| HOME>トークセッション>MARIOT EVENT VOL.23 NAGOYA P.1/2/3/4/5 |
![]() 近森 わかりました。解説つきで幾つかお見せしようかと思います。 その前に、そもそも僕が何者なのかというところから説明したほうがいいかと思います。 これはいま僕の声に反応して色のロープが動いているんですが、基本的にはこういう形で人の振る舞いを視覚的なものに変換するということ、いわゆるインタラクティブということを基盤にした作品をつくっています。 実は今ご説明があったように、単純に僕らはただ芸術作品として、アーティストとして作品をつくっているだけではなくて、空間演出的なこととしてもこういうものを生かしたことをやろうということで、数年前からplaplax(プラプラックス)という会社をつくりました。 ![]() しかし、今回はアーティストとして関わったので、実は地下道の場合、いわゆる仕事として考えるのか作品として考えるのかはすごく微妙でした。 また、今回はminim++(ミニムプラプラ)というアーティストグループの名前で制作していますが、最近はplaplaxという会社名をつけた関係で、minim++という名前はもう要らないんじゃないかみたいな話もあって実名で活動していたりもします。 そういうアートワークとしてやっている部分と、他に僕らの重要な要素として東京大学大学院情報学環というところに新しいメディアを開発していく研究室がありまして、そことの共同研究でとにかく新しいメディアテクノロジーを開発していくことがもう一つ軸としてあります。 その上でそういうものを組み合わせていくとインタラクティブなデザイン、空間デザインが可能になってくるのではないかということでplaplaxという会社にしています。 いわゆる物と人がかかわる形が今までのインタラクティブという考え方だったんですが、僕らはこれをインタラクティブスペース、もうちょっと空間全体に人の振る舞いが影響していくような、人の動きによって空間が変化していくことができたらおもしろいと考えています。 そういうものがもっとできていくとインタラクティブプレイグラウンドというか、人が関わっていくことで空間全体が遊びの要素を持った場所になっていくのではないかと考えています。 |
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| 具体的なものをお見せしようかと思います。 これは実は僕らの作品集として出しているものの中についているDVDですが、JOBとWORKというふうに分けているんですね。 WORKのほうは作品です。 例えば、これはテーブルの上にいろいろな道具がのっていて、「father's desk」というタイトルです。 ある架空のお父さんの、机の上にのっている道具にお客さんが触れると道具の影が動き出したり、変化したりするということで、何となくそういう中からこのお父さんが一体どういうキャラクターなんだろうかということを想像してもらったりします。 こういう作品をJOBとしてやった場合にはどういうことが可能なのかというと、例えば、某金属素材を世の中に提供している会社の場合、そこのプレゼンテーションとしてこういう技術を使えないかということでお話をいただきました。 薄い鉄板だったら車に使われているとか、アルミのこういう輪はアルミホイールに使われているとか、細い針金のようなものはバネになっているとか。 そういう形で素材でしかないものが、いかに世の中にいろいろな形になって出てきているのかをプレゼンテーションするために、こういう技法を使ってやりました。 だから単純にこれは僕らの作品とも言い切れなくて、もう少しデザインに近いようなものかなと思っています。 あるいはその他のWORKでは、スポットライトに照らされた空間に人が入ると自分の影からいろいろなものが飛び出してくるという作品です。 言ってみれば光のスポットですけれども、そこに影の生き物たちが棲み着いているみたいな、そういう意味で「Kage's Nest〜かげの棲み家」というタイトルです。 |
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| これに対してのJOBとしては東京の汐留という地区にあるアドミュージアムという広告のミュージアムのエントランスです。 エントランスの階段部分に何かインタラクティブな反応するものがあるといいということでお話をいただきました。 メッシュ状の壁であったり階段であったり、もともともう建築としてでき上がった空間なので、そこに、いかにして僕らの作品を組み合わせるかということを考えました。 プロジェクションをしたらちょっと立体感が出ておもしろいんじゃないかとか、人がかかわるということで人の影からいろいろな動物とか鳥が飛び出すということがおもしろいんじゃないかという話になりました。 |
