を確保しています。

これは同じ銀行の大阪本店です。
今回の場合は、ここも1000ルクスとか800ルクスといった数字的な与件があったのですが、もともとある建築の天井はいじらずに、インテリアデザインのほうで円盤形の照明をぶら下げ、全体の機能照明を確保しています。

1000ルクスを確保しようということになると照明器具を増やせばできると思うんですね。
我々がやらなければいけないことは、その光というものが明るければいいだろうということではなくて、そこにいかにイメージを持たせるかということが一つの仕事として絶対必要だと思いますので、こういう方法論で照度を確保しつつ全体の明るさを計画しています。

これは違うアングルから見た状態です。
カウンター越しに執務エリアまでも照度確保のために同じような照明計画で中に入り込んでいる状態ですね。

これはまた名古屋のほうに戻るのですが、このような天井照度に対して、下にハイカウンターがあるんですね。
銀行はお客さんが長い間待っていらっしゃいます。
何もない、ただべったりとした明るい機能光だけではなく、当然インテリアデザインも必要になります。

カウンターの腰にずっと、LEDが入っており、色が変わります。
このような光を与えることによって待っているお客さんに時間経過をイメージしていただくことをコンセプトにこのようなカウンターのデザインをしています。
曲面に成形したアクリルに偏光シートをサンドイッチして、光がミラーのように見えつつ透過している状態です。
周囲の照明を消すと、これだけの輝度を持った照明計画になっていることが下の写真で分かります。

大阪の場合は、このハイカウンターは建築躯体がコンクリートでできていたので解体ができませんでした。
それに対して造作を現場でつくりました。
そこにやはりLEDを仕組んで、これも時間帯によっていろいろな明滅のプログラムを持たせています。
これによって、お客さんに時間的感覚を持っていただこうという同一コンセプトで違う表現手法をこの計画ではしています。

正面玄関のファサードのデザインもしました。
黒いステンレスのパネルですが、その間にLEDをいれ、時間帯によってお客さんをいざなうような形で光が流れるように入っていっているというものです。
現実には7色で光るようなプログラムにしています。


 【楽しい光、人をいざなう光 ・東京ミッドタウンクリスマスツリー】

最後に「楽しい光」、「人をいざなう光」ということで、六本木にある防衛庁跡にできた東京ミッドタウンのファーストクリスマスプロモーションの一貫として我々でクリスマスツリーのデザインをしました。
それの事例をお見せしたいと思います。

東京ミッドタウンには「ジャパンクオリティー」というコンセプトがあります。
クリスマスでジャパンクオリティーをどのようにデザインするかという非常に難しい宿題だったのですが、江戸切子ガラスを題材にしてほしいという要望がありました。
それを、このような多面体を起こしクリスマスツリーに見立てているという状態です。江戸切子ガラスは、蜘蛛の巣紋という実際の紋があるんですね。
それを平面図に見立てて、中央をぐっと立ち上げて立体にしているというコンセプトでこのオブジェはできています。

中に入ると、自然光の逆光で切子ガラスがすけて見えますが、夜になると、日中と逆転して中が発光していることによって、ほとんど自分が発光体になるオブジェになっています。
一番上に星のオーナメントが乗っていますので、やっぱりクリスマスツリーなのだと皆さん認識されていたようです。

時間帯によってイルミネーションが変わっていくという連続写真です。
これで思ったのは、光というのは非常に人を楽しくさせてくれます。
これがつくことによって、特に子どもは正直でワーッと歓声を上げて近寄ってくるんですね。
動物に限らず人間も光が好きなんだなということをこれで再認識したような感じです。

これが中から見上げた状態です。
クリスマスツリーというと、通常は外から眺めてイルミネーションがきれいだねと言うものです。
今回、特に目的感を設定はしていないのですが、中にイルミネーションを持ち込むことによって人はこの光に誘われて寄ってきてくれるんです。中から見上げて「わー、きれいだね」と言って喜んで帰っていただいていたと思っています。

この真ん中にあるのは、実を言うと雨どいです。
雨どいも、ステンレスの鏡面を数本も束ねて立てることによって周りの光を反射して、非常にきれいなイルミネーションの一貫になっていました。
周りに椅子があるのですが、このツリーに光がつくと人がわーっと寄って来て中はどうなっているんだろうと見上げたり、子どもがかけずり回ったり、ここにアベックが座ったり、人が楽しそうに参加していただいていました。

このクリスマスツリーは見ていただくというよりも、人が中に入って楽しんでいただく時、初めてクリスマスツリーになっていたかと思います。

これは、全体のクリスマスプロモーションの様子です。
手前に芝生がありまして、そこに青色のLEDが一面に敷き詰めてありました。
オーバーラップしてミッドタウンのガレリアとの重なり合いで、このように空間全体がクリスマスイルミネーションになり、人気スポットになったと聞いております。

