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Mariotトークセッション


面出:次に北京の仕事です。

僕たちは今、北京に足繁く行ったりしているんですけども、中国では北京に二つ大きな仕事をしています。

一つは、紫禁城の目の前にCCTVという中国のNHKみたいなテレビ局の大きなプロジェクトです。

もう一つは、本当は去年の暮れに完成しなくてはいけないものですが、やっと去年の秋に着工して、2008年のオリンピックまでには建物の全体像が間に合うかぐらいのものです。
これは、ポール・アンドリューというフランスの建築家が、チタンで出来たドームの中にオペラ劇場を一つ入れて、実験劇場とシアター、コンサートホールという三つのものがこの中に入るというTHE NATIONALGRAND THEATERというもので、こういう中のロケーションをやっています。
これはですね、一番最初から照明は大切だということは分かり切っているんですけども、中国政府のほうに見積を出しても、なかなか照明デザイナーを入れるべきかどうかというようなことが決まらなかったんですよ。


渡辺:人民大会堂のすぐ隣ですよね。

面出:隣ですね。

渡辺:ものすごい、ロケーションですよね。

面出:みんなが照明は非常に大切だって。
ポール・アンドリューもこういうふうな建物っていうのは照明デザインは当たり前じゃないか、っていっているんですけど、なかなかやっぱりまだ中国というところは、照明のデザインというふうなことにフィーを払うという、そういうところにまだいってなかったみたいですね。

渡辺:いってないかもしれませんね。

面出:で、結局最後ですね、ドームの外やなんかいろいろあったんだけども、私たちが見積もった一部のドームのインテリア、中の一番大切なところ、そこだけでも責任を持ってもらおうということになりました。
ポール・アンドリューも、やっと照明デザイナーと一緒に仕事ができたと言っていまして。
こういうふうなドームがだいたい出来上がった時に、僕たちが駆けつけた。

渡辺:やっと参加できたんですね。

面出:普通はそうではなくて、僕たちは実施設計に移る、要するに着工前に参加するのが鉄則なんですけども、トゥーレイト(遅すぎた)というところがあったんですが、まだ沢山の事が間に合う、まだ、全然決まってない、というそういう段階でした。
ですから、私たちが「ここに照明入れるんだ」というと、すぐその場でコンクリートを削る、みたいな。(笑)

渡辺:(笑)

面出:やるかーっていう感じですよね。
でも、削ったのはいいんだけども、構造計算をし直した方がいいんじゃないか、と思いましたね。
もう本当に24時間、夜中もきれいなくらいに溶接のチカチカする光が点っているところに、僕たちは駆けつけたんですね。
私たちは大阪にマリタイムミュージアムというものをポール・アンドリューと一緒にやったんですが、今回は中に入ると巨大なドームの内側の空間に赤い天井が貼られているという。
これが非常に難しい材料で、これが真っ暗になっちゃったら当然興味薄だし、どういうふうに見えたらいいんだ、誰もそれに対して、コンセプトなり、ロジックを説明できる立場の人がいなかったんですね。
ですから、僕らはあんなことも出来る、こんなことも出来るというよりも、これだけの建築を失敗させないっていうかね、建築の価値を光で半減させちゃいけない、そういう気持ちでした。

渡辺:そうだね。

面出:そのために、僕たちは非常に緊張して現場に乗り込んだんです。
一番最初に僕たちが複雑な中身をコンピュータで解析しながら、どのくらいのボールトの天井に近く構造がくっつくのかなんてことをやって、こういう風な天蓋みたいな、晴天空みたいな所をどういうふうにしてかっこよくなるか、そこに建つ建築なりいろんな人の背景をどうしていったらいいか考えました。
背景が、すごくうまく整うと、ものすごく空間には入りやすかったりしますからね。

渡辺:この赤い天井が、すごく印象的ですもんね。これ素材はなんなんですか?

面出:ティンバーっていう木なんですよね。

渡辺:あっ、そう!

