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Mariotトークセッション


角舘:自己紹介しましょう。私は角舘といいます。
今日は僕と阿部さんで、今いくつかやっているプロジェクト今までやってきたプロジェクトが、どんなプロセスで進んだのかを、ご説明できたら面白いんじゃないか。
あとは、今やっている新しいプロジェクトを、最後に二人でいくつかご紹介したいと思っております。最初に阿部さんから、一言。


阿部:どうも阿部です。今日はよろしくお願いします。
角舘さんとは、共通のお友達からのご紹介でお仕事を始めました。「関井レディースクリニック」が最初だったかしら。何かもう一つあったような...


角舘:志岐の集会場。

阿部:どっちが先だったかな??

角舘:「関井レディースクリニック」が先で、「志岐の集会場」が後。

阿部:そういうご縁で仕事を始めました。
建築デザインを進めている中で、なかなか照明デザイナーに別に予算を取ってお願いするというのは、かなり難しいです。というか、「設備の人と一緒にやればいいんじゃないの」というムードもアトリエの中にあった。
でも実際にお仕事を始めてみて、やはり想像以上に光でいい空間に変わっていくものですから、機会があれば予算の許す限り無理を言いながら、角舘さんと一緒に仕事をさせていただいています。

今日はそういう共同してやったお仕事を用意しました。
できたばかりのが一つと、あとは角舘さんとはやっていないのですが、ちょっと光がテーマになっている新しいものを、お見せしようかなと思っています。よろしくお願いします。

じゃ、最初に僕と角舘さんでやったプロジェクトの「関井レディースクリニック」。
これの建築的な説明を先に僕のほうでさせていただきます。
これは古川の国道沿いにある産婦人科でして、19床のベッドを持っています。

この辺でかなり交通量の多い国道に対してあり、実は非常にタイトな敷地でした。
駐車場がありますが、これは借地なのでほとんど敷地目一杯の建物を建てるというプログラムでした。
ここの非常に煩雑な通りに対して、子どもが新しく生まれるという、どちらかといえば静かで落ち着いた雰囲気がある環境を、どうやってこういったロードストリートで作るのかというのがテーマだったわけです。

当然、塀を立てて中に植栽をいっぱい入れるという手もあったのかもしれませんが、せっかく世の中に子どもが生まれてくるのに、外に対してあまり閉じているのもどうだろう。
何となく柔らかく外に開いているのだけど、柔らかく守られているような作り方はできないか、と思ってやったのがこのデザインになります。

デザイン的な特徴を簡単に言うと、2階部分と1階部分とに分かれていて、2階部分に7.5mぐらいのキャンティレバー、大きな庇を作って1階を守るように構成されています。
この上の方は主に分娩室とか、赤ちゃんとお母さんが滞在するためのお部屋が並んでいます。そして1階に主に診察系のお部屋、それから医局、この手前にはちょっとしたマタニティービクスというのでしょうか、新しいサービスを供給するための大きな部屋、多目的室があります。

こんなふうに1階、2階の視線をうまくコントロールしながら、外に対して柔らかく開いていく事が目的でしたので、キャンティレバーをこうする事で、この庇空間を作って1階を守る。
それから、それぞれの箱の中には病室がありまして、その中にお部屋が並んでいますが目の前は白い壁があって中庭状態になっており、斜めに視線を向くと街が見える。視線の向きを、それから入る光をコントロールしながら、柔らかく守られているようなスペースを作っています。

プランではこのように部屋が並んでいまして、ジグザグな形に切り込みが取られていて、それが空中の中庭空間になっています。

1階は非常にシンプルにまとまったもので、全面ガラスで覆われています。
国道に平行に視線を持ってくるこの窓は、なるべく真正面に建物が見えるような窓の開け方は避けて、この窓も斜めに街に対して開いているわけです。あるいはこの地窓は、立っていると正面は見えないのですが、足元から流れる車の動きだけが見えるようになっています。
直接目の前の、見た目の悪いものというのでしょうか、そういったものに視線が行かないような工夫を施しています。

それからもう一つ、緩衝空間をどういうふうに作っていくかという工夫の中で特徴的なのは、ファサードである二重のガラスのレイヤーという事になります。
1枚外側にガラスがあって、この壁はセラミックでできなかったのですけど、こういう縦のストライプ状のプリントがありまして、さらに内側にもう1枚ガラスのファサードがあります。
そのあいだに部屋と中庭が交互にはさみ込まれていたり、あるいは待合室が飛び出ていたりしています。
その事で駐車場側からの視線を和らげて内部の待合空間を守るような事をしています。
この時に、ここの光の状態がどうなっているか、映り込みとか、あるいは外部の見えというのが大事でした。このあたりを角舘さんとは、いろいろやったような気がします。

