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| 藤本 こんばんは。藤本です。 今日は寒い中どうもありがとうございます。 僕も北海道出身なので寒いのは大丈夫なはずなんですが、最近ちょっと苦手です。 今日は特に冷え込んでいる中来ていただいて、どうもありがとうございます。
今日、僕のプレゼンテーションのタイトルは「プリミティブ・フューチャー」です。 これは、あんまり光には関係がないとも言えるし、関係しているとも言えます。 僕が建築を考えるときは割とどんどんさかのぼっていくんですよね。 家をつくるときも、家というのはもともと本当はどうあったんだろう、今僕らが家だと思っているものが、本当はもっとさかのぼっていくと違うものになっていくんじゃないかというような形で考えていきます。 それが一つの僕のやり方になっています。 これはプリミティブ・フューチャー・ハウスというそのままの名前をつけている住宅で、僕の中では一つの家の原形みたいなものの提案です。 ![]() 建築の原形って幾つかあると思うのですが、これを説明するときに僕は巣と洞窟という例えを使っています。 僕の中では巣というのは住む人に合わせてつくり込んでいく、しつらえていく、そういう場所です。 いわゆる機能的に住むことができるというのが巣なんじゃないかと考えています。 それに対して、洞窟というのはもともとそこにある場所なので、住む人にとって住みよいかどうかというのはよく分からないんですよね。 ただ、そこに入り込んでいって、中の凹凸や地形に対して住む人がいろんな発見をしていって、それで、何とか住みこなしていく。 だから、つくり込まれた機能的な巣というものに対して、そうではなく、もともとあるところに入っていっていろんな手がかりを見つけたり、空間から刺激をもらったりしていろんな発見をしていく、それが洞窟です。 どちらかというと僕は洞窟的な場所のほうがこれからの住む場所としては楽しいんじゃないかという気がしているんですね。それは、つくられたものとできてしまったものの対比だと言えると思っています。 照明のデザインというのはどちらかというとつくっていかなきゃいけないものですよね。 演出すると言ってしまうとちょっと語弊があるのかもしれないですが、僕は、それに対してなるべくつくられたものじゃないものを求めています。 戸恒さんとも最近いくつかプロジェクトを一緒にしていますが、僕がそういうふうに照明をイメージしているのが、ある意味ではちょっと変な感触をもたらせているかもしれません(笑)。 でもそれが逆に刺激になって、多分戸恒さんのほうからも新しいものが生まれてきているし、僕もそれに対してまた反応して、いい意味でコラボレーションができてるんじゃないかなあという気がします。 この家なんですけれども、これは、1階、2階、床という普通の家にあるものを全部取っ払ってしまっています。 家というのは人が関わる場であると考えています。僕はこの段差を一応35センチで設定しているんですけれど、この段差だけを設定してあげることで、そこにいろんな形で人が関わるようになるんです。 座っている人がいたり、キッチンみたいなところにいる人がいたり、ちょっとその上に立っている子供がいたりですね。 段差がどんどん連なっているので、ある人にとってはテーブルでも、違う人にとっては床だったりします。 いろんな形で場に関わっている人間同士はまたいろんな形で関係し合っている。そういうものだけでも住む場所というのはできてくるんじゃないかという発想からこの家をつくっていきました。 つまり、普通は平らな床に家具を置いて場をしつらえていくわけですが、その家具自体を相互に関係させて、場を立体的に組み上げていくということをしました。 しかもこういう段差だけの場なので、この段差をどうとでも解釈できるわけですよね。 住む人によっていろんな解釈で場が生まれてくる、そういうものを考えています。 こんな変な形をしているんですけれども、実際住みよいとも言えるし、すごく機能的だとも言えるし、全く機能的じゃないとも言える、そういうものですね。 ル・コルビュジェのドミノシステムは近代建築の原形と言われていて、一つの原始的な住宅ですよね。 床、柱、階段という建築を成り立たせているものをきれいに切り分けて、整理整頓して、もう一回組み直している。まさに近代の思想という感じですよね。 