| HOME>トークセッション>MARIOT EVENT 2005 Autumn PTOJECT SENDAI P.1/2/3/4/5 |
| 阿部:これが先ほどちょっとイメージを流していただいた、青葉亭というレストランです。実はわりとこの会場のそばにあります。 これは既存の、ガラスのわりとシンプルなビルでして、1階がフレッシュネスバーガーというハンバーガー屋さん、2階は何かオフィスに使われていたと思います。 もともとこの建物は床が外せるという設計が意図されていて、1階と2階を繋いで使えます。 そこにフレンチのレストランを作りたい。しかも思いっきり特別なものにしたい、とお施主さんからお話をいただきました。 じゃ、思いっきり特別なレストランにしましょうという事で、プロジェクトが始まりました。この1階と2階がちょっと変な事になっていまして、ここに実はこのビルの上に上がるための入口があります。 レストランの入口は別にありますから、レストランとは関係ないものがある事になります。 あとはここに避難用のバルコニーがあるのですね。 ですから内部空間は、こっちは左側に、こっちは右側にずれたふうになっている。 せっかく1、2階も繋げるのだから、何となく1、2階がスムーズに繋がるようにしたいなあと思ったのが一つ。 それから、裏は定禅寺通りに面してありますので、定禅寺通りのケヤキ並木に何らかの形で開いたような事を考えたいと思いました。 そこで、インナースキンと僕らは言っていますが、既存の建物の中にもう一つ壁を作って、その壁の形で例えば1階と2階をスムーズに繋げるような造形をしたり、あるいは定禅寺通りと建物を結び付けるようなインテリアにしたりと、そういう事ができないかと思ったわけです。 インナースキンの形態は、例えば入口に立った時に中を覗き込む、あるいは今度は上に上がった時に外に対して視線を広げる。 そういう事を反映したような形で、なおかつさっきの入口やバルコニーをかわしてスムーズに作るには、という事でこういう形を作っています。当初は石膏ボード等で左官仕上げにやるだけでも、十分面白い形をしているなあと思いました。 しかし、せっかく非常にスペシャルで、他にはないフレンチレストランを作りたいという事、それから定禅寺通りにある事で、もう少し定禅寺通りのケヤキ並木とこの内部を関連づけられないかと考えました。 定禅寺通りの並木の空間というのは、交通で遮断されていてなかなか歩けませんが、ページェントの時などに真ん中を歩くとすごく気持ちがいい。 ああいう空間を、ここに再現したいと思いました。 そこでちょっと考えたのが、このインナースキンに何とかこのケヤキのイメージを刷り込めないだろうかという事でした。 僕らはケヤキの写真をコンピュータに入れまして3種類の濃淡に分解してみました。 それをこんなふうに3種類の大きさの穴にしました。 新聞に載っている写真が点で構成されているみたいに、この場合には15mm間隔のグリッドに配置された、4mm、6mm、9mmの穴に分解しました。NCタレットマシンというデータを読み込んでその通りに穴を開けてくれる機械があります。 先ほどのインナースキンを2.3mmの薄い鉄板で作って、それにコンピュータで作成したデータを使って鉄板に穴を開けた。鉄板に穴で先ほどの写真を写し込んだわけです。アイデアとしては、外側に光を置けばこういう光が映って綺麗だろう、木洩れ日の空間を再現できるんじゃないかと思ったわけです。 さっきからずっとコンピュータのプロセスで来ていますから、意外と写真から簡単にできるように思われがちですが、実はピッチと穴の大きさをそれぞれどれぐらいにするかというのは無限の組み合わせがあります。 ですから原寸大で出力をして、この穴の大きさを決めていきました。 そういうスタッフにとっては結構大変な作業をしてもらって、最終的にこの大きさになっています。 面白いのは4mm、6mm、9mmになった事で、普通なら3mm、6mm、9mmとなりそうなものですよね。 しかしそれで試験体を作ると意外に3mmが体感的には小さく見えるのです。 それで最終的に4mmにしました。 ![]() 先ほどのインナースキンをペロンと広げた図です。 床があって、これが壁ですね。ここが2階の天井です。 木がここから生えていて、ここで終わっています。 それで反対側に木が反転してきています。ちょうどこの間が空という事になります。 実際に入れましたのは、1枚の木の写真をそのまま並べて繋いで、反転させてこちら側にも繋いでいまして、この間を手で描いて補正していくという作業をやったわけです。 角舘:補足するとですね、これは全部ドットのデータになっているのです。 拡大していくと、1個1個はさっきの丸いパターンのデータです。 確かベクターワークスで全部丸が描かれていました。1枚のファイルが150MBぐらいで、1個の丸を消すと1分ぐらい待たなければいけませんでした。 阿部:何個あるか分からない。50万個って話もあった。 