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荒井:ここからは松山さんのプロジェクトからちょっと外れるんですけど、私がいろいろとお世話になっている竹中工務店、九州支店の設計の笹栗氏がプロデュースした物件をご紹介します。 ![]() PET、ガンの早期発見をする医療機関です。 どういう施設かというとガン細胞っていうのが非常にブドウ糖を好むので、ブドウ糖に似た成分を体内に入れると今までCTとかMRとかで発見できなかった、かなり小さい初期のガン細胞を発見できるという施設。 これはアメリカではよくある施設というようにお聞きしていますけれども、九州ではまだ珍しいのではないでしょうか。 これが中庭から見た風景です。 光が非常に取り入れられるような設計になっていて、ここが私的には一番きれいだなと思う空間です。 ここの院長先生はこういう家具にもすごくこだわられている方で、建築もしかり、家具関係もしかり、人に触れるものに関してはかなり考えてらっしゃる方だと思います。 ![]() この建物の中にはもう一つ思いがございまして、これは何か皆さんわかりますでしょうか...理事長先生の発案で「2001年宇宙の旅」のジリスなんです。 底辺が1対4対9という、各辺の自乗倍でつくられている絶対ディテールといいましょうか、人間を考える造形的な象徴という、寸法サイズです。 映画のストーリーは、人間の祖先の時代、猿人の時代にそれが突然地球に降ってきて、それに触れたサルが道具を持つようになったというものでした。 話が前後しますが、それを院長先生が九州の中西秀明という若手彫刻家の方といろいろ構想を練って、私と光的なコラボレーションを一緒にさせていただいたというのがこの作品です。 ここで何が述べたかったのかというと、人間の付加価値とか、施設柄そうだと思うんですけれど、万物の象徴とか、地球環境に至るまで、もう少しみんな物事をよく考えていきましょうというような思いがあると院長先生はおっしゃっていました。実はこれは水の上に建っているんです。 |
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![]() 荒井:もう1件は、皆さんよくご存じかと思いますけど、鳥栖と久留米の間にございますカーサ・デラ・ヴィータです。 施設的には疾病予防、健康増進施設といいましょうか、生活習慣病に対応する診察所、医師、運動指導士によるカウンセリングが受けられます。 設計事務所は梓設計九州支店。 今独立された岩根英徳紀建築設計事務所の岩根さんという方が担当でした。 公私ともにいろいろお世話になっている方です。 入り口のファサードの部分です。 黒が基調なんですけれど、黒の天井を照らしたいというすごく厳しい、難しい話をいただいて、光源設定をいろいろ駆使して、ライティングしました。黒体を照らすというのは非常に難しいんですけれども、ナトリウムを使ったりメタハラを使ったり混色にしたり、ここはいろいろ考えさせられるシーンでした。 これが2階部分から見た直線上のフットライトです。 3号線がこの左側にあるんですけれど、下から見上げたときも光源的輝度を見せない工夫をしました。 先ほどありましたように、もともと病院施設、診療所も備えているんですけども、空間的な広がりとか光のやわらかさというのは別にして、知らず知らずに我々っていうのは輝度を受けている。太陽もそうです、身近なコンピュータの画面もそうなんですけども、人間やはり輝度を受け続けることによって体内時計に関してもいろいろ狂いが生じてくる。こちらの施設に関しては、患者に対してやわらかな明かりといいましょうか、輝度をなるべく感じさせない工夫をしました。 人間の20歳前後の体で450カンデラ以上の明かりを3時間以上浴びますと、15%の仕事量のロスになる、能力低下につながるっていうのがありまして、それは健全な肉体でもそうですから、病を持たれる方は輝度を極力消してやる必要性があるというコンセプトで、照明計画をさせていただきました。 ![]() これは夜になった写真です。 左側の足元の明かりにハレーションがあるんですけど、実際はここまでのハレーションはないです。手すりと上の、ブリーズラインを、本当はこれだけのブリーズラインの量は要らなかったみたいなんですけど、話に聞きますとダミーで手すりと上のブリーズラインを合わせたというふうな建築家の苦労が見てとれます。 プールに入りながら生活習慣病に対する診断、医療を受けていただくというところもあります。 こちらは先ほど説明しました分娩室にも比例するような感じのところなんですけど、基本設計のレベルではこういう形態ではありませんでした。 あえて私のほうから、光を目線で見せることによってリラックスしていただけると提案させていただきました。ここはどういう施設かといいますと、部屋名は音楽治療室というような名称で、音楽によってLEDの光が揺れる、変わるというようなものを感じていただく。 なおかつもう一つそこにスパイスとして香りがございまして、光と音と香りでリラックスしていただけるという空間です。 壁面の色は一瞬に変わるのではないんですけど、知らず知らずのままであったりとか、ある程度音楽に合わせて動いたりとか、そういうふうな形の空間でございます。 |
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松山:今日、伝えたかったことは、僕も10年やってきまして、振り返ることもなかったんですね。 ただ、自分が地域でやっていますから、当然自分の能力は特別な能力が与えられたわけでもなく、そこで必死でもがいて日々建築をつくっています。地域でやっているというある種限界も感じながらやっています。 ただその中でも、住宅でかいま見られたか伝わったかわかりませんが、ちょっとした光を少し入れてあげることで町並みの風景って随分変わっていくんです。 それはとっても大事だと思っています。 少ししか変わらないから全体は変わらないよと言ってしまえばそれまでなんですけども、きっと何かを通り行く人たちが感じてくれて、きっとその町並みも何か変わっていくんじゃないかっていうように信じてやっています。 何かを得るためには当然何かを捨てなければならないと思うんですが、建築の近代化の過程において、私たちは多くの懐かしいものを多分失ってきたように思います。 それは先ほどあったいろんな島の風景もそうなんですが、島もどんどん変わっていっています。 ただ、それなりに失ってしまった懐かしいものへの思いはどんどん僕は増していくんですが、何か新しいものに対して心が動かなくなっているという状態が僕には今あります。 ![]() 建築も今は構造家とかなりコラボレーションして、全然違うシステムで生まれたりとかということも一方ではあるのですが、むしろ僕は今どんどん失ってきたものを取り戻していきたいなというように思っています。 そういうことを実はスライドを通して伝えて、「光育(ひかりいく)」という最後のテーマにつなげたかったというところです。 荒井:やはり伝えたかったことっていうのは、冒頭にもありましたように、光というものを通してどう人間が豊かに生きるか。 それはやっぱり建築の力をかりないとできないこともありますが、そうでないシーンというのも結構あると思うんです。 「光育(ひかりいく)」というふうなものが、作業効率を上げるためだけの光ではあまりにも寂しいなと。やはりそこで一緒に酒を飲んだり、こういうふうに仕事の会話ができたり、遊びの会話ができたり、趣味の話、いろんな意味で相談事ができるような空間、何となくほっとする空間というのを私はつくり続けたいなと思います。 決して光というのは多ければ多いほどいいというものではなくて、たった一つのろうそくでも本当に心に残っていれば、それはそれで非常に語り継いでいくといいましょうか。 それを根本的に自分のアイデンティティーといいましょうか。 「光育(ひかりいく)」っていうのは結局どちらかというと心を育てる、豊かにするというものがものすごく強くあってほしいなという気持ちでいっぱいです。 |
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