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Mariotトークセッション


角舘:じゃ、次は僕が今いくつかやっているプロジェクトを紹介していきます。
まずは町づくり系の話です。
町の光をどうしていこうかという話の中で、今までは道を照らしているけれども実はいくら明るくしても安心感というのは全然増さない。
そうではなくて、でっぱり・引っ込みがあり、その凹んでいる所に光があったほうが外部の空間を認識できるのではないか、そのほうが安心感が増すのではないか、といった議論を実は延々とやっています。
横浜の元町や岩手県にある大野村という所でそんな実験をしながら最終的には実施設計をやったりしています。

阿部:やっぱりね、光を足していって光を作るのではなくて、うまく光を抜いていきながら光を表現しているっていうのが、一番、僕は角舘さんのイメージとしてあるけどな。

角舘:そうですか。これは埼玉の川越という所でやったワークショップですね。
街灯がずらっと点灯しています。
ここは蔵作りの古い町並みが残っている場所で、この光は何のためにあるのかというと、実は防犯のためにある。じゃ、防犯って何なのだろうと考えていくと、きっと人の目があるという事が防犯的には非常にプラスになるのじゃないか、要するに明るい・暗いという議論をするのではなくて、どういう面が防犯性に役に立つのかという事を、光でやってみようとしたものですね。

この時はいろいろな開口部に光をおいていきました。
ショーウインドウを明るくするというのではなくて、人がいるような雰囲気を作っていこうという事でやりました。街路灯を全て消灯しているのですが、この状態だと女性でも安心して歩けるというような話が出ました。
将来的にこういう状況ができれば、歴史的な財産も夜間でももう少し可視化できるのではないかなと思っています。

これは最新の、町づくり系のプロジェクトです。富山県の八尾市という所でやっています。
ここは道百選で選ればれているような場所で石畳の坂道です。
こういう垣の上に家がずらっと並んでいるような町で、「おわら」という踊りで有名です。現状は、部分的にはこういう商店街的な光があったりしているのですが、今回いろいろな実験をしてきました。

例えば防犯性というか空間の認識を助けるためにどうしたらいいのか、というような事を光で実験しています。
また、この商店街の照明を全部消して、空間のエッジに光を置いて、空間の認識を助けるという、そういう調査をしたりもしています。

あとは窓灯りの実験です。
窓に灯りを点けて人目を多くする事によって、防犯性を高めようという事もやっています。
他に崖の上の部分に付加的な光をずらっと点けて人がいっぱい生活しているような雰囲気を出そうという事もしています。
事実上ライトアップみたいな事もしていて、光を置いて水を感じるような光を作ったりしています。

一応観光協会のほうからは、冬にこれをやりたいという話になっています。
こういう家に窓灯りプラス、光をいくつかぽんぽんと置いたりしています。
これは石垣にキャットアイと言われている、自転車の後ろにくっ付いている反射板を置いて、スポットライトで照らすとピカピカと光って見えるという事を、ちょっとやろうかなと思っています。

阿部:これは町が予算を付けてやってくれるの?

角舘:詳しい話をすると長くなってしまうのですが、実質、町のほうで予算を付けています。
東大の西村研という都市計画の研究室がこの町づくりの全体をやっている流れで、そこの光の環境がどうあるべきかという事を提案してほしいという話があった。ただ、それだと馬鹿みたいなので、そうじゃなくて、この八尾という町に何が必要かという事を、今いろいろな側面から説いています。

阿部:この照明器具は仮設でついているのですか?

角舘:今は仮設でついていて、それを住民の人に見てもらっています。
川に掛かっている歩道橋には現状ナトリウム灯70Wがずらっと点灯されています。それは眩しすぎる、そうではなくて、じゃ、ここに最低限どういう光があったら人が歩行できるのか、そんな事もいろいろ実験しています。あとは交差点を認識するための光環境というのは、どうあるべきかとか、そんないろいろな実験を地元の人と話ながらしてきました。

あともう1個はこの流れで、富山県の五箇山という所、世界遺産の合掌造りの場所ですね。
ここも実は、冬のイベントでライトアップして欲しい言われたのですが、ちょっとライトアップはできないなと考えました。現状は道に照明がついて眩しいですね。眩しいゆえに周りが見えない。
そこで、ここも窓明かりみたいなものを作っていきました。
ただここでの問題は、非常に平坦だという事でした。
ですから、40Wの電球で小さな光をぽつぽつと置いて立体感を出しました。
あともう一つは、実際この窓が平坦に見えるのではなくて、いろいろな所に光を分散させて、ほんとに人が生活しているような雰囲気の光を作る。そして人が散策して、この建物に行けるような雰囲気を作っていくという事をやりました。
これに関しても、冬やりたいというようなリクエストが来ていました。
こんなスケッチを描きながら町づくり系のいろいろなスキームをしています。

最後に、最新の大阪でやった複合の商業施設プロジェクトです。
これは大阪の駅前に建っているビルですけれども、ライトアップして目立たせるというのではなくて、この建物に含まれているいろいろなアクティビティー、例えば店舗や飲食、オフィスというような人のアクティビティーを夜になったらダイレクトに表層に表現しようというのがこのプロジェクトでした。
大阪の新しいランドマークになってくれたらいいなと考えています。
共有部分に関しても、照明を一切目立たせないようにしました。建物のファサードではなくて、店舗のファサードが目立つようにしたり、床を光らせたり、いろいろな事をやっています。

