| HOME>トークセッション>MARIOT EVENT VOL.23 NAGOYA P.1/2/3/4/5 |
澤田 いま近森さんの地下道の話を聞いてこのまま地下道の話に踏み込んでしまいたいところですけれども、ちょっと戻って全体の照明計画のお話をしたいと思います。 ルーセントタワーの外構部をやるに当たって最初にセキュリティーとコンフォータブルとアトラクティブという三つのゾーンを設定したんですね。 魅力づけしてくれと依頼されたんですよ。 言われなくても普通にやろうと思うんですけれども、特に念を押されたんですね。 そういう場合はやはり的を絞らないと大体うまくいかないので「ここはもう最低限セキュリティーの光だけにして、ここは多少それプラス居心地のよさ、魅力づけみたいなところはこういうところにフォーカスしてやりましょう」というゾーニングをしていったんです。 この時点でアート計画はなかったので、僕はアートもやらなければいけないのかと思って一生懸命いろいろなことを考えました。 ![]() こちらは、今のところあまり用事がなく人の少ない方向なんですよ。 だからここの魅力づけ、寂しい場所にならないようにすることが非常に重要だったんですね。 だからアート計画以前に僕がアーティスティックにやらなければいけないんだという気負いを持ってやったものです。 これはいわゆるレインボーです。 僕は最後まで照明デザイナーとしてはレインボーとかなぜか言いたくなかったんですよ。 もっと何かコンセプチュアルなことを言いたかったんですけれども、やはりこれが一番みんなから「きれいだ、おおっ」と言われるやつなんですね。 それで、レインボーというシーンもつくってしまいました。 次にアート計画。 外構の照明計画をやって、ビルのエントランスホールの照明計画もやっていったんですけれども、そこにアート計画がガッチャンコしてきたんです。 それで僕は、アートの照明計画のコンセプトを「点在するギャラリー」としました。簡単なことですけれども、オフィスの中に入っていきますので、あらかじめそこに計画したあるはずのロビーの機能的な照明とかそういうものをアートのゾーンだけ1回キャンセルしたのです。 そこは美術館クオリティーの照明にしましょうという、単純ですけれどもそれがコンセプトでした。 メインエントランス入ると壁がそのまま全部アートになってしまっていました。 そもそもここはあまり照らそうと思っていなかった壁だったんですけれども急にこれが主役に躍り出てきて、その周りのベースライトをキャンセルし、美術館クオリティーの照明器具で照らしました。 ここはエスカレータの縦穴になっていますけれども、ここは、壁の照明以外に何かベースライトというのはないんですね。 そんなふうにやっていきました。 ![]() この2作品は、いわゆるギャラリーといっても床がそのまま作品になってしまうとか天井が作品になってしまったというものです。 だからこれは積極的にここに照明をしたというよりも、照明が邪魔しないようにここをやめましょう、ここをやめましょうと、ここをこれぐらいにしましょうと照明をなくす方向でやっていくことが作業の大半でした。 多田さんの指輪のアートもそうですけれども、これは非常に自分で光る機能を持っていますし、ステンレスの鏡面ですからほとんど照らしても光らないような状況です。 だから、ピンポイントできらっとするところを狙っているような手法をとっています。五十嵐さんのこの作品は、外構のシンボルと位置づけられていて、これは少し演出的な明かりになっています。 ![]() このスライドは、メインエントランスのところから3作品見えています。 ジャハンギールの作品の手前に大きな光壁があるんです。 この光壁も、すごく心配しながらやりました。 自分はこの光壁が主役だと思ってずっとやってきていたんですけれども、アート作品が登場したことによって作品がかすまないようにしなければいけないということで、明るさのバランスがうまくいくように非常に苦労しましたアート作品は入り口から見てみると、正面にいて非常にいいところにいるんですね。 受付カウンターの背後が光壁ですけれども、やはりこうやって見るとこの空間の光壁はわき役でアート作品が主役なんだなという感じです。 主役の座をアートにちゃんと明け渡している感じがしている。 それが先ほど伊豆さんがおっしゃっていたような、生きている感じに見えるんだろうなと思います。 ![]() これは五十嵐さんの作品で、6分の1の模型で実験をしました。 ちょうど傘立てぐらいの大きさです。 ちょっと話がそれますけれども、この模型は鉄板にレーザーで、模様をくりぬいたものを曲げて筒にしてある、本物と同じようなつくり方をしています。 何もそこまでと思ったんですが、よく考えたらこういう精度の高い模型を模型材料でできないなと思いました。 非常に模型がリアルだとまじめに実験する気になるというか、本当に現物で使う予定の照明器材を用いて実験しました。 その後五十嵐さんと相談して、このシンボルアートはやはり都会の中で自然にたたずんでいる感じがいいということになって、夜少しブルーに染まるんですが大体冬は暖かい色、夏は白い色という普通にだれでも受け入れやすい光になります。 東京タワーのライトアップもそうですね。 これがだれでも受け入れられると言ってしまうと地下道がそうじゃないみたいに聞こえてしまいますが、そうじゃないです。
澤田 だけど、ルーセントアべニューは名古屋市の市道です。 ルーセントタワーの私道ではないのです。 最初に近森さんと話をしていて、これは絶対光で色を表現していかなければいけないと思ったんですが、果たしてそんなのが公共の道路に通じるのか、実現するのかとも思いながら進めていきました。 いろいろ考えて色の効果を最大にすることもにらんで、各色の間にバッファーゾーンと名づけた白い明かりをわざと入れました。 白い明かりで感覚をリフレッシュするというか、キャンセルして次の色に臨む。 よりビビッドに感じさせることをねらっています。 ![]() 本当に効果が出るかということ自体が心配だったので、人間工学でこの辺に詳しい先生にも相談しました。 色だけの世界に入ると感覚的に狂ってしまい、ねらった通りの色に見えるのかという心配があったんですけれども、その先生から非常にありがたい話を頂きました。 人の感覚は視覚だけではなくてほぼすべての感覚が時間に対して2分半で慣れるらしいんですね。 確かに色づいた真っ赤な部屋にいたとしてもずっといるとその赤みが薄れてくる、赤をあまり感じなくなってくる。人間がそれを補正してしまうらしいんです。 これは一つのゾーンが30メートル弱ですから、どんなにゆっくり歩いても2分もかかりません。 だから普通に歩けば常にフレッシュな感覚で様々な色を体験できるだろう、そしてこういうバッファーゾーンは要らないかなと思ったんですけれども、色と色がまじり合って中途半端な色が出るのを逆に嫌って、試してみたらそのバッファーゾーンが非常にいい感じでした。 次にいわゆる照度計算をしたんです。 それぞれのゾーンが何ルクスかということです。 当然赤い色だろうが青い色だろうが、光ですので照度は出るんですが、名古屋市の理解、賛同を得ないとできないわけですから、非常に僕は理論武装を図って全部照度的に満たしている、地下通路のほとんどのゾーンは地下通路の照度設定に全部入っていますと説明しました。 だけど一部、どうしても赤と青だけが外れてしまうんですよね。 それで「横を見てください、ほら、一般的な駅前とかの明るさはあるんですよ」と理論武装をしたのですが、何も言われませんでした。名古屋市は非常に理解がありました。 人は光の色だけでできた空間、色だけの空間に行くとやはり気持ち悪くなるんじゃないかと言います。 しかし、東京ディズニーシーのあるアトラクションはカラーライティングだけでできているのです。 倒れている子供やお母さんはいないと必死に材料集めとかをしていたんですけれども、心配したようなことはありませんでした。 具体的な照明設計上の話になりますけれども、先ほど近森さんは照明器具、明かりですら積極的にかかわった絵物語であるとおっしゃってくれていたんですが、僕のほうはなるべく照明器具みたいなものが姿を出さないほうがいいと思ってやっていました。 290メートルにわたってほぼすべての壁の色をつくっているのは、いわゆるウォールウォッシャーといわれるダウンライトで、これにカラーフィルターを入れています。そして、通路のほぼ真ん中ぐらいで明かりをとっているのがピンホールダウンライトです。 穴自体は計5センチぐらいですが、中に入っているランプは150ワットの放電灯が入っていて結構小さい穴からハイパワーの光を出すものです。 フィルターをかけているのでその150ワットすべてのパワーは出てこないですけれども、なるべくミニマムな器具でやろうとしました。 