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Mariotトークセッション


 【多岐にわたる照明デザイン】

戸恒 楽しい話をどうもありがとうございました。
申し遅れましたが、戸恒と申しまして、照明のデザイナーをやっております。
まだ独立して3年目なものですから、こういった機会を持たせていただくこともほとんどありませんでした。
まずダイジェストで私がどんな仕事をしてきたかというのを、ご紹介いたします。
まず、照明デザインとは何をするかというのを簡単にお話しします。

照明デザイナーと一口に言っても実はすごくたくさん種類がございまして、一番違うのは舞台をやられている照明デザイナーですね。
完全に視点の向きが決まった世界で物事をつくられている方。
それから次に空間系のデザイナーと呼ばれている方です。
その中でも商業、お店とかインテリアの世界をすごく充実してやられている方と、建築系、空間系と呼ばれている方に大別されます。

私はその空間系の照明デザインをやっていまして、仕事は多岐にわたりますけれども、多くは設計者の方やインテリアデザイナーの方、それから藤本さんのような建築家の方と一緒にパートナーを組んで、ともに空間をつくっていきます。
当然建築家の方、設計者の方の空間があって、そのコンセプトを聞き、その中に照明の技術をどう使って、光をつくっていくか。そういったことが主な仕事になります。

そういう意味ではたくさんの方と仕事をするので、じゃあ戸恒の光のデザインは何なんだと言われても、なかなか私自身も説明するのが難しいです。
一緒にやらせていただく設計者や建築家の方の持っている雰囲気とか空間とか、そういうもので全くアウトプットが違うんですね。
今日は藤本さんとお話しさせていただくので、後ほど一緒にやらせていただいたものをベースにお話したいと思うんですが、最初はあえて全く藤本さんの世界とは違う光をお見せしたいと思います。

まず商業系の、割と派手な光からお見せします。
これはホテル日航東京チャペルです。
お台場という東京の臨海副都心と呼ばれているところで、レインボーブリッジと東京タワーが見える海岸沿いに建っているホテルでして、そこに海に突き出すように増築されたチャペルです。
ガラスで囲まれたチャペルは、そこに貝殻のような屋根を抱いているという建築です。
こういった商業施設で照明デザイナーが呼ばれる理由は、要するにお金を生めということなんですね。
施主の方の意見が非常に強くて、我々の仕事はどっちかというと建築家に対してプレゼンをするのではなくて、建築家を助ける仕事なんですね。
建築家に、こういうことをすれば多分お客さん喜ぶよと提案します。

これはもう最たる例で、とにかく夜、結婚式を挙げさせるんだというお客様の強い意志がございまして、それに対して照明に何ができるかという仕事でした。
細かく話し出すとこれだけでずっとしゃべってしまうので、簡単に申します。
海ということで明快に白と青を基調にして組み立てております。
建築のコンセプトにもあったのですが、花嫁さんは深海から地上に上がるビーナスで、それが地上に上がってきて、青い世界に入っていくというストーリーで組み立てたものです。

夜景が大変すばらしいものですから、いかに中の空間演出と外の夜景を一体化させるかというのが技術的な肝でした。
当然ガラスがあれば室内の照明等が光って映り込むんですけれども、いかにそれを感じさせないで一体化させるかということでした。
クライマックスは青く染められた中で本当にゲストと花嫁さんと一体化して祝福をされるという空間をつくったものです。

これは実際プレゼンに使った絵ですね。
我々は建築家さんからいただいた絵を、フォトショップ等のソフトを使って色を着彩したりします。
いただいたパーツとか平面図とかを加工して、絵にして伝えるというのが、今の照明デザインのプロセスでございます。

次に、コンラッドホテル東京という、東京の汐留という新しく高層ビルがたくさん建ったところにできたホテルですね。
ヒルトンホテルという名前を聞いたことあると思うんですけれども、ヒルトンの上クラスブランドのホテルです。
こちらはイギリス人のインテリアデザイナーさんとの共同でした。
ものすごく自分勝手なことを言うんですよね。
イメージだけはたくさん書いてくるんだけれども、光が空中に何も吊られてなくて浮いていたりとか、いろんな勝手なことを言うのを、施主と、ゼネコン、施工者、それから東京の設計者の間に立って、光のデザインというよりも、どちらかというとイメージを実現させる仕事でした。

