| HOME>トークセッション>MARIOT EVENT 2005 Spring P.1/2/3/4/5 |
| 面出:みなさんこんばんは。面出でございます。渡辺真理(マコト)さんです。 渡辺:どうもよろしくお願いいたします。 面出:よろしくお願いします。 今日は1時間半の中で、渡辺さんの建築の中にどんな風に光が使われているか、ということを紹介いただきながら、私の方も、COOL JAPANというテーマから日本国内だけでなく、アジア・海外でやっているような仕事を紹介していきたいとおもいます。 これだけのインキュベートなところで会場もなかなか面白いので、できるだけ僕も渡辺さんもリラックスして、あまりレクチャー形式ではなく、皆さん方もできるだけクールなかっこいい質問を用意していただいて、そういう形で短い時間ですけども楽しくやっていきたいと思います。 ![]() 早速ですが、渡辺さんと私はずいぶん、もうどうなんでしょう?20年ぐらいになるんでしょうか。 渡辺:もう長いおつきあいですね。(笑) 面出:(笑) ずいぶん前に私がヤマギワの研究所に勤めて、照明の計画ということをやりだした時に、”アーキテクチュアル・ライティングデザイナー”っていう風に言い出したわけです。 普通のデザイナーと違って照明器具のデコレイティブなことはデザインしないと、できるだけ照明器具というのは空間にはなくて、光の性能論を一生懸命に考えて、照明器具をうまく使いながら空間をかっこよく輝きたたせるような、「あぁ 光をこういう風に扱うと空間がすごくかっこよく見えるんだ」と、そういう建築空間を作ろうと。 それが、まぁ建築照明デザインという事なんだけども、その時に、日本のクライアントとして「あぁ、この人やっぱりすごい」と思ったのは、磯崎さんであり、槇文彦さんでした。 やっぱりこういう方々は、すごく早くから海外のいろんなデザインということに対する造詣も深く、磯崎アトリエからずいぶん僕たちは教えられました。 その時に渡辺さんが....何年でしたっけ? 磯崎アトリエは。 渡辺:そうですね、僕はアメリカの大学出て、磯崎アトリエに1980年ぐらいから居ました。 僕の方は実は、面出さんをヤマギワのTL研究所にいた頃から知っています。 時々、仕事はしているわけだけど、ゆっくり会ってお話をするチャンスはなかなかなくて、お互いすれ違うことが多かったですね。 面出:うん 渡辺:今日は、僕のプレゼンテーションは面出さん及びLPAに関するものをいくつか選んできました。 ですので、普通の僕が建築のプレゼンテーションするのとだいぶ違う内容を組んできました。 面出:あっ、気を使っていただいて... 渡辺:いえ、気を使った訳ではないんだけど。(笑) やはりこういう機会に建築設計にとって照明とはどういうことかというようなことを、僕の方もちょっと考えてみたかったんです。 面出:ADH設計組織とは、渡辺真理さんと奥様の木下庸子さんのお二人で、僕はそういう頃からお目にかかってずいぶん触発されたんですけど、プロフィールをさっき見ていたら、ぴったり私の生まれたときと同じでした。 渡辺:(笑) 面出:1950年生まれでしょ。 渡辺:そうですね。 面出:お二人はハーバードまで出ているので、磯崎アトリエに入社するのは、僕がヤマギワに入社するより少し後ですが、それでいて独立した時は同じ時期でした。 そして法政大学の先生になられた時も、前後しながら、僕も武蔵野美術大学の先生になり、渡辺さんのプロフィール見ていると、自分とトレースしてね。(笑) 渡辺:(笑) あぁ、ずれたりね。 面出:うん、ずれたりなんかして、同じような年格好だなと思っています。ですから、渡辺さんは私からしても建築照明デザインとか、または建築をデザインするというときに、あきらかに磯崎さんなり槇さんなり、そういう方々にたくさんの教えを請いながら、新しく自分の境地を開いて、光を自分の武器にし、素材にし、建築を作っていこうという志がもっとも高い建築家の一人だというふうに僕は思っています。 今日は、まず渡辺さんのいろんなプロジェクトを紹介していただいたあとに、私も少し紹介したいと思います。 皆さんの方は、あっ これは質問した方がいいなと思うことがあれば、どこでもかまいませんので手を挙げてください。よろしくお願いします。 じゃあ、渡辺さんからいきましょうか。 ![]() 渡辺:よろしいですか。 お話したように、今日は面出さんスペシャルということで。僕は少し昔のプロジェクトから照明デザインと建築ということをみなさんに理解していただくにはこんなほうがいいかなと思って、用意してきました。 最初は、ロサンジェルスのMOCAミュージアム・オブ・コンテンポラリーアートです。 僕はこのプロジェクトをきっかけに、アメリカの大学院を出た後、磯崎さんの事務所に入っていくんですが、この建物はロサンゼルスのダウンタウンにあります。 美術館自体は延床面積:約10000平方m、そんなに大きな美術館ではないんですが、アメリカでいうとニューヨークのホイットニー美術館とほとんど同じくらいの中規模の美術館ですね。 