ピンホールとウォールウォッシャーの他には、通称照明器具業界ではピンスポといわれていますプロジェクター型スポットライトを使っています。 スポットライトの中に、いろいろな種板が入れられ、くりぬいた形の光が出せる。広告とかはそれで照らしていこうということですが、なるべく隠れてほしい、しかし、隠すといろいろメンテナンスとかができなくなるので、点検口の中に入れてしまいました。 実は照明器具がいて点検にすごく邪魔なんですけれども、点検口に穴をあけてもらいそのまま使わせていただきました。 ![]() 同じプロジェクター型スポットライトでも広告を照らしているものは割と姿を出しています。 例えばルーセントタワーに近いあたりにあるルーセントタワーの絵ですが、夕日に映されているんですけれども、ここから照らしているんだなというのがなるべく分からないようにしたかったんで、ちょっと長細い穴がありますがこの中から、本当の夕日に見えるように斜めに当てました。 こういうプロジェクター型のスポットライトはそのまま何もしないと丸い明かりなんですね。 だけど、それを斜めに照らすと縦に伸びてしまいます。 太陽だから伸びてはいかんといって計算し尽くしたんですが、少しつぶれてしまいました。 言いわけとしては地平線に沈みかけた夕日は大体つぶれて見えるので、これは計算どおりだということになっていますので、ここだけの話にして下さい。 また、いわゆる「ゴボ」という種板を同じくプロジェクター型スポットライトの中に入れて、それをさらに動かしたりして、ブルーの深海ゾーンの波紋が床に落ちていたり、雨だれのようについたり消えたりしていたり、木漏れ日が落ちていたり、ということもしています。 動かしてみたりつけ消ししてみたり、種板を入れてみたりということで、光でグラフィックを少し補強するようなことが、近森さんのアイデアの中にあったわけですがこういう形でそれを実現したつもりです。 最初に近森さんと始めたことは色選びです。 ある程度の明るさを確保しつつ色を出すというあたりの微妙なところは、フィルターの色だけを見ていてもだめなんですね。 これは光源との相性があって色が全然変わってしまうので、色選びで四苦八苦しました。近森 やはり紙の上で見ている色と、照明・フィルターを通して空間に広がる色の感覚というのは違っていて、ある意味空間で見ないと本当にわからないんですよね。 澤田 そうですね。光の色だけではなくて光全般そうなんですけれど。 近森さんも光を使ったアートが多いから、やはり現場、現物でしょう。 現場、現物で見ないと予想がつかないことが多いですね。 近森 そうですね。なかなか色番で指定してくれと言われてもわからなかったです。 澤田 サンプルを渡して決めてくれと簡単に済まそうかなと思ったんですけれども、そうはいかない。これは現場でモックアップされて、仕上げ素材との関係を見ているんですね。これは全部種類が違う床を敷いて試しているところですけれども、一生懸命みんな吟味していました。 近森 例えば、マットな壁なのか、艶ありの壁なのかで断然照明の効果も変わってくるし空間の広がり方も変わってきます。 実際に見ていただくとわかりますけれども、空のシーンが実はもろ艶ありの壁になっているんですが、ほかのシーンはあまりつやがないマットな壁になっています。 実は床材も全部のシーンで別々な素材を使っていて、砂のように見えるところだとか草原のように見えるところだとか、全部テクスチャーも違うものを使っています。それによって大分照明の見え方も変わってきますね。 澤田 そうですね。僕は照明のことばかりふだん寝ても起きても気にしているものですから、ここで気がついたのはむしろ光で目に見えるテクスチャーではなくて、ゾーンごとに足の感じが変わることです。 特にゴム底の靴を履いていると、足で踏む床の感じが全然違っていいなと思ったんですね。 壁はあまりさわってほしくないからさわらないことにしていますけれども。しかし、汚れに関しては、光沢度とか質感を非常に気にしてやっているんですけれども、実は色の光を使うと汚れはあまり目立たないですよね。 この仕事を通じて僕は近森さんの大ファンになってしまって、近森さんがいろいろ手がけられている作品、メディア・アートと言っていいのかな、ほとんど光だね。 光がないと成り立たないというか、そういうアートなんです。 ルーセントアベニューは結構現実的な作品ですが、この後他の作品をちょっと見せてください。 |