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Mariotトークセッション


 【原風景からプロジェクトへ】

松山:次ぎに私の方からプロジェクトをご紹介します。
さっきの原風景から「光育
(ひかりいく)」にどうつなげていくかっていうのは非常に難しいんですが、今日は光がテーマですが、その光というものが、自分が10年やってきた建築を振り返ったときに、意外とさっきの石垣島の最後の1シーンと近いにおいのものが点在しているなとすごくわかりました。それで原風景から攻めてみました。

これは僕の最初の作品で、先輩から依頼を受けた住宅です。
光のシーンというのは、アプローチをしていく人たちに中の様子が見えるというものでした。生活のシーンを一部見せる。ここにご近所の人たちが来たときにも、ここから会話できるようなスペースというものをつくりました。
この当時は、僕もあんまり意識してつくってなかったと思うのですが、写真を後で見ると、多分当時、先ほどの最後のシーンにあったような通り行く人たちに開放されているシーンをつくりたかったのではないかと思いました。

これは2作目の作品です。
姪浜でつくった産婦人クリニックですけれども、僕が最初にこの土地を見たときに町並みが非常に暗い印象だったんです。
いま姪浜っていうと、非常に開けていてすごく明るいイメージに町がどんどん変わっていっていますけれども、当時非常に暗いところでした。
この土地に何か光の優しいシーンをつくれないかというのがまずテーマとしてありました。産婦人科って通常あんまり開かないんですね。
開くのはタブーというか、開かれた産婦人科はありません。
なぜかというと、誕生という喜びもあるんですが、一方では悲しみもあるわけです。そういういろんな感情が混在している非常にシビアな建物なんですが、そこに何か僕は違う光のシーンをつくりたかったのです。

これは福岡市の比較的都市の中の住宅になりますが、小笹というところでつくった住宅です。
はじめ、敷地を見に行ったときは非常に高い壁が建っていまして、樹木が手入れもされてない状況で、とても美しい状況じゃなかったんです。
それでクライアントを説得しまして、できるだけ地域に開放しようという形でつくりました。
階段がちょうど中央にありまして、昼間はステンレスのメッシュでフィルターがかかってるんですが、夜になると中がちょっと透けて見えるというふうになっています。

これは天勺(てんじゃく)という、川端商店街の中にあるお鮨屋さんです。
中州の川のほうから見るとこういうフレームで切り取られて、ちょうど食事をしているスペースが見られるようになっています。
8席のカウンターを川沿いに設けました。
通常、お寿司さんというのは手前にカウンターを設けるというのがルールらしいんですが、僕らは違うだろうって大将を説得しまして、奥のほうに持ってきました。
非常に気持ちいいカウンタースペースになっています。

これは最近できた住宅です。
これも夜のシーンですがこういう生活のシーンが外部に対して見えている。こういうシーンは奄美の住宅に似ている。

こうやってよく考えてみると僕の建築は何かしら育った環境が影響しているのではないかと思いました。では次に、荒井さんから僕とコラボレーションしているプロジェクトを2点紹介してもらいます。

 【ホテルオークラ福岡・チャペル】

荒井:ホテルオークラ福岡・チャペルというのは、実は松山さんからオーナーにコンペすると内々にお声がけがありました。
福岡の設計事務所の方も含めて、5社コンペでした。

松山さんから
「僕の考えているニュアンスと、荒井さんが思っている結婚式という概念を根本的に崩そうや」という話をいただいて、結婚式を崩すっていうのは非常にタブーな発想なんですけど、そうじゃなくて考え方をちょっと変えてみようかみたいな、そういうアドリブ的なのりでコンペに参加させていただいた作品です。

これは改修計画だったんですが、ご存知のようにオークラさんは建てられてから6〜7年経つのですが、やはりチャペルというのはホテルの顔であったり、客引きの一つのコンテンツであったりしますけど、根本的に変えてみたいというふうな考え方があったんでしょうね。
ブルーの明かりは、結婚式場としてはあまり受けないような感じが現状です。今風ではないというか。
入り口は、両サイドに木調でH鋼的な木のルーバーがあり、その中に、スリット照明といいましょうか、調光用シームレスを入れました。片方44本、片方44本で、実はトータル88本ありまして、その辺がちょっとしたみそだったんです。

もう一つ今回ルーバー的なものも含めて、やはり光的にもどうあるべきかということを考えました。
まず天空的な天井から降り注ぐ光を、新郎・新婦を導くというようなものを是非つくってみたかった。つまり、途中まで親族と新婦が歩いてきて、ここで新郎に花嫁を引き渡し、祭壇に向かって歩いていくのですが、その時は開放的な明かりに、両サイドのルーバーの光も100%というシーンをつくりました。

2人が歩き出す前は、やはりお父さん、お母さんの愛によって育てられて今回2人は一緒になるというものを光でちょっと演出したいなというふうに考えました。
しかし、これは手動でやるにはかなり難がある。
結婚式ですから初めての方が多いので、歩くスピード、ご経験されている方はよくわかると思いますけど、なかなか新郎と新婦、新婦とお父様の足が合わない。
リハーサルも1回ぐらいしかできないんで、手動でやるにはなかなかうまくいかないよとオーナーさんから言われたんです。
それでどうしようかなと思っていて、二つ考え方がありました。
完全オートメーション化にするか、もう一つはセンサーをつけるか。
いわゆるここを切れば前の光がつくというふうな発想を掲げました。
やはりその中でもコスト的にも現実的にも後者のほう、センサーを使う方を選びました。