次は建外SOHOという、山本理顕さんと北京でやっているプロジェクトです。
最終的に出来上がると80万平米になる巨大がプロジェクトです。
これは1期、2期、これが3期。今はそういうペースで7期まで行っています。

阿部:今、7期目に入ったの。

角舘:うん、7期目に入っている。

阿部:わぁ〜

角舘:時間がないので、こんなような事をやっていますよというのをご紹介しました。
中国でもいろいろとやっていて面白いですけどね。

阿部:町づくりの方は、やっぱり角舘さん、気合いが入っているよね。

角舘:というかね、何が大事かというと、いろいろな基本的な事がそこから見え隠れしてくる。要するに、道路というのは人が歩く場所であったりするわけですよね。
そうすると、人が歩くという事は何なのかとか、そういう事は実は結構単純なところだけど、真剣に考えなきゃいけないと思うんですよ。

阿部:うん。

角舘:今までは、その道路が明るくなきゃ駄目だとか、暗くなきゃ駄目だとか、主観的な明るさ・暗さに対する議論があった。けれども、そうすると一番声の大きい人が「暗い」と言ったら駄目なのですよね。
そうではなくて、どういうふうな性能が必要なのか。その性能論をちゃんと言っていかなきゃいけないなと思っています。

阿部:でも日本の場合、どうしても過剰に明るい状況が多いでしょう。
欧米に比べてもそうだけど。いつ頃からか分からないけれど、蛍光灯で町中を明るくするようになったよね。

角舘:結局は、あまり考えてないんだよね。(笑)
だから照度が何Lx以上というのが非常に独り歩きしていて、それが性能を満足していると勘違いしているのですよ。

例えば、ここの道は暗いとします。
でもね、極端な事を言ったらここは地元の人しか歩かないわけです。
そうしたら、別に真っ暗でも地元の人って歩けちゃうわけです。
歩く時に怖いだとか少しストレスがある事は問題なくて、つまずいて転んじゃう事がまずいわけですよね。でも今のインフラは真っ平らに整備しているから、よっぽどの事がなければ転びはしない。

阿部:だけど結構、反対されない?

角舘:だからそれはね、実際に現場で見せると「あ、これでも大丈夫だね」、逆に「こっちのほうが安心感が増すじゃない」となる。
要するに、こっちの道路の方が明るいのだけど、その横の駐車場とかが真っ暗になっちゃう。
それよりも実はこっちの環境のほうが空間を認識できて、広く分かりやすく安心できるというような事を実験して、地元の人に見てもらうという事が第1段階として必要なのです。

だから、ここで今やっているのは、一番ミニマムな状態がどういう状況かという事。
それをまず作り出して、あとは付加していくというような考え方で計画を進めていこうなかと思っている。まだ第1段階ですから。

阿部:やっぱり建築の設計をしていて、必ず評価の中で「この家は明るい」とか「暗くないですか?」というのは常に付きまとってくる話で、その先入観を取り去るのはかなり難しいところがある。
CGで作っても、なかなかピンと来ないでしょう。

角舘:だからあとはやっぱり言語で、今のところはやっていくしかないなと思っていてね。
いろいろな住宅のお施主さんと話をする時も、「リビングルームで何をやるのですか?製図か模型かを作るのですか?」と。
それなら話は別ですけど、「新聞をちょろっと見るぐらいから、あとは飯を食って...」という。
まずどういう行為をするかという事をちゃんと正確に聞いて、それに対して「こういうレベルでいいですよね」という話を1回しておく。
そうしないと勘違いしてしまう。

阿部:僕らもそういう話をうかがって説明はするのだけど、生活していく中で周りの環境は常に明るいでしょう。

角舘:うん。

阿部:だから僕も最初にアメリカに行った時に感じたのですが、アメリカのオフィス全体は日本からすると暗く、手元だけは明るくしている。
これってたぶん相対的なもので、町全体の明るさが明るいと、引きずられて明るくなるのじゃないかなと思うんですよ。

角舘:それは、ある。
ある建築家から「景観とかを語るには、教育と文化と職能という順番が必要だ」という面白い話を聞いた事があります。
「そういう教育があってはじめて文化が成り立って、その上に商売があって景観がちゃんと語れるのだ」と。
とかくそういう人たちというのは、教育文化がなくて、商売の所しかない。
日本人はどうもそういう部分がすごく多くて、教育文化という部分が欠けているのではないでしょうか。

阿部:そんな事言っていいの!?

角舘:いや、いいの。すごい大変。

阿部:でも、なにかすごく面白いので、頑張ってやってくださいよ。

角舘:はっはっは(笑)。はい。

阿部:ちょうどぴったり時間です。
何かまとまらない話だったかもしれませんが、僕としては、光で空間をもう少しいろいろ表現できるんじゃないかと。
建築サイドから、もうちょっと寄っていきたいなと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

角舘:はい。こちらこそよろしくお願いします。




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