面出:びっくりしたのは、全然光沢が無いように、輝かないようになっているんですけども、反射のない木っていうのはありえなくて、やっぱりこう下から照らすと、いろんなふうに反射しますね。
それを体育館のように全部照らすっていう話じゃなくて、出来るだけリーズナブルに一番大切な視点、ビューポイントというところはどこなんだろう、と私たちは解析して、ここに12個のビューポイントを紹介しているんですね。
なにかしなくてはいけないのは、この部分だということを細かく解析しているんですね。

何故こんなことをやるかというと、非常に理由を持って一つ一つの情景というものをちゃんと作っていこうということです。
これは、クライアントとも話して、12個の大切なプライオリティの高いビューポイントを合体させるとこういうふうになって、左右対称だとすると、こういうふうな要素に分けられるということを解析して、そこが一体どのくらいの輝度、明るさ・照度ではなくて跳ね返ってくる光がどのくらいあったらいいかということを考えるんです。
これは言ってみれば、照明デザイナーは空間の絵描きみたいなものですね。
ここで照度計を持って、「これで明るい、これで良いんじゃないの」というのは、光の性能を示しているものであって、空間での非常にきれいな景色を作ったり、気持ちの良さを作ったりすることとは違うと思います。
「それを照度に置き換えると、こんなふうになるんで安心しなさい」って言うんですが、安心しなさいっていっても絶対私たちは安心できないわけで、具体的に出来ている現場の中で、コンピュータ解析が、一体どのくらいウソとホントがあるのかということを、僕たちは責任を持たなくてはいけない。
たくさんの嘘をついても、やっぱり出来上がるのものが、「おまえ、嘘だ」と言われたら、二度と中国の地を踏めない、ということでの緊張感ですね。
ポール・アンドリューという人は非常にしたたかに現場の管理をちゃんとする人で、毎月このようにして白いTシャツを着て、私も付き合って同じ白いTシャツを着ながら、これは断面でどのくらい周りを照らす材料があるのかということを、現場で打ち合わせをしました。
彼が、建築家として考えているたくさんの「こういうことなんだろう」とか、首を傾げているところに対して、光のデザイナーとして「そうではない、こういうことだ」とか議論を繰り返しながら納得したところで、中国の施主が「うん」というと、前に進むという形でした。
説明して、なるほどと言っているんですけども、私たちは具体的にやることの一部を現場で紹介するから見なさいと、当然まだ、ティンバーも貼られていないんですけども、こういうところでもたくさんの実験をするわけです。
照明器具メーカーなりに何台かずつでも持ってきてもらいながら、「蛍光灯で照らすと、こうなんだ。また、それに対してメタルハライドランプだとこうです」とかいうような事をしながらやっています。

渡辺:でも、ある意味で、1分の1でちゃんとおさえているから、そういう点はいいかもしれないね。

面出:そうですね。

渡辺:全部、提案を実証しているわけですよね。

面出:そうですね。そうすることによって僕たちが絵で書いていることに対して、みんなが本当に深くうなずいてくれるということがあるんですよね。

渡辺:そういうことでしょうね。

面出:これは、CCTV・中国中央電視台という、レム・クールハース率いるOMAというところが、こんなもん建つのかいな、っていうコンペでとったものなのですが、構造的な解析も済んで、コストも平気なのかということも一応ネゴされて、風水が悪いんじゃないかということも、何人もの風水師に聞いてOKがでて、去年の9月21日に着工しました。
これは、誰もできないんじゃないかと思われたんだけど。(笑)

渡辺:そうですね。中断とか、噂が流れましたね。

面出:そうですね。およそ1年着工が遅れた。オリンピック前までに、中国を代表する中国国営テレビ局のスタジオの中の機能は出来ないらしいですね。

こちらのホテル棟は完成してオペレーションするそうです。
これもオフィスが出来上がりますけれども、施設は古い施設を使うんです。
54階建てですかね。
見てもわかるように、一番表層のというか、ファサードの部分に、ダイヤグリッドというストラクチャーがかかっていて、これ自体が昼には、先程の渡辺さんのと同じように、青い色などの天空光を映すようなことになるわけですけれども、夜になるともっとダイヤグリッドというのがピキピキと見えてくる、そういう外観にしようと計画しました。
しかしレム・コールハウスも忙しい人ですから、私たちがロッテルダムのOMAの事務所に自分たちのコーナーを作って毎月のようにうちのスタッフと一緒に通って、「それはこうじゃない」とか、「あんまり照明でがんばりすぎるとヘコんじゃうぞ」とか、っていろいろなことをSTAFFに言っています。
それに対して、なにしろOMAというのは、まだ若い人たちですので、皆がこういうようなものを出来る実作というのが非常に少ないので、現実的なところ、中国の人たちがコレを施工するんだぞというせめぎ合いの中で、しかし寝てもさめてもアバンギャルドなものを残そうということで非常に細かく打合せをしています。
ですから、私たちが照明デザインを考える前に彼らの建築の意図だとか、建築のこれだけのことを何をどういうふうにやりたいのか、ということを理解するだけでずいぶん時間がかかるということですね。結局は、一番最初に中国のクライアントが問題視するのは、この彫刻的な建物が昼だけでなく夜どういうふうに見えるのかそういうことだろうと思い、北京のコンピュータグラフィックスの会社に頼んで、いろんなアニメーションを作ったりしています。

