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Mariotトークセッション


武石:次は鈴木さんお願い致します。

鈴木:まず僕はB1階と7階、8階担当で、1階から6階までは他の者がやっていました。
全部だいたい見ましたが、1階から3階、4階ぐらいまでは何の問題もない感じがしましたが、7、8階になると、どうも若林さんの力が尽きたのか、これはちょっと売れないなというか、この店を作ってしまったらもうとんでもないことになるな、というようなフロア構成でした。

僕は、やっぱり一番大事なのは骨格だと考えます。
そうするとこの建物の場合にはパサージュが1本しかないんですね。
その7、8階もパサージュを作ってしまおうということで、一つの骨格ができました。
建築家と仕事をしたのは本当に初めてなのにこういう形で組むということは、なかなかめずらしいのではないかと思います。
だいたい建築家の方って頑固だから、言うことを聞かないじゃないですか
(笑)
文句を何も言わず、図面を直してくれたりして、「偉いぞ」という感じでした。
ここはエレベータがいくつかありますが、1基増やしてもらっています。
この案を出した時には三越さんに驚かれて、「今からエレベータを増やすのか」と大騒ぎになりました。


武石:ダクトスペースを全部見直したのですよね。

鈴木:そうですね。

武石:とにかくここに1個スペースを作る。
ダクトスペースになっていた所をよけて、エレベータシャフトにしたのですね。


鈴木:そうですね。僕は、実はあと3基ぐらい増やしたかったのです。
それは全然話に乗ってもらえなくて...
とにかく1基増やして、7、8階への直通を作ってもらった。そういうところがあって、たぶん相当成功した感じだと思います。あまり強い説得をしなくてもだいたい分かってくれたというのが、ほんとに有難かったと思います。

骨格はストレートなパサージュというところです。
パサージュの上にまたパサージュということで7階、8階を通して作ってしまおう。簡単にいうと上が西洋で、下が東洋です。
それから気持ちのいい吹き抜け。
ここに尾川さんが、先ほど話のあったトップライトがあります。
光があるとやっぱり気持ちがいいのです。それは必要だったので全然反対しませんでした。

7階は気持ちが良く、下は東洋の雑踏、活気というものを表わしたらいいのではないかと、MDにまでそれを持っていってもらいたかったのですが、MDはそのようになっていませんで、先ほども7、8階にちょっと顔を出したら、担当の方とまたその話でバトルをしてしまいました(笑)
これは7階のビューですね。
真ん中に巨大な植木鉢があります。
上から見た時にも、それから下からでも、一つのグリーンが共通して空間の中に存在するというところです。
いろいろな意味で回遊性、ランドマーク性を付けていこうという案です。
これはそのトップライトのある所ですね。
ちょうどこの上からトップライトが入ってきます。
下は本当に外の空間なので、外光に勝るものはありません。
本来なら通路や店舗の部分にもうちょっとトップライトが欲しかったのですが、そこまで建築をいじるのはあまりできない状態だったので、その辺は遠慮しておきました。

これも吹き抜けです。
ネット値といって営業面積をどんどん増やすようにと、普通は吹き抜けをなるべく取らないようにするものなのですが、今回の計画の場合は本当にめずらしく、極端にバックヤードや共通部分を減らしながら、吹き抜けを取れ、取れ、取れって言って
(笑)どこに吹き抜けを取ろう、というので苦労した物件ですよね。

武石:そうですよね。

鈴木:予定では、7、8階のセンターの吹き抜けは、あと90cmぐらい幅が短い予定でした。そうすると程良く、向こうの店舗に手が届くイメージになり、このパサージュの長さも非常にシャープに見えますが、吹き抜けを取らなければいけないので、70cm増えてしまいました。

武石:これは先ほどの話があった通り、基本設計で床の面積が決まっていて、8階までずっと抜けていたので、吹き抜けを逆に小さくできなかったというわけです。
ただ、商業のデザインとしてそうあるべきだということと、外側からの建築の見え掛りや、建築としての機能を取り合わせながら、本当にぎりぎりのところまで吹き抜けの寸法なども調整していただきました。


若林:あまり笑えない話がありましてね、吹き抜けの床が少し大きくなったおかげで現場には床をささえていない柱が残っていたりしてこともあって...(笑)
「この柱は何だ」と現場で大騒ぎになったという、そんな話もありました。