これが完成したときの写真です。
真ん中の真っ白い部分がバージンロードで、両サイドに花置きがあります。
実はこの一番下部、ステンレスでつくられている部分にセンサーが入っているのです。
赤外線なので人間の目には見えません。
当たれば見えますけれど、その中間部分は見えないというセンサーを使っています。
これであれば、新郎・新婦及びお父様のタイムラグがあっても、光は落ちてくるだろうという仮定の上でつくっております。

光源的には、上の部分にハロゲンの750ワットのスポットライトを約2.2メートル間隔でつけております。
新婦とお父様が入場するときの光のシーンは、両サイドを20%まで絞り込んで、真ん中の部分と両サイドの部分が目立つ、少しアンダーな雰囲気になっております。

次にこのような天空からの明かり。
実は、これは少しスモークをたかせてもらってるんです。そうでないと、なかなかこういう光の帯は出ません。


松山:ホテルオークラのコンペは、昔の教会のすごく暗くてちょっと宗教的な教会を提案しました。

荒井:そうですね。

松山:かなり批判を受けましたけども、こういう思い切ったことがいいということで、実際は、ホテル側の提案にかなり歩み寄ったんですが、わかりやすいものが多分よかったかなと思いました。
88本のルーバーという思いを僕らは伝えたんです。新郎の家族の記憶だとか歩んできた道のり、新婦の歩んできた道のり、それが天空で重なって新しい光が落ちてくるっていうような物語を話したところ、そこに非常に好感を持たれまして、この案が採用されたという形です。


 【南ヶ丘クリニック】

松山:佐賀県の伊万里の南ヶ丘クリニックをご紹介します。
これも実はコンペで、かなりのローコストでできています。
とにかくコストをいかにクリアするかということで、病院の機能的には非常にコンパクトな中廊下型を採用しまして、まず無駄のない形というものをつくりました。

何がしたかったかといいますと、僕も幾つか産婦人科というものをつくらせていただいているんですが、誕生という喜びだとか感動というものを建築によって表現できないかと荒井さんのほうに問いかけまして、じゃあ圧倒的に光が支配する建築があってもおもしろいんじゃないっていうことになり、これに院長先生も共鳴していただきました。

昼間はこのようにガラスファサードで非常に無表情というか、むしろちょっと怖いぐらいのファサードなのです。が、夜になると少しずつ光で表情が出てくるというようなコントロールをしています。


荒井:この、南ヶ丘クリニックというのは、初めて松山さんからオファーをいただいた作品です。
もともと白のファサードの部分が何だったかというと、洗濯物干し場だったみたいなのです。
それって結構日本でよくあることなんですけれど、リゾートホテルに行ってもバルコニーに洗濯物を干しちゃうっていう民族で、全然美観を気にしないというのはちょっとセンス的によくないな、どうにかこれを光の面にしたいと思いまして、当然、光公害――この裏がちょうど湖というかため池になっていまして、害虫の発生をどのように抑えようかということから、フィルターに特殊な効果をし、蛍光灯の紫外線をある程度カットをすることによって、害虫を呼ばないというような工作もさせてもらっています。

これが大体夕方6時から7時。
奥さんが入院されていて、旦那様が毎日お見舞いに来るときに、白い色でお迎えします。
そしてタイムラグがありまして、スパンと変わるんじゃなくて、30分ぐらいをかけて色温度が変わっていきます。
最初に見ていただいたのが大体5500K、昼白の色温度。これが2800K、電球色。この辺の明かりになりますと、病院がクローズになります、今日は終わりますという、さよならの色です。
色温度的には淡色系になって、だんだん消えていくという形で考えられています。

見ていただくとわかるんですけれど、やはり松山さんはさすがに奄美ということで水の使い方が非常に、上手だと思います。
水に映る景色とか、その景色が光で反射されて自然な風で揺らぐというのは、やはり心が落ち着くなと思います。
このときに松山さんから何で水中照明を入れないのかという話がありまして、それは私の中ではまずあり得ない話なので、単刀直入に却下させていただきました。生意気だなと思ったと思いますけど、すみません。

今までの詳細は大体ファサードとか、外観とかの光でしたが、ここでは産婦人科の分娩室の明かり、子供を産む明かりに取り組みました。
分娩室で子供を産むときに、光環境によって陣痛とか生まれたときの喜びをどうバックアップするか...光っていうのは皆さんご存じでしょうか、ソフロロジーという1960年代にフランスで提案されたラマーズ法の次に来ているものなんですけれど、それの権威である、唐津の田邊クリニックの院長先生と一緒につくり上げていった光のシーンです。
いわゆるこれはソフロロジーでの光のシーンというふうに思ってもらって結構です。

まず入室のシーンというものがあります。これは暖色系。
光的にはなごみとか、コミュニケーションをするための明かり。
建築的にもお部屋からこちらに入られたときの光的な違和感、当然個室は電球系の明かりがついていますので、いきなりここで色温度を変えることによって不信感を持たせないという考慮もされております。

次のシーンは、清潔感のある青色。
これは陣痛のスパンがかなり短くなって、もう生まれるかなというときです。
かなり母体もきつくなるんですけれど、ブルーというのは副交感神経を刺激する明かりでありまして、やっぱり落ち着きとか静寂とか、看護婦さんとのコミュニケーションを促進できるようなブルーの明かりです。

次のグリーンはまさしく生まれる寸前。
疲れたときは緑を見ろということもあるんですが、生まれる寸前というのは瞳孔が開きっ放しの状態になりますので、光から入ってくる刺激、目の疲れとか神経の疲れというのを極力抑えるためにグリーンの明かりにしました。

次はピンクです。
生まれた瞬間にピンクの明かりになるんですけれど、これは生まれてくれてありがとうという感謝をあらわす色、充実感を与えるピンクの配色というように考えております。

この辺が一般的な分娩室の光の流れです。