要するに、夕方になって昼間映しているもののガラスファサードが下から照らされてきたり、だんだん暗くなってきて今度は中の光が点いてくるとダイヤグリットという構造のものがシルエットとなって、ピキピキピキっとなってくる時に、黒くなるだけじゃなくてダイヤグリットが強調されるような照明の工夫が出来ないだろうかと。
または中国だから色も必要だよね、なんて言ってて。
もっとすごい色を付けたら、OMAが「中国の施主が「これだっ」なんて言われちゃうと終わりなので「それはやめてくれ」とか。

渡辺:(笑)



面出:でも、なにかの祭日の時には、ちょっと色を使おうとかっていうことは、たぶんあると思います。
あとは手前の建物と後ろの建物、2つのオスメスの建物自体が、一つのファミリーなんだということを夜になって照明によって分かるように、というアイディアがちょっとありますね。
こういうピキピキピキと音がするようにしてダイヤグリットが見えてくる。
外をどうするかということなんだけども、実際は中の光が漏れてきて外観が出来るので中に入ってくるジェネリックなオフィスライティングをどうするんだということで、ミースファンデルローエの時代に戻って、ルミナスシーリングができないか−!とかっていうことも計画しています。

渡辺:ありますよね。

面出:うん。やっぱりオフィス照明というのは、非常に機能的でだらしない。
要するに蛍光灯がすごくたくさん見えるということだけなので。
それだけじゃなくて、光天井をソフィスケートしてできないか、というのがアイディアで。
結果的には、全部には、ほとんどできないだろうと。
ただ、いろいろの種類のオフィスが入ってくるので、そこの天井のマテリアルと照明のシステムというのは、非常に多彩にそれを選べるようになるだろう。
例えば、こういうふうな中ではどのくらいの照度が必要で、いくつのオフィスのパターンがあるのかという、細かい解析をしています。
これは、ホテルと劇場が入るところですね、レセプションです。
だんだんスケールが大きくなって、1/50のスケールでいろんな細部や全体のランドスケープが、シミュレーションされています。
どこまで、新しい光の要素をというか雰囲気を伝えられるか分かりませんけれども、これができるまで、どんなふうに管理するかというところで仕事をしています。

ということで長くなりましたが。今日のテーマはね、「COOL JAPAN」。
渡辺さんもCOOLという言葉は使いますか?使わない?
最近の流行なのかな。

渡辺:ん〜〜、 COOLというのは、もしかしたら一種のリバイバル的な意味じゃないですか。英語でCOOLって常に使いますよね。[冷たい]じゃなくて、[かっこいい]

面出:うん、そうだね。
僕は最初、「He is so cool」って言ったら、なんか冷静沈着な冷たい人なのかなと思って、そうじゃないですね。

渡辺:(笑) いや、全然ね。

面出:「素敵〜」って感じのことで。

渡辺:そうだね。まぁ、素敵・かっこいいって感じですね。

面出:今回のテーマの中で遠藤照明さんが「 COOL JAPAN 」っていったのは、日本がなんか素敵だなって、いろんなところから日本人のやり方なりなんなりに関してラブコールがあるのかなと、僕は思ったんですけど。

渡辺:それは結構はっきりしていて、少し前にUIAという世界建築家連盟の理事会が東京で開かれて、その時に理事の人を僕たちがご案内したんですけども、彼らは、東京に来ること自体をまず喜んでいる。
結局、やはり東京という街でいろんな新しいことが起きている。
アジアの中の日本。日本の中の東京。東京で例えば、表参道にいろんなおもしろいものが出来ているらしい、それは是非見ておきたいとかね、そういうことがありますよね。
世界の街の中でも、そういった最新のテクノロジーをうまく生かして、ビルがうまく建ってきているというところでは、日本と日本の持っている技術はすごく評価されているんじゃないかと思うんですけどね。

面出:そうでしょうね。ただあきらかに、日本の文化なりデザインという意味で一番最初に評価されたのは、ファッションですよね。

渡辺:そうですね。

面出:倉俣さん等インテリアもそうだけども、磯崎さんも含めて建築家の方々がどんどん海外の仕事をやりだしたというのは、やっぱりここ10年ぐらいのこと?