それに対して、僕の提案は切り分けられないものなんですね。 床だと思っていたものが階段でもあるし、階段だと思っていたものは棚になっていたりする。 だから床、それから柱、階段というものをきれいに切り分けていたコルビュジエとは、まさに正反対のことになってしまっている。 でも、正反対なんだけれども、非常に原始的であるという意味では変わらないわけですね。整理されないものをそのまままとめ上げるというか、そういうようなイメージのものをつくっております。 ![]() 次は一番最近できた住宅で、戸恒さんに照明をお願いしたものです。 これは別荘なんですけれども、岩場の海際の敷地に建っています。 お施主さんがすごく海が好きな方で、海の近くに建てるということで、岩場の中に住んでいるような家をつくりたいなあと思ったんですね。 家自体はこんな変な形をしています。 何でこんな形をしているかというと、いろんな風景を発見していける場をつくりたいと思ったからです。 海というのはそんなに均一なものじゃなくて、いろんな海というのが実はあるんじゃないかと考えました。 例えば、奥からずうっとこの細長いところを見通して見る海や、お風呂から海に飛び出して見る海とか、この家の中を歩いていくことでさまざまな違った海が見えてきます。 この別荘は一応寝る場所、リビング、ダイニングと大体決まっているんですけれども、その間の解釈というのは非常に自由なんですよね。 ですから、どんどん住みこなしていくことができる。 ちょっとしたくぼみがあって書斎になっているなど、そういう緩やかに、あまり決めつけられてない場をつくっております。 岩場の中というのは洞窟に似ているところがあって、狭い場所、広い場所、くぼんだ場所、そういういろんな場所を探して遊び回るのが楽しいんですね。 ですから、この岩場のようにいろんな場所が家の中に自然にできているような、そんな建築を考えてみました。 中に入ると先程の枝分かれしたプランが見えてきて、ダイニングがあって、キッチンがあって、奥には和室のスペースがあります。
部屋名は一応ついていますが、それにとらわれなくて場所がうごめいているというんでしょうか、そんなつくりになっています。ところどころに鏡を張って、反対方向の海が映すこともやっています。 夜になってくると、戸恒さんの計画された照明がきいてくるんですけれども、非常に限られた予算の中、この場所のつくり方をうまく引き出して貰えました。 照明でぎらぎらと演出するというよりは、この場所がどうやってできているのか、どういう場所なのかということをはっと気がつかせてくれるような、そんな照明です。 僕はこれを見て非常に感動しました。 均一に光っているように見えますけれども、実際は空間なりのかすかなムラというか、抑揚がついているんですよね。 その辺は戸恒さんから後でご説明あると思います。空間の成り立ちがそのまま自然な明るさの変化につながっているような、そういうつくり方です。 ![]() これは、北海道伊達市にある情緒障害児短期治療施設です。 このときに初めて戸恒さんと一緒にやらせてもらいました。 情緒障害児というのは簡単に言うと虐待等で少し精神的にダメージがある子ども、あるいは親がいなくなってしまった子どものことです。 50人ぐらいここで生活をして、その中でだんだん人とのコミュニケーションを再び獲得していくという場所ですね。 ですから医療施設というよりは大きな生活空間、大きな家であって、あるいは小さな町であるという、そういうような場所になっています。 プランはこんなふうになっています。 これ、ちゃんとまじめに考えられているんですよ。でも、ぱっと見は、ただ箱をばらまいたように見えますよね。 僕らがおもしろいなあと思うのは、まじめにプランニングされているんですけれども、こういう奇妙に引っ込んだ、できちゃったような場所があるということです。 こういうものはどこまで精密にプランニングしても絶対残ってくる。 つくろうと思ってつくった場所と、プランニングの結果としてどうしてもできてしまったような、自然にできてしまったような場所が両立している。 すごく精密なプランニングと偶然性がどこまでも両立している。 そういうおもしろい建築のつくり方です。 外から見るとなんとなく昔のヨーロッパの古い町みたいな、そんなたたずまいになっています。 ![]() これは食堂を上から見ています。 こういう奇妙なくぼんだ場所が幾つもあるんですね。 