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Mariotトークセッション


角舘:では、次は僕から説明します。

まず阿部さんから、こういうアイデアがあると提示してもらって、最初に僕が何を考えたかというと、この穴の大きさです。
どのくらいの大きさがベストなのか、検討していました。
結局、穴が大きすぎると向こう側が見えてしまい照明の存在が分かってしまう。小さければ、小さいほどその存在が分からないわけですよね。
そういう関係の中でスチレンボードでいろいろなパターンを作ってみました。




どういう照明計画をしているかという大略を説明します。
全体がどう光るかというのはこちらサイドの問題で、お施主さんには、どういう性能的な光があるのかというところを、スケッチを描きながら説明しました。

裏側はこんなふうになっています。
こういうものが、ぽつぽつぽつと付いています。
部分的に天井裏へ入れない所がありますので、そういう所は手前から引っ張ってメンテナンスできるようになっています。
ランプの1個1個が眩しくないように全部マスキングもしました。
マスキングをするのは面がふわっとするようにしたいというのが第一にありました。
その次にテーブル面の上、要するにシェフが作った料理がどういうふうに見えるかという事に関して、専属のシェフともこういう明るさがいいだろうと話をしました。

このプロジェクトに関して率直な感想を言えば、まずこの図面を把握するのにすごく時間がかかりましたね。2カ月ぐらいかかったかな。
指示を出さなければいけないので、まずあの展開図がどういうふうにこの空間に張り付くのか、逆転したり、ひっくり返ったりするので、慣れるまで分からなかった。そんな苦労がありました。

あと、こういう所には裏側にスポットライトがついています。
当初はエッジの所も、ちょっと斜めにカットして縁がぴかっと光らないようにしようともしていたのですが、さすがにそこまで現場が対応しきれませんでした。それがちょっと残念でした。

阿部:なぜそんなに苦労して全部を溶接でやっているかという話をしていませんでした。

普通の建築の場合、骨組みを作り、仕上げのパネルをそこにビス留めしていってパテ埋めしていきますよね。
しかし、ここでそれをやっちゃうと、フレームがうしろに見えて台無しになる。
それなので全部、鉄板を溶接して、要は車のモノコック構造みたいに、この鉄板が自分で自分の所を支えるという構造にしました。
それでも必要な所は、実は鉄筋を点付けして見えない所でうしろに繋いでいます。

照明も実は、僕、中を覗いてぎょっとしたんです。
黒い所に、照明がぽこぽこついて、しかもすき間を縫って配線がある。
表面は綺麗ですけど、裏へ行くと意外と生々しく電線がうねった、かなりメカメカしい中身になっている。あれが印象的でした。

角舘:まあ、天井の境壁が全部真っ白というのが原則でしたよね。

阿部:ええ。

角舘:そうしないと、鉄筋とか柱とかの構造が目立っちゃうのでね。
当初、グラフィックの中で、ケヤキの幹がちょうど柱の所に来るようにしたり、そんな調整をしながら、そこに照明を入れてという事を、さんざっぱら延々とやってたという記憶がありますね。結果はうまくいったかなと自負しています。

阿部:これで議論になったのは、全体に映像のようになった照明があって、それに対して機能的にはかなり強い光のスポットが必要という事でした。

角舘:うん。

阿部:そこのところのバランスが、すごく難しかったと思います。

角舘:そうですね。いま写真ではぴかぴかっと光っていますが、これはダウンライトの縁が光ってしまっているのでこう見えています。
本当は縁を光らせたくなかったのですが、なかなか難しかったです。

阿部:もうあんな現場の状態では、見えなかったねぇ。

角舘:一応図面は描いて、ここのエッジを削ろうという話になったのですが、そうすると手が切れちゃうのじゃないかとかの話があったりして、結局ここは普通に垂直に切り落としていますね。

阿部:あと、ランプと表面の距離も結構難しかった。
結局、中が透けて見えちゃうので、ちょっと下がり気味になったけどね。

角舘:ちなみにこれ、オープンはいつなの?