渡辺:20年ぐらいじゃないですかね。

面出:例えば坂さんだとかも含めて考えてみると、ものすごく日本の国内よりもむしろ海外で活躍していますよね。妹島さんなんかもそうですね。

渡辺:そうですね。

面出:ああいう現象というのは、渡辺さんから見てどうなんですかね。

渡辺:建築デザインに関する分野においては、日本人というか国の垣根っていうのが基本的にそんなにないですよね。
ですから一時代前だと建築家の人は、例えば、英語話さないとか、そういう感じのことがあったけど、今は坂さんがいるし、彼なんてアメリカでも基本的に英語を使って、妹島さんも基本的にコミュニケーションは英語で、みんなそういうことでどこの国でも受け入れられる姿勢が出来ているということじゃないですか。
だから、言語の壁が無くなった以上は、あとはその個人のデザイン力というかね、それに、日本人はもともとあるレベルの信憑性があるし、日本の街にそれが証明されているというところがあるんじゃないですかね。

面出:そうでしょうね。
よく「面出さんどこで照明をどういうふうに感じたんですか?どこで習ったんですか?」って言われることがありますが、習うことはないんだけども、一番最初に「スカンジナビアの光っていいな。」っていう風に思ったんですが、ヨーロッパは照明のいろいろな姿形の様式はあるんだけれども光の性能論はアメリカだということで、アメリカに行きました。
しかし、今になって考えてみると、なにかアジアなり、こちらのテイストに対する期待というのがもしかしたらあるのかな、と。

渡辺:たぶん、彼らはアジアということにこだわっているわけではなくて、さっきも言ったように、個人のタレントに対する信用っていうか、それをすごく持っているから、たぶん面出さんを呼ぶ時は、別に日本人だから呼んでいるという意識はあまりないんじゃないですかね。

面出:あんまり彼らからみて、中国を含めてアジアがおもしろそうだという話じゃないと。

渡辺:中国のあたりはビジネスがいっぱいあると思っているけど、まだデザインレベルで本当におもしろいとはみんな思ってない。
でも、たぶん1980年くらいから日本人がずっとやってきたことが、ヨーロッパの人・アメリカの人にしてみたら、同じテーブルで座っている位置は違うけどどっかにいるんじゃないって、だからあいつも後ろから来てもらう?って、そういうレベルだと思いますが。

面出:そうなんだろうね。

渡辺:そう思いますね。

面出:その上に、インターネットだなんだっていうのもあるかもしれないけど。

渡辺:アメリカで言えばニューヨークとかは、かなり国際的な大きさとエネルギーとキャパシティを持っているから、お金の投資のされ方がものすごく大きくて、そういう街でないとできないことがあると思うんですね。
そういう点では日本は例えば、東京に六本木ヒルズだったら、KPFというアメリカ人を招いて日本の組織事務所とタイアップして作っていくとかね。
かなりスマートなやり方が出来てきていると思うんですよね。

でも、今度は僕たちのようにアトリエ型のちっちゃな事務所を持っている人間からすると、大きなプロジェクトで大資本を手掛けてやってく可能性はひとつあるけど、それとは違う可能性っていうのが、日本にはまだいろいろ転がっているんじゃないかって話をよくするんです。

例えばですね、これは伊藤滋さんという都市計画の先生が言われていたんですが、日本の土地はものすごく持ち主が多いと。それは常に悪い意味で使われるわけですが、たぶん福岡でもそうだと思いますけども、ロットが非常に小さくて所有者がトータルで3千万人いる。
そのように細分化された土地で日本中が出来ているとした時に、「どうしたらいいの?」ということがあるわけです。
それは今までだと大資本がどかっと買って地上げをするようにしてやっていた。今、東京でも土地の建物が一種債券化して投資の対象になるものでいうとそういうやり方はまだしているんですけども、日本の大部分の所では投資の対象ではない。何故かというと、持ち主がいっぱいいるから。
じゃ、どうしようもないじゃないかということになるんですが、最近、いろいろな人と話すとそれが逆に可能性があるんじゃないかと思うんですね。
僕この間調べていてびっくりしたんですけど、一級建築士って日本に何人いるかご存じですか?面出さん、知っています?

面出:どうなんだろう。10万人ぐらい?

