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Mariotトークセッション


松山 つむぎ商館の光は、副題として「選び取る光」とつけてみました。
できた状態で見れば白い、大空間ですので比較的何もないような空間かなというのが写真を見られた印象かもしれません。しかし、環境を主眼に置いて設計してあります。

再春館さん自体、そういったことが非常に大切なコンセプトの一つだということで建築の積み上げがありました。
それを我々はあえて言えばインテリアという側面の中で、より人が手元で使う、もっと人に近い部分に対して計画をさせていただきました。
プロジェクトが発生して竣工までに1年、2年かかったのですが、社員の方々と我々は非常に密なキャッチボールをしながらここまで来たかなという感想を今さらながらに思います。

「選び取る光」ということで、我々が設計デザインをしましたが、竣工しましたよ、引き渡しました、あとはお使いくださいということではありませんでした。
つまり、再春館さん自体が、こういうことをしたい、こういう光にならないかとお望みになったことを実際に選び取られながら運用されているという実態があるものですから、このような副題をつけさせていただいています。

大空間を求められている理由が、最大1000人までのコミュニケーターが収容できるという与件でした。
それに加えてフレキシブルに使いたい、大空間を、できれば無柱にしたいというような難しい宿題をいただいていました。
その点は、蜂屋さんが随分苦労して「樹木構造」というキーワードを見つけながらこういった形にまで煮詰めて下さいました。

 【木漏れ日照明】

松山 次に光に対しては、「木漏れ日照明」と名づけました。
最初は、木漏れ日というイメージではなく、いかに床面がフレキシブルに使われることに対して対応するかというアイデアが、このようにバラバラに見えるような配灯を生み出しました。

ここで見ていただきたいのは、まず人工照明ありきというスタンスで計画はしていません。
自然光があって樹木構造に絡んだトップライトがあり、ファサードに沿った外壁に当たる部分はほとんどガラスの開口になっていて、外輪山を臨みながら自然光が入ってくる環境です。
そういう自然光があった中で、人工光で何ができるかというような順番で岩井さんと照明計画を積み上げていきました。

これは先ほども説明がありましたが、4500平米のTMゾーンです。
吹き抜けの部分に対して、トラスが、これだけの奥行き・幅のある空間に対して、ずっと並んでいるような状況です。
シームレスで照明器具を岩井さんとデザインしまして、それの光ったときの反射光がはしご状の梁の側面を照らすことによってこれだけの光環境をつくっています。

これはTMゾーンの木漏れ日照明と、ある意味コントラストを持った照明計画をわざとしていると見ていただければと思います。
こちらも自然光を基本的に取り入れた空間にしようということがあり最終的にはトップライトがこのような形で3本天井部分にあいています。
工事の途中でこのような計画が出てきたと記憶していますが、ここは照明をほとんどつけずに、自然光で、これだけの明るさを持っている空間になっています。
夜、トップライトからの光がなくなると、ボックスにおさまった照明が点灯します。
すると、通常天井裏で配線ラックとして使われている下地材が掲示パネルを兼ねて手すりとして垂直に使ったものを、ずっとスロープに沿って並べているので、それが中央の光がつくことによって、逆光になり、影を落としながら、おもしろい空間として見せてくれています。

これがスロープを見下ろしたときの状態です。
コミュニケーターの方たちは業務を終える時間が比較的遅い方もいます。
その時はエアコンも全灯は当然していません。
照明も消しています。
そういった中で、コミュニケーターが帰るときに、「お帰り照明」という、道案内になるようなアプローチライトをつけています。
それによって、これだけの明るさを保っています。

カフェテラスはどういうコンセプトで照明計画をしたらよいのか随分、私も岩井さんも悩みました。
そして結論は、この建物が建っている周りの景観や環境的なものをキーワードにして照明計画ができないものかというところでした。
実際そう見えるかどうかは別として、これは空に浮かぶ雲をイメージして照明計画をし、直径3mと4mの2種類の正円を高さ30cmうがち、そこにランダムに丸い蛍光灯を埋めていきました。
ここはトップライトも仕組まれています。

デザインのポイントとして非常によかったことが一つあります。
それは、この丸の中にエアコンも入れ、蛍光灯も入れ、それに対する点検口も入れ、換気扇も入れているというところです。
ですから普通のオフィス天井にありがちな、天井が設備のインフラ的な下地になってしまうような状況は一切この空間には出てこない、すっきりとした天井のデザインができています。
それがゆえに雲にしようと、社内的にもコミュニケーションして出来上がったような経緯があります。