これ全体が食堂で、食堂の中にさらに場のムラというんでしょうかね、抑揚がいろいろある。こういうふうに箱の中にあるスペースもあれば、開けたところもあって、外に近いところもあるし、奥まったところもある。それらを子供たちは自由に選びながら暮らしていきます。 ![]() これは工事中の写真ですが、リビングスペースのところを見ています。 どんどん空間が向こうにつながっていくような感じです。 この箱と箱の間に屋根がかかって、リビングスペースとか食堂になっているんですけれども、この部分はかなり外部空間のような雰囲気ですね。 トップライトがあって、それが木漏れ日のようにルーバーで遮られている。 向こう側に空間が広がっているんだけれども、それが外なのか中なのかよくわからないので、自分がいるところもぴったり囲まれているというよりは、緩やかに囲まれていて、必ずどこかの向こうに広がっていける、つながっていける。 そういう広がりを持った外部空間のような場所です。 天井を見上げるとルーバーが張られています。 このかすかなルーバーの間に照明を仕込んでもらいました。 トップライトがうまく配置されていて、ルーバーがそれを遮っているのですが天井裏が白く塗ってあるので、こうやってにじんだような自然光が入ってきます。 ですから、なおさら硬い天井に囲まれているというよりは、外部空間のように見えます。 これは夜の外観です。 北海道・伊達の丘の中腹にあって、原野の中に小さな町のような、あるいは大きな家のような形で建っています。 ![]() これは集合住宅ですね。 かなり奇妙なものに見えるかもしれないですが東京の真ん中に建っています。 東京というのを一番象徴的につくりたいなと思って、とにかく家がぐしゃぐしゃに積み上がっているというものにしました。 これは1個の家に1人が住んでいるのではなくて、1人がいくつかの家を所有してるんですね。 ですから本当に町中に住んでいるような、そういう不思議なものになる予定です。 ![]() これは今、大分で施工中の住宅です。 一軒家で敷地全体が大きなコンクリートの箱で囲まれています。 この外側の殻はただ穴が開いているだけで風も雨も通る。そうすると、この庭が中なのか外なのかよく分からなくなるんですよね。 内側の殻の中が家なんですが、外側にもう一つ殻があるので、この殻は非常に軽いというか、弱いというか。この外部と内部の関係も近づいてくるというようなことを考えてつくっています。 普通家というのは中と外がぱきっと分かれているものですけれども、何かグラデーションで中と外がつながるような、そういうイメージです。 一般的な家は庭があって、外部空間と内部空間がセットになっていますけれども、そのあり方をがらっと変えてしまって、しかも家というのはそもそもこうあるべきなんじゃないかというようなつくりを目指しています。 ![]() これは宇都宮でやっている住宅のプロジェクトで、好きにつくっていいということで、家と町と森みたいなものが分かれる前のものをつくろうというのがテーマです。 人間が住む場所というのは家と呼ばれていて、大体一戸建てという単位ですよね。 だけれども、ずっとさかのぼっていくと町中の1軒の家でも住む場所としてはある町の領域みたいなものがぼんやり浮かんできたり、あるいは山の中に家があったとしても、住む場所としては山全体が生活の場だったりするというようなことがあると思うんですね。 ですから、どんどんさかのぼっていって、1個の敷地の中に、町なのか山なのか家なのかよくわからない塊みたいなものをつくってしまえというプロジェクトです。 ![]() この箱は2mぐらいしかなくてすごくちっちゃいんですけれども、一応部屋名があって、それが積み上がっている。 そして、積み上がっている上から木が生えていたりして、すき間に外部空間もたくさんつくられている。 そうすると、この外部空間も家のようであるし、内部空間というのは地面の中に住んでいるような感じかもしれないしという、非常に奇妙な家ですね。 こんな感じで、立体的に木がこう浮かんでいるような雰囲気になっています。 以上のような形で、最初にプリミティブ・フューチャーというタイトルを出しましたけれども、どんどんさかのぼっていきながら、本当はどうあったら楽しいんだろうというようなことを考えながら、建築をつくっていると言っていいと思います。 どうもありがとうございました。 |