渡辺:建築士の登録番号でいうと、30万人くらい。

面出:ああ、そんなにいるんだ。

渡辺:もちろん一級建築士って1回取ると永久なので30万人の全員が現役で活動しているとは思えないですが、国土交通省の人に聞いたら、それでもたぶん15万から20万の人がアクティブな一級建築士だと言っていました。
だから結局、その層の厚さということになる。
それだけの人がある一定の知識を持っていて、今度は土地が細分化されている。

例えば、現役時代では大企業で大きなプロジェクトを抱えていたかもしれないけど、そういう人がリタイヤした後でも今度は3千万人が持っている土地のいくつかに1個1個チャレンジしていくチャンスが、まだまだ僕はあると思うんですよね。
日本が結構おもしろいのは、まさにそういうところで、僕が先程ちょっとお見せした、すごくちっちゃな住宅のプロジェクトがあったと思うんですけど、世界で建築家がこんなちっちゃな住宅をこんなに一所懸命やっている国って逆にない。

面出:ああ、なるほどね。

渡辺:今までは住宅っていうと、住宅作家とかいろいろな言い方をされたりして線が引かれていたりしていたんですけど、今の若い建築家はあまりそういう意識を持っていない。
今のまちづくりも二極化していて、巨大プロジェクトか、ものすごく小さなものか、福岡もかなり巨大プロジェクトが今まで実現している街だと思うんですが、日本のほとんどの街は巨大プロジェクトって、もう、ぽっ、としかないわけで、でも、街がなんとか成立してきているのは、その小さなもの。


面出:小さなものだね、品質の高い。

渡辺:ただ、ちっちゃいものをちゃんとやる努力をしてなかったのは確かで。だから今、日本の地方都市が結構落ち込んでいますよね、シャッター通りとか、いろいろ言われていますけど、ビックプロジェクトはこなせるようになった日本人は、次はそういうところをみんなが手作りでやっていく。

面出:小さいものね。

渡辺:小さいものをね。そこでもやっぱりね、照明は結構重要で。

面出:そうですね。

渡辺:だから、面出さんもビックプロジェクトもいいから、ちょっと小さいものも。(笑)

面出:いえいえ、最近すごく小さいものもたくさんやっているんですよ、小さなショールームとかね。住宅の照明っていうのはすごく難しいんですよ。

渡辺:難しいね、結構ね。

面出:個人のそこに住まわれる方のいろんな背景を鑑みて、しかもその方たちに知らせなくちゃいけないし。
ビジネスライクに考えたら、住宅の照明設計ってなかなか成立しないんですよね。

渡辺:いやー、難しいと思いますね。
でも、街の光って何かっていうと住宅の光ですよね。


面出:そうそうそうそう。

渡辺:あるいはマンションからの窓からでてくる光が、かなり街を作るわけだから。ほら、面出さん、昔なんだっけ? 明るいナショナルとか。(笑)よく唄っていましたよね、宴会で。それは違うっていうね。

面出:(笑)住宅レベルからそういう気持ちがっていうか、光が変わらなければ、街全体が変わらないっていうのはありますよね。

渡辺:播磨科学公園都市の街のガイドラインを僕が作ったとき、面出さんと一緒にやってとってもおもしろかったのは、やはりわかりやすい言葉で「眩しい光はあまり良くない。」それから、「暗いっていうのは、もっと暗くていいん
じゃないの。」って、いう話ありましたよね。
「もちろん安全性があるからあんまり暗くちゃいけないけれども、今の日本の街はちょっと明るすぎるんじゃないの。」それから、光の種類のことも。


面出:色のことも言ったかもしれませんね。
白い光というのは昼を再現する光で、夜になっていったら少し暖かみのある光になるのが何千年も何億年もの歴史だから。

渡辺:それって、ヨーロッパやアメリカの都市は結構そういうこと守っていますよね。

面出:うん。守っていますね。

渡辺:住宅地に飛行機なんかで飛ぶと分かるんですけど、ちょっと出るともう街の明かりは白い光じゃないですよね、夜景はね。日本はちょっと違う。

面出:そうだね。う〜ん。日本だけちょっとね、どっかでボタンの掛け違いをしちゃったみたいなところがいくつかありますよね。

渡辺:じゃないかなーって、僕はちょっと心配なんですけどね。
でも、LPAが照明探偵団とかやってくれるから、住宅の中でも普通の蛍光灯じゃない方がいいんじゃないか、とかね。
そういう基本的なことがみなさん少しずつ分かってきてくれたし、蛍光灯でも最近電球色とか。


面出:当たり前になってきましたね。

渡辺:ですから、住宅には電球色で仕事場はまた昼間の色味に近い光でもいいけどっていう、まず基本的な話っていうのが浸透してきているんだなって。

面出:(大きくうなずく)だんだんに日本も変わってくると思いますけどね。

渡辺:そうですね。ただ、ちょっと郊外に行くとっていうか、田舎に行けば行くほどまだ、蛍光灯で出来ている街が多いですよね。住まいもね。
ですからそういうところに入っていく余地はまだまだあるんじゃないかなと思います。

面出:ありますね。