そして、カフェテラスの窓からは、阿蘇の外輪山がずっと見えます。
スカイラインというような状態には見えていませんが、それに対しての空があって、これに連動して照明が雲のように感じられるとプレゼンテーションの説明ではしているんですが、実際はハードの面では点灯の回路分けといったことに重きを置きながら、全体の配置計画はしております。

これは比較的広い役員会議室です。
全体的に明るめに写真ではあらわれていますが、ここもトップライトがメインになっています。
ここの外廊下にもトップライトがついています。
会議室の方は、トップライト越しの欄間からの光、あとはTMゾーンからの光でほぼ明るさを賄っているというような状態です。
ですからこれも人工光に頼るのではなくて、自然光プラス人工光という考えで光環境がつくれるかというようなことを主眼に、照明計画をしております。

さて、ここまでは、最終的に竣工したときのつむぎ商館の竣工写真的なものを見ていただきましたが、ここからは、実際にプロジェクトが進むに当たって、重要になりました、この「こだわりブック」という竣工したときに初めて編集され出版された社内報的な本の中からご説明したいと思います。

 【こだわりプロジェクト】

プロジェクトを進めるに際して、「こだわりプロジェクト」というチームが45編成されていました。
それは我々が設計デザインとしてかかわる前に、社内プロジェクトとして立ち上がっていたものです。
通常の仕事は、与件というものがあって、それを我々が受け、それに対しデザインはこうですよねというプレゼンテーションを差し上げて物事が進んでいくんです。
しかし今回は、まず我々にはこの「こだわりプロジェクト」のチームに参加してほしいという依頼があって、45チームほとんどにつき合いました。

それで一つ一つ一緒になって与件を積み上げていきました。
その中に当然光の話も出てきますし、場合によっては実際のデザインとか空間の話ではない自動販売機についてこだわるとか、そういったようなプロジェクトもありました。
なかなか濃いおつき合いで大変でしたが、充実していました。
こういう積み上げが最終的な「つむぎ商館」という社屋につながったのだと思います。

通常はトップダウンで、こういう新社屋をつくったから後は使えよということが多いですが、ここの場合は社員みんなでつくるんだという意識のあらわれがこのような「こだわりプロジェクト」というチームになり、最終的には1冊の本としてまとまるまでに至っていると思います。
それだけのこだわりを持った会社であるというのが特徴だと思います。

真ん中の写真は照度計です。
どういう照明計画をしましょうかという打ち合わせをしているときに、引っ越す前の社屋を最初に蜂屋さんが照度計ではかってみたんですね。

初めてその社屋に行ったときに、我々はすごく暗いなという印象を持ちました。つぶさに見ていますと、トップライトがありますので、それをちゃんと開放すれば明るい空間なんですが、パソコンに映ってしまうという理由や、もったいないということで蛍光灯を消していたり、トップライトをふさいだりという使い方をされていたんですね。
結果的に一番暗いところで150ルクスぐらい、ちょっと明るいなと思ったところで300ルクスぐらい、通常のオフィスの常識から考えると、ものすごく暗い空間でした。

しかし、それを暗いとはおっしゃっていなかったんですよ。
なので、我々は、照度はこれで十分ですというところがスタートラインでした。
私たちは、何ルクスにしましょうかというコミュニケーションもしたんですが、500ルクスをフル点灯時の明るさとして、あとはトップライトや窓の光等の自然光とミックスした状態の照明計画にしてほしいということが最終的な依頼でした。

ですから照明計画では点灯の目標値は500ルクスということが最終的な落としどころだったんです。
「つむぎ商館」には、照度計を持ってここが何ルクス出ていると回られている方がいるんですよ。
天候によっては明るいところもあるし、曇天であれば暗いところもある。
その折々に応じて照度計ではかって、ここが明るいからここの照明は消そうということを毎日やられているんです。
光に対してただつけて明るければいいのではなく、コミュニケーターが快適に仕事をするための時間帯の明るさはこうだよということを判断しながらみんなでそれを共有しています。
そのために運用できるような操作パネルのデザインをしたり、回路分けをしたりしました。