いろいろな意味で、様々なアクティビティーが閉じ込められないで、光がいろいろな所から入るようになっています。

例えば赤ちゃんがいる所のちょっと向こうにはお母さんたちが集まって会話ができる。そこに下のフロアからお父さんが上がってくる。
そういうふうに、いろいろな活動が、機能を阻害しない程度に交わるようなプランニングになっています。

こんなふうにベッドルームもちょっとホテル風にしてあります。
こちらの産婦人科は非常に新しいコンセプトでして、なるべく出産という経験を豊かにしてあげようという事で、例えばお昼などは料亭のシェフを雇って非常にゴージャスなご飯が出ます。
3時になりますとお茶の時間という事で、ホームメードケーキ2種類の中から自由に選べるといったそんな所があります。
またお昼がバイキングになっていていろいろな食事をしたり、あるいは産後のケアのためのレクチャーをしたり、そんな場所に使われています。

基本的には、上にある大きなかたまり「居住空間」が、「診療空間」の上に浮いているような雰囲気を出したいという事で、そのような照明を角舘さんのほうでやってくださっています。
あんまりこのへんの話はできない。
何となく僕に主役感はなくて、今日は角舘さんの「つま」みたいな感じでしゃべっているけど...
これで見ると、だいたい開放部の構成などが良く見えるようになっています。
でも、基本的に見せたくない所はきれいに隠れるようになっています。


角舘:今この浮いているボリュームをどれだけ浮かして見せられるか、それと、ここの部分にガラスのレイヤーがありますけれども、夜になるとそういう部分がどうしたらスカッと抜けて見えるかという事を考えました。

逆にここに今、ずーっとある光というのは階段の裏側をライトアップして、下の照明以外は基本的には全部消す。機能的な照明ですね。
要するに、ミーティングルームだったりだとか、そういう拠出に値する照明なので、実はずらっと蛍光灯を並べているだけなのですね。
ただ、それの並べ方や光のバランスを見る事が、ここでは勝負所だったのかなと思っています。

当初この照明をやる上で、建築的な構成をどういうふうにするのかというのと、産婦人科という性能というか、そこに入って来る人たちがどう行動をして、どんなアクティビティーがあるのか、という事を最初はずっと考えましたね。
今仕事の中で、老健や病院をやったりしますが、その中で、こういう所に入って来る人たちがどういうふうな行動をして、どうするのかという事を、さんざっぱらスキームします。

これは簡単にCGで、当初の1階部分のイメージを作ったものですね。
どういうふうに蛍光灯を配置して、どういうふうな部分でガラスが消えて見えるのかとか、そういう事を確認しました。
こちらをぐるっと蛍光灯が実は並んでいます。その居室の用途に合わせて、そういうものを配置しています。

阿部:これは暗いなあと思ったのね。
でも角舘さんの最初のイメージというのは、光を当てて明るくしてその光で何かを作るというのではなくて、どっちかというと引き算的な人のイメージがあった。いくつかの田舎の町並みでも、引き算的にしていく。
だからこれを最初に見た時に、これは暗くて怒られるんじゃないかと思って、心配していたのですよ。

角舘:これは実はコンピュータ上の問題で、2次反射、3次反射は計算の中に入ってないのです。ですから現実的にはこれでいけるかなと。

阿部:これで実際のイメージができているのですね。

角舘:そうそう...

阿部:それはすごいね。

角舘:ほんとに申し訳ないのだけど。

阿部:蛍光灯を壁に寄せて並べたのは、すごく良かったよね。

角舘:うん、そうね。
普通はこういう所をウォールウォッシャーとか、壁を光らせるとかすると思う。だけど、ここでは壁を光らせるのは主な目的ではなくて、ちゃんと会議室の光を採る事が大切です。
ただその時に、蛍光灯の配列が壁際に寄っているという事で、全体が光って見える。


阿部:この図よりも、もっと実際は寄らなかった?

角舘:最終的には、もうちょっと寄りました。

阿部:そうですね。廊下の芯じゃなくて、壁に寄った形で蛍光灯が配置されていて、それがうまくいったような気がするね。

角舘:そうですね。

阿部:ボリュームがやっぱり綺麗に浮かび上がった。それでさすがだなあと思った。

角舘:どうもありがとうございます。