それを磯崎さんが設計をして、ロサンゼルスのダウンタウンにピラミッド型のスカイライトとインド砂岩(磯崎さんはこの博多でも、福岡総合銀行の本店でこのインド砂岩使っていますけれども)が特徴となっていますね。 この美術館はロサンゼルスですから自然光の中のギャラリーがすごく重要で、この時にポール・マランツという照明デザイナーと僕は知り合うことになります。 当初、実はポール・マランツではなくてロサンゼルスの別のSさんというデザイナーとやっていたんですが、Sさんは僕たちにトップライトは全部ガラスにして良いよと、すごい嬉しい提案をしてくれて、全部ガラスのトップライトにしていたんですが、彼が美術館の理事たちを前にしてそのトップライトで部屋の中が何Lxになるかっていうコンピュータ解析をしてくれたんですね。今日の人数ほどではないですが、かなりの人数が聞いている中で、ここが何Lx、壁面照度が何Lx、あちらはフートキャンドルという単位だったと思いますが、いかに彼が設計したトップライトが、このスカイライトが適切かということを証明していくための説明をしていくのですが、ある場所でこれが0Lxという場所が出てきて、「ここが0Lx、ここが0Lx、ここが0Lx」って言って、最初はみんながフンフンと聞いていたんだけど、誰かの「おまえ、これ昼間なのに0Lxっていう場所があるのってどういう意味なの?」っていう一言から、“ざわざわざわ”となって... 面出:化けの皮がはがれちゃったんだ。 渡辺:はがれてしまったんですね。 会議の終わった後、その人の担当ではなくなりました。 そして当初、ニューヨークから人を呼ぶことはないと呼ばれなかったポール・マランツが登場したんです。 ポールは模型を見た途端に、大きすぎるからここまでにしなさいと、発案しました。 その頃まだコンピュータの解析とかなかったんですが、彼はかなり大きな模型を作って、そこに光を当てて照度計で計るという単純なやり方で、もっと小さなスカイライトでも十分だと言うことを証明してくれたんです。 それからもう一つ、ものすごく単純なことですが、このギャラリーのためのスポットライトはスカイライトの根本に目立たなくついているのですが、元のロサンゼルスの照明デザイナーは、この辺の空中にバトンを浮かしてそこから照らしなさいと言っていたんですけども、ポールが「いやいや、ここから設置して十分まぶしくないものを僕はできる。」と言ってくれたんです。 その辺で「あっ、やっぱり本物の照明デザイナーがいると、違うな」ということをいろいろ思いました。 ![]() このギャラリーも空間の形は僕達が作るわけですけども、光をどれだけいれたら適切かっていうのは、アメリカでは照明デザイナーがこの大きさにしたら問題ないですというのを全部おさえてくれるわけですね。 ですから、ここにトップライトがあって、ここにライティングトラックがあるんですが、こういう形式もポール・マランツとの綿密な打ち合わせで実現しました。 もう1種類違うギャラリーでは、ギャラリーの上にピラミッド型のスカイライトがあるんですが、その下でできるだけ均一な光をもたらそうという計画でした。 トップライトの素材をどうするのかという事で、そのロサンゼルスの照明デザイナーは、非常にいいけど、ものすごくお金のかかる材料を提案していたんですが、ポールのはアクリルなんですよね。 表面がデコボコしたアクリル。それで十分できるんだということを、ルーブルとかいろいろ他の美術館の状況を彼が説明して理事を説得してくれました。 自然光をどう取り入れるかということについても照明デザイナーが圧倒的に重要な役割を果たしてますよね。 面出:そうですね。ポール・マランツという人は、いずれにしても私のお師匠さんみたいな人です。 ポール・マランツとクロード・エンゲル、私にとってはこの二人のアメリカ人が建築照明という技と思想を教えてくれたんですけれども、渡辺さんのおっしゃり通り、美術館のコンサルティングをちゃんとできるかどうかっていうのは、照明デザイナーの登竜門みたいなものです。 そこで、腕が試される。でもアメリカでも、本当にうまく建築照明が出来るという人というのは、そんなにたくさんいないですよね。 渡辺:少ないですよね。 面出:やっぱりちょっとした経験が必要です。 渡辺:そういう意味で、僕は最初に知り合った人がポール・マランツだというのは、すごくラッキーだったと思うんです。 ポールともう一つやったのが、磯崎さんの仕事でニューヨークのパラディアムというナイトクラブです。これはガラスブロックの階段を作りました。 実は僕はMOCA、ロサンゼルスの美術館の時に、こういう階段をやりたかったんですけども、磯崎さんに美術館ではこんなのいらないって実現しなくて、僕がふくれていたら、「おまえ、ここで使ったらいいんじゃないの」と磯崎さんに言われ、ここでやっと僕の使いたかったものが使えたんです。 これは下から照らしているわけですけれども、階段が均一に光るような仕組みをポール・マランツが考えてくれました。 写真のトリックでも何でもなくて、階段のこの部分とこの部分で下から照らしているランプのW数が違うんです。 