こちらは、最近できた霞会館です。
霞が関ビルというのが昔から東京の真ん中にあって、そこの中に皇族の末裔の方など割と高貴な方たちが集うクラブがあります。
おじいちゃん、おばあちゃんが談話したりする場所です。
とにかくゴージャス系ですね。
ご一緒した設計の方からは、とにかく間接照明で展開したいということでした。
インテリアの絵がもともとあるので、その中の過剰な光を少し整理し、逆にちょっとこう光を入れたほうがいいよというのを議論しながら物事をつくっていくというタイプの仕事でございます。

次に、長野県茅野市の駅前にできた茅野市民館という公共施設です。
図書館、大ホール、音楽ホールと何でもある施設なんですが、建築の空間も非常に大きく、シンプルに、ダイナミックに切り取っていらっしゃる。その中でいかに光を同じスケールでつくっていって成立させるかというのがテーマでした。

照明器具というと、普通の建築ではダウンライトやスポットライトみたいな点がいっぱいついてきますが、ここでは徹底してどこに照明が置いてあるのかわからなくしています。
例えば天井がどーんと光っている、壁がばーんと光っている。
それで十分明るいじゃん。全体の風景もきれいに見えるね、ということを徹底してやり込んだ仕事でした。

次に、東京のオフィスビルが建ち並ぶところに最近できた施設です。
結構デベロッパーさんのお仕事を設計事務所さん経由でいただきます。
デベロッパーさんというのは、例えばビルをつくってそれをテナントさんに貸すんですけれども、照明がうまくいっている建物の事例というのを非常に勉強されているんですね。
これは実は私たちにとって有難いことです。
当然デベロッパーさんですからいかに安くつくるかという命題の中でつくっていくんですけれども、最後の方に照明には照明デザイナーが入ってないと駄目だというのがわかってくる。
そうすると、大体現場が始まってほとんど出来ているときに呼ばれるんですね。
そして、急に何とかせいというのが多いです。
我々が入っていって、とにかく設備的な照明計画しか入ってないものにテコ入れする。
短時間で一気にまとめてつくるというが実際我々の仕事でたくさんあります。

次は医学書院という医学書を扱う本屋さんの本社ビルでございます。
非常に重厚なインテリアデザインなんですけれども、建築設計の方が非常に照明が好きで、少し新しさも感じるように照明で何とかしてほしいと言われたんですね。
そこで、エントランスホール、吹き抜け、2階に上る階段部分を担当しました。

医学書院という医学書を扱う非常にアカデミックなイメージを照明でいかに伝えるかと考えたときに、やはり要素をできるだけ減らしたいと思ったんですね。
照明器具というのをつけないと当然光は出てきません。
しかし、できるだけ天井に何もついてなく、とにかく整然と整理されているとか、そういうことがスマートさとかアカデミック、洗練されたイメージに近づくんじゃないかということを考えて、建築の要素をどんどん照明に置きかえて提案しております。

階段室では、下に光が走っております。
お客様に階段を上がらせようとするとダウンライトが要りますよね。
しかし、吹き抜けの上からダウンライトをつけると、今度はメンテナンスどうするんだ、昇降装置つけるのか等の問題が起こり天井にも穴がいっぱいあいて汚くなってくるんですね。
それを避けるためにはどうするかということで、下に光を入れちゃえと考えました。
そうすると天井が明るくなるし、上っていくときも天井に当たった光がはね返ってちゃんと足元が見えます。

また、ここは免震層でしたので、ちょうど下に人が入れるピットがございまして、そこからメンテナンスできるということもありました。
そうしたことを建築家さんからどんどん情報をいただいて、じゃあこう解いたらいいんじゃないかということでできた仕事です。

次は個人の住宅ですね。
私は独立してからこういった個人のご住宅をやらせていただくことが非常に多くて、建築家さんからの依頼もありますし、個人の方がいきなりホームページから依頼をくださる場合もございます。