阿部:あ、そうか。その話を忘れていました。

角舘:したほうがいいよ。

阿部:このレストランは、実はもう稼働して半年は経っています。
社長さんの方針で、電話番号を知らないと予約はできなくなっています。
社長さんのほぼ知り合いに限定された人から電話番号が広まって、ここで食事をするという事になってきています。
たぶん週に3回、開いていればいいほうだと思いますし、リザベーションがないと入れない。
社長さんは、皿とかテーブルウェアとかも全部僕が選ばないから開けないんだと、僕のせいにしているのですが...
(笑)
実際はどうもそういうスタイルが気に入っているらしい。

メインエントランスのドアはビルのドアなのでそのままにしていたのですが、ドアだけ変えていいという事になりましたので、今デザイン中です。
そのドアがはまれば、今度はもうちょっとオフィシャルにリザベーションのみ対応するレストランとして、来年ぐらいにオープンになるでしょう。
ただ、リザベーションがなければ入れないという事です。
シェフは、60年代にロブションと一緒にパリで修行した方で、非常においしいフレンチを作られます。
オープンしたら、ぜひ行っていただければいいなあと思っています。
あと、地元紙でちょっと紹介されたみたいです。

角舘:本当なら、なるべくいろいろな方に、自由に食事に行けるような場所になってほしいなと思いますね。

阿部:ここで僕が面白いと思っているのは、やっぱり光を採る照明じゃなくて、空間を映像として包み込むような、そういう事ができている点。
それで2.3mmしかない薄いものだけど、そこにすごい奥行きが生まれる。
これはちょっと、ほかの何かに使ってみたいなあと思っています。



阿部:次のプロジェクトです。

東京では大きい敷地を20坪ぐらいに再分割化して売り出していて、そのぐらいの土地にどう建てるかというのが大事になってきている。
そこにブランド住宅を作りましょうというプロジェクトでした。
それで3種類の土地がある。
縦に割ると、うなぎのような土地、旗竿を作るように切る場合だと2種類の土地ができるので、うなぎ、旗竿、角という3種類の土地を作りまして、3人の違うデザイナーに依頼されました。

アトリエ・ワン、千葉学さん、そして僕らが担当した角の土地を取ったものです。
非常にシンプルな住宅を提案しました。
こんな形の建物で、コアという水まわりがありまして三層、半地下の地下1階、地上2階になっています。
北側の車線側に北向きの窓。それから南側に大きなハイサイドドライブがあります。これはかなりライズを高く取っていて、隣の家の上から光を採ったり空を捕まえようとしたりしています。こんな簡単な作りです。

下をリビングにしてもいいし、上をリビングにしてもいいというような、いろいろなライフスタイルにフレキシブルに対応できる狭小住宅を目指したのが一つ目のコンセプトです。

二つ目はいろいろな敷地にそのまま置けるようにする事。
三つ目が広がりを持つという事で、大きなワンルームの扱いにして広がりを作ると同時に、天井を第2の空と扱っています。
どういう意味かというと、地下スペースやリビングエリア、あるいは2階に面してずーっと斜めの天井があります。
この天井面に一切照明器具も何もつけないで、しかもちょっと艶がある仕上げにしました。
そこにこの南側からの空の色を映し込み、あるいは夜にはここを反射板として利用して照明を拡散させましょうと。あるいはここに赤とかいろいろな色の服を着た人がいると、それが映って人が動いている様子が何となく分かります。
そんな2番目の空、人工の空を作って広がりを持たせましょうという事を考えました。
これは模型ですけれど、こんな感じで多分空の色が映り込むだろうというスタディをしました。

結果から言うと、ものすごく明るいです。
隣にも建物がみっちり建っているにもかかわらず、窓からきれいに光が全体に回って、すごく明るくなります。
光度が高くないと光が入って来ないのですが、実際にはバルコニーと、バルコニーのセットアップに熱の反射パネルが入っていまして、入射角が深くなってきた時は光が乱反射して面白い光の縞模様を作るような効果があります。
夜になると照明や人影が天井に映り込み、面白い風景をここに作るようになっています。夕日になると、ここがほんとに真っ赤に染まります。