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| 鳥はアイデアのメタファーとしてよく使われます。 アイデアを温めるとかアイデアが羽ばたく、飛び立つとか、そういうことで何か広告のミュージアムとして鳥が飛び立つということを一つ入れたらいいんじゃないかということになりました。 それともう一つは広告ということでコミュニケーションがテーマだったので、自分が壁に関わることでいろいろな人の影が出てきて、人同士が関わり合うみたいなことを表現する、そういうインタラクティブなシステムもつくりました。 WORKとJOBという形で展開するように僕らの場合は作品、アーティストという立場とデザインワークに近い部分を並行してやっています。 そういう意味ではルーセントアベニューというのは、この両方の要素を持っていたかなと思いますね。 澤田 JOBの場合は、やはりクライアントの要望を聞き入れたりするんですか? 近森 かなりそうですね。 WORKの場合は自分たちの世界でとにかくつくろうというのがあるんですけれども、やはりJOBの場合はどちらかというと感覚的にはデザイナーに近いというか。 まずどういう空間なのか、どういう人たちにアピールしたいのか、どういうテーマを持っているのかということを最初に問診するような形で伺って、それに一番適した形に作品を組み込むにはどうしたらいいかということを相談する、コラボレーションしながら構築していく形が多いと思います。
澤田 いろいろ突っ込みどころ満載なんですけれどもそろそろ終わりが見えていて、「光育(ひかりいく)」という今日のテーマにこじつけなければいけないわけですが、「育」という字がついているので、子供がいっぱい参加している近森さんのワークショップの話を少しお願いします。 近森 そもそも作品がインタラクティブ性を持っているということがあり、我々と他者との関係にいくつか段階があります。 僕らの中でこれは三段活用と呼んでいます。 まずは作品自体が観客参加型なもの、もう一つは観客と一緒に作品に関係したことをやってみるというワークショップ的なもの、さらに今回の僕らと澤田さんとの関係のようにコラボレーションして一緒に作品をつくっていくもの。 そういう形で一緒に何かをつくっていく、一緒に何かに関わっていくことが我々の場合すごく大きなテーマとしてあります。 ![]() これはルーセントアベニューでやったワークショップですが、実際に影絵はもちろん投影しているわけではなくてカッティングシートという、よく広告でガラスとか壁とかに文字なんかをつけたりするときに使うシートを貼っているんです。 今年のゴールデンウイークのころ、一般の方々、特にお子さんに参加していただいて自分でいろいろな動物の形を切って、実際にルーセントアベニュー床に貼ってもらうというワークショップをやりました。 我々の作品としては耐久性の問題とかいろいろあって床面に絵をつけることがなかなか難しかったのですが、このワークショップでは海のシーンに是非もっといろいろ絵をたして欲しいということで、イカとかカメとか、龍とかもう海の生物だか何だかよくわからないものも出てきたんですが、皆さんが自由に発想した動物がこの海のシーンに登場してくる、一緒につくり上げていくということをやりました。 他には、影絵というか光と遊ぶことを一つテーマにしたワークショップをよくやっています。 紙を切って関節をつけた影絵の人形みたいなものをつくってもらったり、いろいろな道具の影をトレースして、それを子供たちに渡してそこから発想してもらうということをやったりしています。 僕らの作品と関連するようなものを子供たちに配ってそこから発想して影の生き物みたいなものを空想でつくってもらうんです。 それに光を当てて影絵芝居みたいなことをしたりしています。 そして、そういうことをした後にそういうものを実際に僕らの作品の中に映像として取り込んでしまいます。 この作品の周りに出ている映像は本当に子供たちがつくった人形が動き出すんですけれども、子供たちの絵が僕らの作品に取り込まれていくという、そういうワークショップです。 澤田 それは同じワークショップの中で、子供たちは一連の結果としてこれを見られるわけですか? 近森 そうですね。その場で、スキャナーで取り込んでいくような形でやったりもします。 場合によっては自分たちで、この動物はどんな声で鳴くんだろうみたいなことで声を録音したりもしています。こういう形でやっていくと、ここに至るまでに自分の手で影絵遊びをしてみたりといった遊びを子供が始めます。 最近あまりそういう機会がなくなりましたが、僕なんかは結構子供のころお父さんが旅行から帰ってくるとスライドプロジェクターで旅行の写真を見せてもらったりしていたんですけれど、一番楽しみだったのはスライドを全部見終わった後、最後に光だけがスクリーンに映っていて、そこにばっとみんなで手を出して犬とか猫とか、キツネとか手影絵遊びをしていました。 光でもっと遊べるということを子供たちにわかってもらったらいいかなということでやっているワークショップです。 澤田 最近障子がないからですかね。 僕は障子でそういうことをよくやっていました。 穴をあけたら、また昼間も光が入って、おもしろかったりして。 先ほどのルーセントアベニューの床もそうだったんですけれども、子供たちみんなよくああいうシルエットをかけますよね。 やはり影絵の遊びをして、アウトラインをとらえるということをするんですか。 近森 実はルーセントアベニューでのワークショップはスペースと時間の問題でそういうことが全然できなくて、あれはいきなりだったんですよ。 だから確かによくできているというか、意外とシルエットにするとそれらしく見えるところもちょっとあるんですね。 シルエットになると、多分質感が均質になるせいで適当につくっていてもそれっぽく見えてくるのでしょうね。 普段はもろにその物の形になっている影が少なくて、意外とゆがんでいたりぼやけていたりしますよね。 日常の中でそういうものを補正して見るというのが、人間の中に備わっているのかなと思うんです。 こういう機会がもっとふえていったらいいのかなと、僕はすごく思っています。