パラディアムは、既存の大きなパラディアムという元オペラ劇場の中に建築をはめ込む設計だったわけですけれども、この場所の作り方、この既存の物をどう見せるかとかそういうやり方も、ポール・マランツの別の才能が非常によくでた、と思うんですよね。 面出:これは、ショッキングなプロジェクトでしたよね。ようするにスーパーディスコティックっていう話で。 このパラディアムができてから、これにつながるようないろんなディスコが、たくさん出来た。 渡辺:出来ましたねー。ライムライトとか。 ニューヨークでナイトクラブが全盛期だった時代の一番大きな場所の一つでしたね。 こういう場所ができて、ここに一晩5万人とか押し掛けた時代があったわけです。 ![]() 次に、面出さんと兵庫県播磨科学公園都市とういう街を、ピーター・ウォーカーというアメリカのランドスケープ・アーキテクトと、磯崎さん、安藤さん、そのビックネームの間に入って僕がショック・アブソーバーとなるプロジェクトをやりました。 これはピーター・ウォーカーが街のイメージのスケッチをいろいろ作ってくれて、ようするに自然を破壊する行為が街作りだとしたら、木を植えるというごく単純な作業で、街を、自然を、なんとか取り戻す必要があるだろうと。 この基本方針はもう10年以上たっていますけれども、今もずっと引き継いで、街づくりに繋げられています。 その中で、いくつかプロジェクトが出来ていまして、例えば、この木々も再生林という、自然をもう一回植えようというプロジェクトですが、これは10年前の写真で、今はもう木が大きくなって建物があまり見えないようになっています。 この中で、面出さんと2つの建物の照明設計に関わりました。 右側の建物は、会議と宿泊施設。 左側の建物は、街がまだ出来立ての時だったので、街に来る科学者や技術者のための宿泊施設だったんです。 面出:先端技術開発センターという名前がついてますね。 渡辺:そうですね。そういう名前ですね。 この街にS Pring-8という、巨大な放射光施設があって、この施設はそのセミナーがあったり、会議をやったりをする、狙いでつくられました。 都市内の駐車場の照明計画に始まって、街全体の照明デザインを考えて、その一つの実践の場としてこういう施設の照明計画をする。 ちょっと見えにくいかもしれませんが、この辺はLEDを使った照明になっています。 面出:そうそうそう。 渡辺:宿泊施設の中庭に、ピーター・ウォーカーが一種の竹林を作っているんですが、その竹林の部分をどういうふうに見せていくのか、この辺は、LPAのかなり初期の作品になるかと思いますが。 面出:もう、最初ですよね。90年にLPAという会社が出来たんですから。 渡辺:日本庭園をいわばもじっているというか日本庭園のアイディアを使いながら、スケールをまったく変えて、大きな芝山、大きな石山がある。 そういう中庭をピーター・ウォーカーがデザインしているんですが、そこの中の照明計画もLPAがやってくれました。 ![]() 例えば、この写真は先程の宿泊施設の昼間の景色ですが、県の方が僕に、「やっぱり照明デザイナーはすごいですね、光の街、というのを表現してくれましたよ。」言われまして、何のことかなと思ったら、夜景になると、ここに2つの光のシャフトができたのです。 これは丸い階段室が2本あるんですが、それを光のシャフトに披露して見せてくれたので、兵庫県の担当の方は非常に喜んでいました。 これはNTという小さな住宅ですけれども、この時も僕たち考えたことは、やはり自然光を家の中にどう取り込むか、それと人工光の関係ですね。 夜の光と昼間の光が、どういうふうに違ってくるか。 ![]() これは非常に低コストの教会なんですけれども、プロテスタントの教会なので、カトリック教会と違って、光をできるだけ多く礼拝堂に入れて欲しいということがりました。 プロテスタントの教会の礼拝堂は聖書を読む場という意味があるので、あまり暗くできないんですが、その中で光をどう作っていくか、これもLPAと一緒にやった仕事ですね。 これはHKという建物ですが、照明というよりは環境的なことに努めました。 わざとお弁当箱のように平らな建物を造り、屋根面にかなりの量のPVパネル=太陽光発電パネルを並べることで、建物に使うエネルギーの80%くらいを全部自然の太陽の力でまかなうということ、建物内部にかなり木を使い、木質化をする事をしました。 これは実は、我々が全部の設計に関わっていなくて、最初の部分と最後に関わったので、照明の考え方とかはなんとか取り入れることができたという物件です。 これも住宅というかギャラリーみたいな場所なんですが、LPAと共同したプロジェクトで、ゲルハルト・リヒターという最近非常に評価の高いドイツの抽象画家のコレクションを持っておられる方がおられまして、その方のプライベートギャラリーを作ったのですが、自然光が入ってくるギャラリー空間で、この光の拡散とかを面出さんといろいろ考えてやりました。 面出:ええ、明るすぎちゃいけない、暗くてもいけない。微妙に。 渡辺:微妙なところでしたけども、出来上がったら非常に気持ちのいい空間ができて、オーナーの方も気に入ってくださっています。 |