今回やってみて、当たり前のようで意外とない、天井面に何もしない事が新鮮だったという事がすごく分かりました。
また、天井面にちょっと艶がある素材を持ってくる事で、全然今までにない光の環境ができるというのは収穫だったような気がします。


角舘:当初、これに関しても簡単ないろいろなアイデアがあり光のシミュレーションをやったりしました。
僕が最初に何を考えたかというと、空間がすごくシンプルなので照明に関してもなるべくシンプルにいきたいなという事です。
じゃ、どういう光が欲しいのかというと、例えば、ふわっと全体に光が均一に広がってほしい。そういう光が出るもので一番小さいものは何かというと、実は電球がそのままくっつくというタイプが一番近いという事になりました。

あともう一つは、先ほど阿部さんからも話がありましたけども、部分的に反射板みたいなものを付けている。これも昔、僕が老健か何かの仕事をした時に、手すりを10cmぐらいアルミにした瞬間に、部屋の中にすごい光が入りました。
デイライト、要するに天空光や太陽光を拾ったりする事で、教室内の光が非常にアップするんですね。
今回は上から光が入ってくるので、テラスの所と、あと2階部分に、アルミ素材を使っている。
ちょうどさっき模型の断面の時に、リバウンドがどういうふうに天井に行っているかが分かったと思います。そんなような事をしました。

阿部:写真ではよく分からないとは思いますが、天井面は寒冷紗を全面に張った上に塗装して非常に平滑にしていて、壁面はジョリパットを使ってざらっとさせています。
そうやって質感を変える事で光の映り方を変えています。


角舘:これは夜に下から見上げた所ですね。
壁に当てている照明のディテールを単純に言うと、埋め込みボックスと言われているような所に、あらかじめ特殊な金物を埋め込んでおいて、そこにすぽっと入るようになっています。だからこの取りついているつばが、最小限収められないかという事で、こんなディテールにしています。

非常に小さな住宅です。
小さな住宅というのは久々だったりするのですけど、コルビジェみたいですごくいいなと、模型を見ている時から思っていました。
出来上がってみると、こういう大きな斜めの天井というのが空間的には非常に迫力があって、すごく単純だけど全体の空間を繋いでいる。そういう感じがしたので、うまくいった、と感じはしましたね。

阿部:今話をしてきて思ったのですが、角舘さんと仕事をするようになってから、いろいろ教わった事もあって、光をいろいろ遊べるようになってきた気がします。
というのは、最初の関井レディースクリニックの時は、やっぱり光自体が何かの演出を補助するみたいな使い方じゃないですか。


角舘:うん。

阿部:少なくともデザイナー、僕ら側の意識。

角舘:なるほど。

阿部:ところが青葉亭になった時に、かなりダイレクトではあるけれども、光が表現みたいな、僕ら側のほうからの視点になってきた。
もちろんあれがワンルームだったという事もあるわけですけど。
でも、この住宅小さくてワンルームだけど、意識的に僕らは光をいろいろ重ねていく事ができて、そういう意味では、すごく勉強したんだね俺たちは。


角舘:そう。

阿部:これはいろいろな光がここにこう映って、その映り込み方が変わっていく事が空間の表現になっていると思っている。
俺、心配だったんだよね、空が映るかなんて。ほんとに空の青が入ったので、ああ、良かったなぁと思っています。


角舘:結構日本的な光だと思っています。
お茶室とか、ああいう所とすごく近かったなと思う。

これは阿部さんと一緒にやった、池袋にあります「伊達の牛たん」です。
ここでも、いろいろな事をやっていて、まずはなるべく均一に光るような間接照明を作ろうとしました。
ただ幅が600mmちょっとあって、高さが300mm位しかないというので、どんな事をやったかというと、ランプにマスキングをしました。自分たちでマスキングして、光が手前にあまり行かなくし、奥の方にふわっと行く、そんな仕掛けをしています。それなりに、いろいろ計算してやりました。