同じ意味合いで、湿度も含めて空調の使い状態をモニターできるようなシステムも導入しています。
これは2階のカフェテリアで、こちらも同じような観点で運用をみんなでしてみようということになりました。
広い場所ですから、あの照明器具を消したくてもスイッチはどこだというのは困るわけですよね。
そういったことがグラフィカルにもわかるようにデザインしております。
これも「こだわりプロジェクト」から出てきた一つのアイデアです。
我々のアイデアというよりは、社内の方々と一緒に共有してこういったことに至っていきました。

 【引越し後の風景】

これが実際引っ越しをして机が入ってきて、コミュニケーターが使っている風景です。
全国から電話がかかってくると、いろいろな事件が起きます。
何かあったときに「認識一致会」という言い方をしているんですが、その状況、状況に応じてコミュニケーターが集まって、次はどういうふうに対策をするかとか、今こういうことが起こっているから、この状況を共有して電話に対応してくださいとか、いろいろなコミュニケーションをされています。

そういったことからも、仕切りがあってはこういうふうなフレキシブルな対応ができないことがあって、このようなワンフロアの空間になっている意味をご理解いただければと思います。
先ほどの天井の木漏れ日照明のフレキシブルさに対応するかのように、照明計画としてあわせて見ていただけると、意味合いとしてわかっていただけるかなと思います。

これはキャットウォークから見下ろした状態です。
手前のほうは、企画とか役員の方々がいらっしゃるエリアです。
コミュニケーターがいらっしゃるところとはちょっと机の配列の雰囲気も違うのですが、基本的に役員の方々は役員室にこもるのではなく、コミュニケーターの臨場感を感じながら、その都度その都度の起こり得る状況に対応し、TMゾーンを運営しているというスタンスの空間にいます。

これは先ほどのスロープです。
竣工写真のときは、建築マテリアルだけが見えている、すっきりとした状況だったのですが、実際の使い方はこのようにされています。
ここにいろいろな広報的なパネルが張ってあります。

再春館さんのおもしろいところは、いろいろな部署に対して何々隊という名称をつけられるんですね。
このパネルをつくられているポップ隊という方々がいらっしゃいまして、毎日何かポップとして表現することがあればポップ隊の数名の女性がこういうパネルをつくって掲示をしていきます。

ここは、2階のカフェテリアと1階のTMゾーンのオンとオフの切りかえの空間でもあります。
そこにこのようなパネルを掲示することによって、コミニュケーションしながらオンとオフの切りかえをしましょうというコンセプトを持った空間になっています。
このように広報的なパネル、その日の売り上げ、社内で起こっていること、いろいろなことがここで掲示されています。

これは、通常の会社でいえば社員食堂になります。
それを社員食堂と言わないでカフェテリアと言っています。
阿蘇の外輪山を臨みながら、このように机を並べて非常にフレキシブルな状態で皆さん食事をされています。

中にいらっしゃる方は厨房隊と言われています。
厨房隊の方々が、ひょっとしたら自給自足でされているんじゃないかというぐらい食材も大事にされながら、また一切生ごみは出さないという調理方法の工夫もされながら、ここで毎日社員の方々におふくろの味的な食材や食事を提供されています。

再春館さんに行って非常にびっくりしたのですが、いろいろなスローガンが張ってあるんですね。
「蛍光灯、毎日1本8円なのでなるべく消しましょうね。」
「その電気もったいない」
そしてその関連したスイッチが近くにあります。
これはポップ隊がつくっているのですが、社員の方々にただもったいないから消せよというのではなく、会社の電気代とはいえ使い方によって有効にも使える、もったいない使い方をするなということを啓蒙しているのだと思います。
一貫した使い方、そういった意識改革を社内一丸となってやられている一例だと思います。

これは女性用のトイレです。
竣工写真ですので照明を全部つけて写真を撮っていますが、実際どのように使われているかというと、環境光としての照明は一切つけられていません。
使う方がこのブースに入って初めて点灯するというようなことを、わざわざ設えました。
こうすることによって、使っているところだけ明るいですから、あそこは使っているとわかります。そういう運用的な側面も踏まえてこのようなブースの照明計画をしています。

以上が再春館製薬「つむぎ商館」の事例のご紹介になります。

次は「一定の光」、ある意味意識されない光から「感ずる光」へということでサブタイトルをつけているのですが、再春館さんが選び取る光であれば、これは人工の光ということなんですが、通常の人工的な光から、我々がデザインするに際して感ずる光ということをテーマにやった事例をお見せします。