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Mariotトークセッション


岩井 こんばんは。照明デザイナーの岩井でございます。
今日は非常に寒いところをお越しいただきまして、ありがとうございます。
我々もこういう機会をいただいて非常に光栄です。
3人とも広島は久しぶりなので、今日はお好み焼きを食べてから行こうと早めに来て、広島でしっかりお好み焼きを食べて馴染んでまいりました。

今回、再春館製薬所のつむぎ商館という、非常にこだわりを持った施主のプロジェクトをお話させていただきます。
私たちも考え方等で非常に学ぶところが多かったものですから、そのプロジェクトを中心に、それぞれ3人がやっているプロジェクトもご紹介しながら、「光育
(ひかりいく)」のきっかけになるような話ができたらと思っています。

プロジェクトを一緒にやりました、近藤康夫デザイン事務所副所長の松山さんです。
それから建築のほうを担当されました、bbrの蜂屋さんです。


今日はこの3人で話を進めていきたいと思います。
ではまず、環境を中心に建築の話を蜂屋さんよろしくお願いします。


 再春館製薬所つむぎ商館 【建築環境の視点から】

蜂屋 再春館製薬所という会社は、皆さんご存じだと思います。
ドモホルンリンクルという製品を主にテレビCMを流して、0120-444-444を押すと、「いらっしゃいませ、再春館製薬所でございます」という声が返ってくるという、いわゆるコールセンターという形式で販売をしている会社です。

建築のタイプで言うと、コールセンターは、オフィスビルの延長だと考える方もいらっしゃれば、コールセンターという独自のビルディングタイプだと考える人も増えてきている空間だと思っています。

しかし、この再春館製薬所の場合は普通のコールセンターと違います。
多くの会社は、他社がつくっているものの販売業としてコールセンターがあるのですが、自分たちでつくっているものを自分たちで売っているというところが一つ目の大きな違いです。

二つ目は、リピーターが多い。また、何回も製品を使っている人に、どういう使い方をしたらより効果的かとか、次はこういう製品を使ったほうがいいんじゃないかというようなケアをする部分までコールセンターの業務としてやっているということです。
お客さんと自分たち、それから自分たちの社内でもコミュニケーションをすごく大切にするというところが、多分ほかのコールセンター、テレマーケティングセンターと違うところなんだと思います。

今、見ていただいている写真の部分だけでも約3000平米、コールセンター全体だと4500平米という広い空間です。
それがどういった経緯で出来たかということをお話したいと思います。

この図面は、以前、熊本市内にコールセンターがあったときの図面です。
見ると、決して大きくない机がたくさん並んでいる空間で、ひしめき合っているというような状態でした。
真ん中にエレベータや階段、それからトイレがあり、ワンフロアで使っているんですが空間的にはつながっていない状態で、みんなで一緒に仕事をしているという感じではありませんでした。
そして、このコールセンターは熊本市内にあり、工場自体は空港に近い阿蘇の外輪山のふもとにありました。つくる人と販売をする人が一緒に仕事をしたいというビジョンがあり、「本社移転プロジェクト」が発足したという経緯があります。

これは、最初に私たちbbrと近藤デザイン事務所でプレゼンテーションをしたときの模型です。
非常に広い緑の丘があったんですけれども、この丘のところに新しくコールセンターをつくろうという計画でした。
この丘自体、この敷地を購入する段階から北山創造研究所が総合プロデュースをされていました。
北山創造研究所の金田さんという方が、この工場の企画時からずっと再春館さんと一緒に、どういう場所にするべきかという方針、イメージをつくり上げてきて、それの延長で今回つむぎ商館を一緒に計画してきたという経緯があります。

これが、最初に私がかいた断面図です。
このときに考えたのは、みんなが一緒に集まる広い空間は、どういった空間構成をすればいいのか。柱がたくさんあることは、みんな一緒に仕事をするには決してフレキシブルな空間ではないので、どうしようかということでした。

それからコミュニケーターの方が使っているパソコンというのが、熱負荷が結構大きく、足元にパソコンがあると、夏はすごく暑く、冬は意外とそれが暖かい。そういう込み合ったパソコン環境の中で、実際どういう熱環境をつくるべきかというようなことを最初に考えました。

私たちはこの構造を「樹木構造」と呼びました。
屋根を支えるためにも最初に柱がポツンと立ってから、横にだんだん広がって、上のほうで屋根を支える。
それから自然光をできるだけ取り入れるために、トップライトを使おう。
ただトップライトをたくさん使うと、美白のための会社なのにみんなが日焼けしちゃうとだめなので、適当な大きさでとってできるだけ自然光を取り入れようと考えました。