角舘:最初は、上からスポットライトを入れるために、ここに穴の場所を全部プロットして、1個1個の穴を調整して、たまに二つの円がかぶっていたりとかね。(笑) そうすると現場で、二つぷちぷちっと、ちょっとずれて穴が開いてるとか、そういうのがありました。 ほんとに手作業で、全部ドットは調整していたという経緯があります。 阿部:手作業の余地はまだ残っていたのですが、10年前だとこれは多分できなかったと思います。 イメージとしては、こんなふうに木洩れ日の空間が再現できる。 照明が既存の構造体とこの新しい内側のインナースキンとの間に仕込まれ、間接で入ってくる事によって光のページェントが1年中レストランで感じられるようになるかなと思ってやったわけです。 これが工場でのテストピースです。 鉄板は2.3mmの薄いもので、それを確か4×8だったかな、とにかく大きめの鉄板に工場で穴だけを開けてきたのを別な工場へ持っていき溶接していくという作業です。 これは工場での仮組みです。 1回仮組みして全部形を合わせたあと、現場ビルのドアの大きさを通すためにばらばらにして、建物の中でもう1度溶接するという恐ろしい事をやっていました。 これは非常にショッキングな写真だと思った。現場に行った時に、ほんとに驚きました。外から見るとちょうど塗装する前のバスみたいな巨大な格好が工場にありまして、ちょうど開口部から中が見えています。 外側を見ると、鉄板の荒々しい、非常に「物」という感じですけども、中を覗くと突然に森の空間のデジタルイメージがある。 ここで見ると、たったここまでというふうに境界が決まって見えますが、中に入った途端すごい奥行きのある空間のイリュージョンが生まれていました。 何か映像がそのまま凍りついたみたいな空間になっているのだなと、予想以上に思った。 僕は光の雰囲気が出ればいいかなと思っていたのですが、むしろ映像が凍りついたようなイメージが出ていたのには、現場で驚きました。 これは角舘さん一緒に行ったんだっけ? 角舘:そうだ。行った、行った。 阿部:それを中に戻したという大変な作業がありました。 これは高橋工業さんという、もともと造船をやっていた会社の方々が頑張って下さいました。 2.3mmの鉄板を平らに、あるいはスムーズに溶接するというのは大変な仕事です。それをこの室内で、物を運び込んでは溶接し、この3次元のカーブを作っていったわけです。 こういう溶接跡がずっとありますが、この溶接された所は穴が開いてないので後から手で穴を開けていきます。 それが当然、完璧ではないので、ある日僕と現場チーフスタッフのイナダで穴を全部チェックするという結構すごい作業があった。 マジックの手描きで穴を描いておかないと職人さんが穴を開けてくれないのです。 だから一晩中かけて、穴を描いてもらうためのマーキングをしていったのを覚えています。 ただ、それでもシームの所だけですから、もしこれがコンピュータ制御で全部穴が開けられなければ、やっぱりできなかっただろうと思っています。 角舘:これは調整する前だよね。結構、最初の段階の時だよね。 阿部:これはかなり初期の段階。 角舘:夜中にイナダさんから泣いて電話が掛かってきた。すごく暴れていると。 50mmぐらい暴れていて、どうしたらいいんでしょうかと。(笑) これ、大丈夫でしょうかって1回泣きが入った。 阿部:高橋工業さんでは水と火を使って冷やしたり温めたりして、鉄板を矯正していくのですね。 角舘:これも裏話ですけど、調整するためにどこかをちょっと切る。そうすると今度はまた別の所が歪んじゃう。 そういう、すごい繰り返しが現場ではありましたね。 阿部:そうこうしてできあがりました。 基本的には1階はレセプションとグッズというかお土産物の販売のためのスペースです。そして上に上がっていただくとレストランがある。30席しかないレストランです。 全体が濃いこげ茶色に塗られています。 それだけじゃなくて、遮熱塗料用に使う細かいセラミックの粉体を混ぜた塗装にする事で、表面が錆びた鉄板のようにざらざらな仕上げにしています。 一つは、やっぱり完全にマットにしたかったという事と、表面のフリークをなるべく仕上げによってごまかすため。それから光がこういう状態を作るために、なるべく表面でちらつきがないようにしたいなあというのがあって、こういう仕上げにしています。 ずーと階段を上がると、なんか宇宙のような。ほんとに人が入れる巨大な照明器具を作ったような、そんな感じと思っていただければと思います。 驚いたのは、こうやって見ると、ここにすごい奥行きがあるように見えるのですね。 実際には2.3mmしかないのですが、角舘さんの照明のマジックというのでしょうか。 何と言っていいのか、いやらしい光じゃなく柔らかい感じで、非常に映像のような効果が出たと思います。 こういう大きなカウンターがずーっとあります。 今回は家具もデザインさせていただきました。 ちなみに床もカウンターもウォールナットで、全体には茶色に統一された空間という事になります。 |