鈴木:計画の段階では、庭的な空間をたくさん入れていきました。
空間の中では、インテリアの要素、例えば壁とかいろいろな扉とか、そういうものの存在が強くて、どうしても緑が負けてしまう。そういったことで、ガーデンデザイナーの方と一緒にコラボレーションしてやっていくことを大切にしました。

これは東洋の部分、その雑踏を感じるような所を表現して、スタディしていった絵です。
スケッチというのは、設計図と違って演出の匂いやどういうふうにしたいか、という気持ちを全部描き留めることができるのです。
僕は他にもコミュニケーション系とかエンターテインメント系の仕事もたくさんやっていますが、今回の仕事はインテリア的な仕事が多いので、相当演出的な部分、床は柔らかいのがいいとか書いておくだけで、あとでどんどんセレクトが増えていく。そういう記録のためにスケッチというのは、いつも描いています。

B1階は白のタイルを選んだくらいで実は出来上がってしまいました(笑)
もちろんある程度、図面は描きましたけど、タイルを選んだだけでできてしまったわけです。
デザイナーは、あまり仕事をしないほうがいい空間ができるかな、という感じはしています。いま思えば、新しい試みだったなと改めて思います。
このB1階はシティーコンビニということで、担当のディレクターの三越さんやスタッフたちが、いろいろなMDを全国からかき集めてきたらしいです。

これは1階です。
大もめにいろいろもめて、演出をちょっとやりました。
1階はあれだけのコンコースなので、何をやるかと様々なアイデアが出てきました。
若林さんチームと三越さんチームと、それからうちのスタッフチームで紛糾していたのです。
見かねて、しょうがないから僕が「ほらベンチが動いたらいいじゃん」と言って、巨大で、葉っぱ等が生えているベンチを動かしたらどうかと提案しました。


武石:ベンチが動くんですね。(笑)

鈴木:動くんですよ。ロボットなんです。
この辺に小さくあるのは水飲み場で、子どもがここで水を飲むような、そういうミネラルウォーターのロボットちゃん。これも動いています。
このアイデアを出したら紛糾が一気にまとまって、まともなものになりました。
(笑)

武石:この提案を出したことで、「あ、これはまずい。早くまとめないとこっちの方向もありうるぞ」ということになってしまったんですね。(笑)

若林:唯一、断った案ですね...

武石:...という議論に挟まれて、光があまり満ちすぎているのは、少し嫌だなということで照明はさらっと行こうとしました。
人に対しては少し余裕があって、その余裕があるから買い物ができたり、過ごしたりすることが良いのではないかということです。
この時のライティングのコンセプトは、ホスピタリティということを考えました。よくある話ですけど、やろうと思うとなかなか難しいので、こういうようなことを考えて描きました。

これは本当にまだ始めの頃ですが、例えば、大津通りに光のゲートを作ったらどうかとか、いろいろなプレゼンテーションをしていた頃のものです。
LACHICは7、8階は飲食階ですから、これは時間帯が夜になるとお客様を上げなければいけません。メインの物販階は営業を閉めているけれども、7、8階に上がるのに楽しい気分をそのまま持っていけたらいいな、気分が切れないで行けたほうがいいな、というプレゼンもしました。

これも一つのプレゼンテーションの紹介ですが、LACHICのベース照明は、実は普通の円形のダウンライトではなくて、特に1、2階がそうですけれど、矩形配光(横に長い配光)のダウンライトが付いていまして、店先だけがすっと明るい様になっています。
そうすると状況としては、小股が切れ上がったように見えるというか、きゅっと締まったように見えるということをやりました。
つまり、全体の光を採るのではなくて、要所要所で光を採りました。
時間によってパサージュの光が変わっていくということも考えました。
途中でいろいろなことがありまして、今はこれもこの通りにはなっていないです。でも7、8階はそうなっていますね。

7、8階には、トップライトが一部空いたので非常にまたこれがはっきりと変わって気持ちがいいなと。
あれだけ長く続いている光天井の中の一部だけが、トップライトというのをやったことがなかったので、どうかなと思ったのですけど、やっぱり人というのはああいうアンバランスなことって結構、好きですよね。
何か凄くフィットしますね。


若林:先ほどのトップライトの話に戻るとね、6階から7階に行く時に、エスカレータに乗ると正面にちょうどトップライトが見えますよね。

武石:そうですね。

若林:実は、そういう構成を僕は現場ができあがるまで全然気が付いていませんでした。
あのエスカレータではじめて昇った時に、「恵千代さん凄いわ」と思いました。


武石:次、これはですね、鈴木さんのスケッチです。
これで照明器具を作るのですから、まあ、作るのは僕じゃなく、遠藤照明さんが作ったのですけど...お疲れさまでした。大変なのです。