また、上のほうにはソーラーパネルを載せて発電効率もよくしようと考えました。
そして、上のほうに穴をあけて空気の逃げ道をつくったり、床下からのエアコンにしたり、できるだけ座っている低いところに冷気が行くような、基本的な建物のシステムを考え、それを「樹木構造」と呼ぶところから建築の設計が始まりました。

社員が700〜800人という大人数なので、その人たちに一度で情報・イメージを共有してもらう必要がありました。
そのために、大きな木が屋根を支えます、その下でみんな仕事をしましょうというようなことをグラフィックに表現して、先ほどの建築システムとみんなの活動のシステムをできるだけ同じにしていこうと、プロジェクトを進めていきました。

それから、もう少し細かく設備の内容をつめ、床の下からの空調吹き出しや、屋根部分のソーラーパネルをはじめ、できるだけ自然の空気を取り入れて換気をすることや、雨が降ったらその雨をトイレの洗浄水に使うこと、そして、ここは阿蘇の外輪山のふもとですから伏流水が流れているので、そういった伏流水を製品や、製品をつくって出てきた廃水をもう一度再利用しようというようなシステムの提案をしていきました。

今説明している内容というのは、今回の「光育
(ひかりいく)」というテーマの中では、私は照明以前に考えることというか、自分たちがどういう意図を持って活動しているのかという観察とか分析がないと正しい光は得られないのではないかということです。
これは光だけではなくて、恐らく水の話もそうでしょう。
もっと大げさに言うと、自分たちがどれだけのエネルギーを使いながらここで活動しているんだというようなことをそこで働いている人たちは、正確に把握するべきじゃないかということです。

このシステムをもとにして、再春館の担当の方や松山さん、岩井さん、その他設備設計者の方、実際に地元で工事をしている人たちと相談をし、その場所に合うように進めてきました。

屋根の上にソーラーパネルを載せる前に最終的に屋根をチェックしている写真です。
非常に風が強いところですから、屋根にソーラーパネルを載せたときに台風で飛んでいってはいけないと、とめる金具を実際に引っ張って試験をしているところです。
屋根にソーラーパネルを載せると発電する他に、遮熱にもなるんですよね。
発電は、たしか一番発電量が多いときは、建物の中の電気が全部賄えるぐらいの量を持っています。

細かい話ですが、これがさっきの木の部分の接合部を鋳物でつくっているときの検査。
これがどういう空調方式にするのが適正かということで、下から吹いたとき、上から吹いたときどんな気流が起こるかということをみんなに説明したときの図。
たしか最初に岩井さんが、照明の配灯をどういうふうにすればいいのかということでエスキースをしてくださった図。

これは床下から吹き出す空調をしたときに、どういう熱環境になるかという温度分布を見たときの図。この部分は自然換気と呼んでいます。
冷たい空気なりを下から入れて、上から熱い空気を出すというスウィンドウというシステムがあるんですが、そういった風を利用するということを検討したときの図。ちょっとわかりにくいんですが、これは生産した水をもう一回トイレの洗浄水に使うとかということを考えたときの図。

このように、いろいろなシステムの検討を約1年間ずっとやりながら、たまには合宿なんかもしながら進めていってできた建物です。

これが工事途中の航空写真です。
非常に自然に恵まれた場所で、このあたりはもう完全に阿蘇の外輪山になっていまして、ここからちょっと外れたところが阿蘇くまもと空港の滑走路になっています。

このように丘になっているので、建物の入り口は2階にあります。
入り口から入ると、最初にカフェがあります。
何故、入ってすぐのところにカフェがあるかというと、つむぎ商館内でテレマーケティングをしている人も、工場で働いている人も一緒にご飯を食べましょうということで、入ってすぐのところでみんなが集まる場所がつくられました。
そして真ん中にスロープの空間があり、2階からスロープを降りると一面がテレマーケティングセンターになっています。

4500平米のテレマーケティングセンターには、柱が3本。
この3本が樹木の形をした柱になっていまして、2階の吹き抜けの屋根を全部支えているという構造です。
どんな建築かイメージしてもらうのがなかなか難しいと思いますが、写真を見ながら進めて行きたいと思います。

これは樹木構造の柱を建て始めたところです。
樹木の形をしたものが上で組めないので、下で地組をしてから建てていくという順序で工事現場で組み立てていきました。こういった樹木の形をした柱で屋根全体を支えています。

これがちょうど床を組んでいるところです。
いわゆるOAフロアというものです。OAフロアを支えるための、40?ぐらいある支柱を並べていって、その上にスチールのパネルを敷いて床をつくっています。