これは集会場ですね。もうほんと、阿部さんの建築は真っ黒なんでね、何をやっても照明が映えない。
これも実は出来上がってから階段が見えないだとか、そんな話があったりもしました。

阿部:こうやって見ると綺麗ですね。

角舘:ただ行くと、ここの焦点が合わないような、そんな場所になっているので、なかなかこれもふわっとした感じで、いいなと。仕掛けとしては、単純にランプにマスキングしているだけという方法です。

阿部:そうだったんだ。

角舘:じゃ、今度は阿部さんのほうに...

阿部:これはまだ発表前で、今日が多分初のお披露目です。
塩釜のほうにある個人の小さな彫刻のギャラリーです。菅野美術館という名前で、2006年オープンの予定です。
これは鉄板の表面をエンボス加工して、それが2枚背合わせになっています。
このエンボスの所で鉄板が溶接される事で、構造体になるという建物です。

中身はこんなふうになっています。
八つのイタリアモダンの彫刻を収蔵する美術館で、巡回展がくるようなところではありません。ですから、どんな展示にも対応する、ユニバーサルなホワイトボックスと呼ばれるものを作るよりも、空間それ自体が個性を持ったものになった方がいいだろうと思いました。
こういうふうに八つの彫刻がぐっと箱に押し詰められてできたランドスケープというイメージでやっています。

これはギャラリー・間という所でやった僕らの展示です。
こんなふうな構造体になっています。
ちょうどシャボン玉同士がくっ付き合って、お互いに支え合うようなところを示しています。
これはコンピュータで全部図面を引くのですが、それをもう1回組み立て直して、どんなふうにできているかというのを現場と打ち合わせするための模型です。これはCGで内部のイメージを作ったものです。
作り方が大変面白くて、運び込まれたエンボスパネルをクレーンで吊り上げてどんどん固定していきます。階段もこんなふうに全部付いてきちゃいます。プラモデルを組み立てているような感じで、溶接をしていきます。




外側はコール天鋼なので、錆びたような仕上げになっています。
駐車場が赤で、入ると中が全部真っ白です。
これは個人の美術館という事もあって、かなり極端な事をやっています。
床は鉄板のまま、塗装仕上げです。
これもエンボスで全部白なのですが、実は塗装が3種類あります。
エンボス部は、さっき言ったセラミックペイントを混ぜた非常にマットな白でざらっとしています。そして床はまた艶のある白です。
外壁のすぐ内側の壁は、絵を掛けたりするので、釘が打てるように人工木材に仕上げています。そこは床よりはマットな、つるっとした白い塗装をしています。

この空間は、シャボン玉がくっついたような多面体の箱が隣り合っていくわけですが、ちょうどその面が接する部屋と部屋の継ぎ目に開口部や照明を入れ込んで、継ぎ目に光があるようになっています。
これが二つ目の部屋に入ると、開口部から光が入ったり、継ぎ目に光が入ったりしています。
ちょうどその部屋と継ぎ目に光があって、そのあいだを渡って次の部屋に行くというような作りになっています。
ここで柔らかい雰囲気になっていったのは、ちょっとうまくいったかなあと思っています。

これは階段、ギャラリー部分です。
白ですけど、天窓がそれぞれに開いていますから角度によって中にいろいろな種類の光が入ってきて、違う光のコンディションの部屋がずっと繋がっている中を渡り歩いていくような感じになっています。
ここに彫刻が置かれると人間のシルエットがすごく綺麗に見える空間になったので、かなり格好良く彫刻が展示できるだろうと思っています。

角舘:なんか不思議なスケール感が発生しているなあと思って。

阿部:結構思っているよりは大きいですけどね。

角舘:でも美術館だとこのぐらい楽しいほうがいいよね。

阿部:ありがとうございます。(笑)