 【光を共有する・国立新美術館】

岩井 ありがとうございます。
次ぎに私がお手伝いをした国立新美術館の話をします。
ご存じのように故黒川紀章氏の建物です。
実は工期が4年ぐらいあったので、現場に入ってからみんないろいろな実験をやって、自分たちで光を一生懸命体験しながらつくっていったという経緯があります。

これはコンセプトスケッチです。
まず森の中の美術館という先生のコンセプトがありました。
ここではパーゴラの光という考え方で間接照明で森の中の光をつくっています。
間接照明を検証するのはものすごく難しく、照度計算や、CAD、いろいろな方法で検証します。
まずは計算で間接照明シミュレーションをし、特に上下の差が出ないかということをチェックしました。
これはよくやることなのですが、実際みんな目で観察しようということで、125分の1の模型もつくりました。
こういう模型をつくるプロがいまして、光は蛍光灯で調光して調整できるんですが、実際に間接照明の500ルクスというのがどのくらいの輝度感になるのかというのをこれで体験して検証しました。

今回私がお話したい「光育(ひかりいく)」は、この後ぐらいかなと思います。
現場の電気屋さんだとか設計者も含めて、現場でいろいろなことをやっています。
場合によると施主も含めて、いろいろな光を体験して決めていくということが重要と思います。
間接照明のモックアップをつくり、これでどのくらい明るさが出るか、どんなふうに見えるかというのを確認しました。


これはもうかなり進んだ段階ですが、四つのパーツをつくって実際の明るさ等を、目で見ていろいろな施工上の問題、色の問題、もろもろのことをみんなが共有しました。
要するに、実際に実験すると全員が一つの問題点を共有できるという利点があります。
そして、それは現場の中での一つの「光育
(ひかりいく)」なのかなという気がしております。

この写真は、間接照明の問題点がないかというのを検証しています。
向こうに幕がかかっていますが、あれは壁の均整度を見るために幕を垂らして見ております。

この美術館は、一般の方の展示会もやります。公募展です。
都度学芸員が照明の調整はできないものですから、明るい壁があって明るいパーゴラの下で絵を見るみたいな感覚にしました。
実は、天井が明るくて、前にガラスがかかっている大きい絵には映り込んでしまったりしているのですが、そういうことよりも全体的にいい環境をつくるということが優先されている照明計画になっております。

一番特徴的なのは、大きなアトリウムです。
最初にかいたコンセプトスケッチでは壁が全面的に光っています。
この光った壁と、手前のコーンの明るさがコントラストになって立体感をつくるという考え方をしています。
ここについても、いろいろな実験をしました。

例えば、実際に壁のモックアップをつくりまして全員で検証することもしました。
壁の明るさというのは明るさ感はあるんですけれど照度は出ないんですね。
実際にこのときに測定した照度を分布にして施主に出しているんですけど、それだけ見られると何でこんなに暗いのと言われちゃうんですね。
ですから見た目は十分明るいよということを説得するためにも、この実験は非常に重要でありました。

中は割とローテクでして、展示室の間に幅が少しあるんですけど、そこに蛍光灯が入っています。
本当は黒川先生から有機ELで出来ないかと言われたんですけれども、残念ながらコストが合わないということで蛍光灯になりました。
必要最小限の蛍光灯の本数で済むように先程のような実験をしています。

また、種類の違うシートを3枚張り、拡散度の違いによってどう見えるかというチェックもしました。
結果的には照度は出なくても、拡散度の高いものを選択しました。

照度分布を出してみますと、5メートル離れると25ルクスぐらいしか出ていません。
それでも行かれた方はわかられると思いますが、そんなに暗い感じはしません。
これは全体的に、すごくやわらかく光っていて、いい壁です。
黒川先生のイメージからすると、ここは和の空間なので、電球色を使って光らせております。
ダウンライトはできるだけ使わないで、要所要所だけを照らしています。
ダウンライトが空間の真ん中になくても大丈夫とわかっていただくためにも、あのような実験が必要だったのです。

これはコーンの実験です。
コーンはコンクリートなので、ナチュラルにコンクリートが見える白い色で照らしました。
実際に、後ろの黄色い壁に対して白いコンクリートが浮かび上がっています。
壁の光が明るいので、かなり全体的に明るい雰囲気になっています。

これは壁からの明かりだけの写真です。
要するに最初にあった森の中の美術館という考え方からすると、建物を無理やりライトアップするというのは黒川先生の共生という考え方から反する。建物の中で使っている光がそのまま外へ出てくるという考え方でやろうと...
これも今後の照明のあり方みたいなものの考え方の一つじゃないかと思います。