天井は吸音ができるように、岩綿吸音板という材料を使用しています。
光は木漏れ日のように入ってきているような雰囲気をイメージしていました。
しかし、実際に、木漏れ日がそのまま入ってきてしまうと、コンピュータの画面を見る業務に支障が出てきます。
照明の配灯やトップライトのちりばめ方としては、できるだけランダムになっているけれども作業面の光は均質になるように岩井さんと松山さんと一緒に考えました。
また、トップライトの光も、できるだけ樹木の枝に当たって陰影がつくと楽しいなと思ったんです。
オフィスというと、均質な光を求めるから均等な配置となります。トップライトは光がとれるのはわかっているが、ちょっとリスクがあるかなと言ってみんな避けがちです。
しかし、ここはほぼ平屋建ての建物で、しかも自分たちでつくって自分たちで使う建物です。これがテナントビルだと、提案したところでオーナーに受け入れられるかどうかわからないんですが、自分たちで使うんだという意欲があると本当にいいことは何なんだろうと考える思考がさえてくるというんですかね。そういった感じは、やっていてとても実感しました。

床は全面的にOAフロアが敷き込められているんですけれども、OAフロアの一枚一枚に細かい穴があいていて、そこから床の吹き出しの空調をするというシステムになっています。

光は岩井さんと近藤さんが頑張ってくれるので、私はどちらかというと床下からの空調がより快適になるように頑張りました。
黄色く見えるカーペットなんですが、これにも実は細かい穴があいています。
その穴から夏は冷たい空気が、冬は暖かい空気が出てきます。

ボーダーになっている部分が空調のゾーニングになっており、ボーダーが入っているエリアごとに空調の調整ができるというふうになっています。
中から外の風景がちょっと見えると思うんですが、働きながら阿蘇の外輪山が見えるという非常に良い環境です。

窓側の空調機置き場の壁面にホワイトボードのフィルムを張っています。
こういう場所でミーティングができたり、自分たちで考える作業がサッとできたりする、思ったことはすぐ行動ができるというのも、この建物の計画の非常に大切なところだったので、こういったホワイトボードみたいなものも壁を利用してつくってあります。

これはトップライトと照明を映したところです。
詳しいことは後で松山さんと岩井さんが説明されると思うんですけれども、エネルギーに対して会社というのは非常にうるさいんですよね。
それはもちろん当たり前のことで、明るい環境にはしたいけれども、明るくすればそれだけ光熱費はかかるわけです。
会社にとって光熱費はできるだけ減らしたいというところでもあります。
でもただ暗くしちゃえばいいかというと、そういうわけにはいかないので、照明を半灯にしたりというようなことも一緒に考えてほしいということで、全灯になったり半灯になったりすることが出来ます。

これはちょっと斜めになっている窓です。
中の気圧と外の気圧の差を利用して、暖かい空気が天井のほうに溜まったりすると排熱する自然換気をしてくれます。
微妙なバランサーがついていて、スイングするんですね。熱によって自然に、熱い空気が上に上がっていくとそれが気圧の差になって外に排出されるというようなシステムになっています。

ここで建築設計側から考えると、周りは緑が非常にきれいな場所ですが、熊本は台風が非常に多く、気象条件としては過酷なところです。
過酷なところの建物はやっぱり軒深くしようと思って、短いところでも4m、長いところだと6m近い軒を出しました。
軒の下はアルミの金属板を張り、できるだけ外の自然の緑色が映り込むような効果をねらってデザインをしました。

これが、いよいよお引っ越しというような状態まで完成したところです。
椅子が無いんですけれども、どうせ自分たちが引っ越しをするならば、椅子も一緒に持っていこう、自分たちが使ってなじんだものを何らかは持っていこう、そうすることで、引っ越しのイベント性を高め、引っ越しの意味をみんなで考えるという引越しプロジェクトでした。
コールセンターなので、1日にして入れかえなければいけないということがありますから、さすがにコンピューターを持っていくことはできなかったんですけれども、そういったことでこの時点では椅子は無しの状態でセッティングをしています。

そして、引っ越し前に順番に社員さんを呼んで、ここはこうやって使うんだよというような説明会を工事の途中も含めて何十回とやっていたかと思います。

私の話は以上ですが、引っ越しをするに当たり社員の方に向けてこういった冊子をつくりました。
いま私が説明したような、環境に対して自分たちはどういうふうに取り組んでいくのかということ、今の光を含めてどういった光を考えましたよというようなこと、それから使うときはこういう使い方をしようねというようなことを再春館の担当者の方がまとめて、これで運用しようとつくったものです。
実際にこの運用方法と合わせたデザインは松山さんに担当していただいたので、引き続きお願いします。