澤田 そろそろ結びに入らなければいけないんですが、何か「光育(ひかりいく)」というのを、よくわからないんだけれども多分近森さんはしているなと思ったんですよね。 光と影の世界で何か知ることがあるじゃないですか。 物の動きとか、シルエットにして初めて見えてくる動きとかがあったりして。 それを直接子供とかにやらせると、ある意味ものすごく教育になる。 光の教育ではないかもしれないけれども、光を通じて何か別の教育をしているような感じがします。 近森 多分そういういろいろなバリエーションというか、いろいろな経験するということが大事だと思うんですよね。 澤田 そうですね、バリエーションとか経験することの幅なんでしょうね。 MARIOT CLUBから食育とかがすごくはやっているけれども光にもそういうものがあるべきだということで、今回のテーマ「光育(ひかりいく)」を考えることになったんですが、食育を改めて考えてみると、例えば中華料理は四川料理とか上海料理とかいろいろあって、全部食べ比べてみるといろいろ中華料理の味がもっと深く理解できるとか、多分そういうことですよね。 もっとこじつけてみると、小学校のころからやっている体育とかはそういうことかなと思ったのですが、一説によると、江戸時代は両手両足を同時に同じ方向に出して走っていたけれど西洋式の体育が来て交互に振って走るようになったとか、そういう体の動かし方のバリエーションというか、教わって初めて体の機能を知るみたいなことがあるじゃないですか。 例えばメディア・アートはそうだと思うんです。 映画だと、光だと思って見ないじゃないですか。 テレビも光なんだけど光と思って見ていなくて、そこに仮想の現実があるというか、光であることを通り越してそこに何か現実を見ているじゃないですか。 だけど、何か近森さんのアートはぎりぎり光でとまっている感じなんですね。 いわゆるちょっとレトロな表現だけれども、ものすごくはっとさせられるところがあるような気がします。 ![]() 「光育(ひかりいく)」ということを考えたときに、やはり体験するレンジというか幅が広いほうがいいと思うんですね。 ルーセントアベニューは今までの感覚だとあり得ない。地下道に色がついている道路は多分ないですよ。 だけどああいうのがあるから真っ赤な光の中にたたずんでみるとか、そういうことを体験することが多分大事なんでしょうね。何となくそう思うんですけれども。 近森 やはり先ほどの照度の話もあったように明るい空間もあれば暗い空間もあるし、スポットライトで照らされていたりとか、ちょっと木漏れ日のような場所があったりとか、そういういろいろな光のバリエーションが全部あそこの空間の中にぎゅっと凝縮されているということが、もしかしたら日常の中にいろいろな光の体験をしていただくためのいいきっかけになるのではないかと、僕の中では期待しています。 澤田 伊豆さん、1人にしてすみません。そんなことでいいですか。「光育」は光の体験の幅を広げるという。 伊豆 非常におもしろかったですね。(笑) 澤田 伊豆さんは「居酒屋は暗くないとだめだ」といつも言っているじゃないですか。 だけど最近明るい飲み屋もいっぱいはやっていて。そういう体験のレンジという意味では伊豆さんは一番年長なので、ここ10年、20年で大きく変わったような部分があるんじゃないかと思うんですね。 僕もこの仕事を始めて20年でだけど、激変しているわけですよ。 その辺どうですか? 伊豆 料理屋は料理がおいしく見えたほうがいいなと思います。 暗い店で料理がはっきり見えないとおいしくないなと思うんです。 一時期、照明を暗くして凝って、お店をつくっていたんですけれども、最近はまた全般的に明るいというか、健康的な明るさも欲しいなと思っています。 澤田 そうですね、伊豆さんと行くすし屋は大体明るいすし屋、ネタがよく見えますよね。 伊豆 最近、LEDとかそういったものが出てきてふんだんに使われていますけれどもルーセントアベニューはLEDではなくて、もう少し透明感が出るようなアナログな照明効果ですよね。 その辺が違うんじゃないかと思うんですよね。 澤田 ちょっと難しい話ですけれども光は波長を持ってスペクトルがありますよね。 LEDは同じ赤でもすごく狭い範囲の赤のある部分だけを出していたりするので、色としてはすごく純粋なピュアな赤なんですよ。 だけど非常に単色の中というのは、実は居づらい世界になってしまう。 ルーセントアベニューはそうじゃないですよね。 フィルターで要らない部分を削って、赤い辺りの波長が出てきている、赤の前後のあたりの光も実はまじっていて、ぎりぎり僕らの日常側にある色だと思っています。 だから色としてはちょっと薄いんです。デジカメで撮ると濃く写るんですよ。 ちょっとまた話がややこしくなってしまうけれども、記憶色という言葉があって、デジカメは記憶色でできているんですね。 僕も来るたびにこんなに薄かったかなと思うんです。 またフィルターが色抜けしていないかなと電話したくなるんですけれども、実は記憶の中で色が濃くなっていくんです。 もっと鮮やかに人間は覚えていくんですね。そういうことは知識としては知っていたんだけれども、そういうことだなと「光育」されてしまった。 そういう結びでいいですか(笑)。 |
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