ここはとにかく間接照明が大好きなお客様で、僕らからするとそこまでやらなくていいんじゃないのと思う場所でも、いや、間接照明にしてくれと言われました。
そういうふうに思い切ったことを言われると、だんだん僕らも悪乗りしまして、本当に間接照明だけでやり切った仕事です。
ただすごく天井が高い空間だったので天井にはつけられませんでした。
だけれどある程度の明るさも確保しないといけないということで、棚があれば棚に間接照明を入れたり、壁しかなければ壁に飾り棚を兼ねた照明をつくってリビングの光にしたりということをしました。

こちらは木を全面に生かした住宅です。
2階がリビングになっていまして、無垢の木がずうっとくっついている。
後で藤本さんとお話したいんですけれども、建築家って僕からすると大体困ることしてるんですよね。
困るから頼んでこられるのですが...
しかも、建築家の方はにこにこしながら、いいのを思いついてお客さんに喜んでもらっているんですよなんて話されるんです。
ここも、照明がつけられなくて困っていろいろ考えたわけですが、最終的には棚があるということに着目しました。
奥の棚にスポットライトがいっぱい並んでいて、天井に対してほぼ並行に光を飛ばしています。
それによって天井の陰影というのを出すのと、外から見たときにこぼれ出てくる景色というのを両方獲得しようとしています。
建築のデザインを生かした照明計画を進めるのも私たちの仕事ですね。

次は、外部空間の話になります。
こちらは海外の集合住宅の外構ですね。
ランドスケープデザインとして公共動線、途中に水浸しの場所があるんです。
そこには水没しない丸い敷石がございまして、日本では考えられないようなデザインですが、その上を歩くデザインになっています。
それに対して、普通は池に落ちないように明るい光を落とさなきゃと発想をしますが、ここでは逆に入っちゃいけないところにいっぱい光を入れようということで、光ファイバーを敷石の周りに埋めたんですね。
歩く人は光を踏まないようにすれば正しく歩けるというような光景をつくりました。

それからシンガポールの物件です。
シンガポールというのは集合住宅の真ん中に必ずプールがあるんですね。
プールというのは実は照明にとっては非常に大きな武器になります。
ここに四つだけ水中照明入っているんですけれども、水の中というのは光が脱出できずにどんどん反射して増幅するように見えるんですね。
だから、例えば階段の反対側に照明入れると、光がずうっと届きまして段をうっすら照らしてくれる、かつ全体にぼんやり光るということで、その外構計画の光の水たまりというんですか、そういったものがつくれるんですね。
その分周りの明るさというのを落として、全体としてエネルギーを使わずにきれいな景色をつくって、しかも歩いていて楽しいし美しいという、そういうストーリーをつくります。

次は一過性のライトアップイベントの例ですね。
東京の海辺のほうに浜離宮という徳川将軍ゆかりの庭園がございまして、そちらで2006年に初めてライトアップを担当いたしました。

浜離宮というのはもともと夜は開いていなかったのですが、2006年からライトアップでもう少し知名度を上げようということで開催されました。
とにかく、もともとの照明設備がないものですから、このときはイベント屋さんになるんですね。
発電機を自分たちで調達して持ち込み、少ない予算なんですけれどもいかにお客様に楽しんでいただくか考えました。
こういう仕事はさっきの建築家さんとやる仕事と違って、比較的自由に勝手にできるといったタイプのものです。

具体的には、青い光で照らされた非日常的な、普通の日常的なライトアップというのが、この回遊式庭園でうろうろするとどんどん場面展開するというものでした。

次の年にもう一回やれと言われたのですが、それって結構つらいんですね。
前回こっちはすごくやり切った感があるのを、もう一回やってほしいと言われると、非常に困るんです。
しかし、頭ひねりまして池の上に浮いているお茶屋さんを舞台のようにぽーんと浮かび上がらせようというコンセプトでまとめました。
それと前の年はなかった入り口周りの風景もおもしろくしてよということで色々とやらせていただきました。

簡単ですが、照明デザインというものが多岐にわたっていて、また、いろいろ条件によって出来てくる光が違うというのがお分かりいただけたかと思います。
営業的には非常に不利なんですけれども、何か自然体で、普通にそこに光があって、それが当たり前のように見えて、でもすごくいいというのがやっぱり僕の理想でずっとやってきたというところでございます。

では、ここから藤本さんと一緒にやらせていただいた仕事を、写真をご覧いただきながら、私もいろいろ質問したりしながらお話を進めたいと思います。