これはトップライトの20分の1ぐらいの模型です。
やはりトップライトですから、メンテナンスだとかいろいろなことがあります。しかもあのトップライトの一番薄い所は、被膜から躯体までが10cmぐらいしかない。そこの中に光が入っていかなければいけないので、頑張りました。

これは色温度などをチェックしている実験風景です。
「やっぱり上の2枚が暗いのが気になるな、どうにかならないのか」と言われて、顔は笑っていましたが、なかなか難物だった時期のものですね。
こういういろいろなチームが合わさってできたものの写真を、簡単に見てみたいと思いますが、出来上がったものを見ると、初期の若林さんのスケッチとそっくりですね。


若林:あんまり変わってないですね。結構、頑固だったりするんですね。

武石:あははは...

若林:中身はいろいろ変わったのですが、ここのエピソードを言うと、昔はこの上のアールの壁がなかったのですね。
「やっぱり日建は硬いな。商業を知っとるのか!」とかなり尾川さんに怒られ倒されました
(笑)
じゃぁ、ちょっと丸いのを付けてみるかと言ったら、意外と受けまして、このまま残りました。


武石:いや、これもあっていいですよね。あったほうがいいと思います。
これも中が少し透けて見えてくるというものです。
開かれたと言いながら、外光がそのままテナントさんの中に採り込んでくるというのは、本来意外と難しいことがいろいろあるじゃないですか。


尾川:それはね、東京の役員にプレゼンをやった時に、一番指摘を受けたことでね。
「中の賑わいと外の賑わいを一体化させる」というコンセプトに従ってやってもらっているのだから、これでいいんだと。
それじゃ、清掃費はどうなるんだ。テナントが、フィッティングルームや何かを持ってきたらどうするんだと。
それから、だいたい外気温の制御、日光の制御が、本当にできるのか。という具合です。
そのあたりは当然、何も素人に言われるまでもなく、われわれは問題にしていました。


若林:特に西に面しているのですよね。
だからかなり日射熱の負荷といいますか、夕方西日が当たる。
当初、この大津通りの対面に建物がありますのでそれの影になりますよ、と言って嘘吹いていたのですけれども、どうもそうでないらしいと。
(笑)
それでLow-eガラスという、高射熱、高断熱の複層のガラスがありまして、熱が入りにくいというガラスです。そのガラスを、この面全面に使っています。
それから近くで見ると、ここに小さな粒々プリントを施したフイルムを張っていまして、それで多少光を拡散させています。


武石:それと建築的にはもちろんそうですけど、テナントとの間に必ずスペースを設けて、いわばダブルスキンになっているわけですよね。
テナント直ではなくて、必ず何かの空間を挟んでいるので、成立するのではないかなと思います。


若林:そうですね。移動空間ということもありますので、多少、熱さ寒さは我慢できる範囲かなと思います。

尾川:右側と左側はシングルのガラスですよね。
真ん中のクロスのエスカレータが見えている部分というのが、まさにいま武石さんの指摘のように、われわれが議論したところです。
通りの人の流れをそのまま吸い込んで、上に上げたり地下に下ろしたりしようということでエスカレータが出てきます。
普通、商業施設を考える時に、接道面にできるだけショップの顔出したいので、エスカレータを表に出すということは基本的にやりたくないのですがね。

そんなことよりも、人の流れをそのまま吸い上げようということで、エスカレータが表に出てきたという経緯があります。
幸いそれが、まさにダブルスキンの空間になって、制御に役立っているということがありますね。


若林:気が付かれていると思いますけど、実は外部から直接、扉をくぐらずに昇っていけるエスカレータで、各階に扉があるのです。
ここは、下から外の空気が流れている空間になっています。これも日射負荷的には良かったかなと思いますね。
また、オフィスと店舗の照明が全然違うので、普通の窓にすると夜間はたぶん妙になるだろうということに気が付きまして、縦のフィンを設けて、オフィスの照明が夜の外観に混在しないようなかたちにしています。
正面に行けば混在はするのですけれども、横から見る分には混在しないようにしている。
このフィンが実はオフィスの西日対策には非常に貢献しています。
それを理由に、ここは説明ができたと....