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角舘:次のプロジェクトは岩手県の大野村です。
盛岡から車で2時間ぐらいの久慈という海沿いの町から、山あいに20kmぐらい行ったところです。
近くのコンビニまで30〜40分かかるような場所です。

ここでは、まず次のような光の実験をしました。
100円ショップで買ってきたちょうちんをこんなふうに並べました。

先ほどの元町と同じような考え方で、道が明るいというよりも、空間がどういうふうに明るくて認識できるのかをきちんとやろうとしました。
当初、住民は、街路照明の選択肢のイメージがすごく狭くて、近くの久慈の駅前みたいにしてほしいとか、あと近くに八戸という町がありますが、八戸の駅前のようにしてほしいだとか意見がありました。
それに対して僕は「まずはこういう実験をさせてください。こういうふうな考え方もあるんだから、それをまずみんなで見ましょう」と。

実験をして、これが最終的にでき上がった状況です。
さっき松岡さんもおっしゃられていましたが、当初は、官民協力をどうとらえていくかというところがポイントでした。
官民協力ということで、今までの道路と民地、またその建物というものを本当は一体化して考えていきたい。
いま細かい話は言いませんが、電力会社の問題だとかいろいろな制度の問題がもろもろあって、さすがに建物に何かをつけるのはこのときは難しかったです。
ただ、道路から敷地に入り込んだ建物の境界部分までを公有の空間として、整備していきましょうと、役所また住民を含めて回答を得られました。
普通、街路灯の光は道際に、さっき言っていた境界部分に、ずらっと並んでくるところが、極力敷地内に入り込んだところに光をつけて、町全体の雰囲気が非常に伝わりやすくしました。

そのときの大野村のかかわり方を簡単に説明します。
住民・役場・コンサルタント・大学が関わりました。
実はこの大学が非常にポイントが高く、コンサルは僕もそうですが、都市計画系のコンサルタントも入っていました。

ここで考えたのが、住民参加をどうとらえるかということでした。
住民参加を全くさせないと、やはりこういうのはうまくいかない。
逆に、住民参加をベッタリさせると、またあまりうまくいかない。
では、どうしようかというので、私はこの三つのことだけを住民に参加してもらうことにしました。
まず電源を借りる。
あとは、学生と一緒にこういう考え方で光をつくるので、ちょうちんを置く場所を考えてください。
もう一つは、ちょうちんを選んでもらいました。
100円ショップで売っているちょうちんは、丸、四角、三角、六角形とか、緑、赤、白、黄色、赤とかいろいろな色と形があります。
まず形を選んでもらいました。
そうすると先ほどのインスタレーションをやった風景が、全部自分たちがつくったような錯覚に陥ってくれました。
そしたら、地元で嫌だと言っていた方も、みんな「いい、いい」という話になりました。これは対住民の話です。

次に、役人をどう説得するかというところが一番のポイントでした。
要するに、先ほど言ったような、仕様書どおりにつくるんだったらオーケーだということです。
では、どうするんだといったときに、これを全部学会等に発表しました。
照明学会、建築学会にこれの調査をした内容、結果等を大学の研究室と一緒に組んでやっていますと発表しました。
そうすると、学会に出しているこの実験報告の論文が、すごく説得力を増し、そういう論文という形で役人を説得させることをしました。

これは埼玉県の川越市でやったプロジェクトです。
埼玉県川越市は蔵づくりの町並みがいまだに残っている場所です。
人がいるような雰囲気の明かりをみんなでつくっていきましょうというワークショップをやりました。
これも学生たちが一軒一軒回って、そこの住民たちと一緒にこういうふうな光をつくっていこうみたいなことを延々とやりました。

先ほど、女性が道を歩くのに、一番安心するのが周りに人がいる状態だと申し上げました。
要するにコンビニエンスストアがあったりすると、実は安心するのです。

では、ここでは周りに人気をつくっていこう。
人がいるような雰囲気をつくっていったら、実は安心するんじゃないかという予想のもとに、ワークショップをやりました。

結果、今までの街路灯が点灯しているときよりも、断然こちらのほうが皆さん安心して歩いてくれました。
ということは、こういう光のモードができれば防犯性は非常に高まります。
つまり、今までのような街路灯は消灯しても、こういうふうな歴史的な財産を、夜間住民に還元できるんじゃないか。そういうストーリーで、いま推しています。

同じようなことを、富山県の八尾市でもやっています。
「風の盆」と呼ばれている踊りをやっている場所です。
そこに対しても、町の明かりをどういうふうにつくっていったらいいんだという考え方みたいなところを、いろいろと実験している最中です。
川のところにかかっている歩行者専用の歩道橋ですが、橋というのは、どうしても国とか県とかがお金をかけていろいろな補助金でつくられます。
そうすると、先ほど言った仕様書どおりにつくられるわけです。
大抵こういう横断歩道橋は20Lxとか10Lxとかとってくれと言われます。
すると、この歩道橋が八尾の中で一番明るい場所になってしまいます。
でも歩道橋は、真っ平らで真っすぐで境界もはっきりしていて、真っ暗でも歩けてしまうということを前提に、ちょこちょこっとした光を置いて、どういう光の状態だったら安心して歩けますかということを調査しました。
 
僕は橋を渡る大事なことは何かと思ったときに、橋を渡るという行為よりも、橋を渡ったときに見える風景のほうが、きっと、私たちが橋を渡っているときのおもしろさだと思います。
要するに、特に都市空間の場合は、橋の上に上がったときに初めて空間が広がる、一番空が広がります。
今回の橋を渡った人がふっと川を見て、「わあ、水に映り込んでいる光がいっぱいあるな」とか、こっちの石垣のところに家並みがありますけれども、ここも実は窓明かりみたいなものをみんなでつくっているのですが、「あっ、うちの町にはこんな、特徴的な風景があるんだな」みたいなことを発見していただこうとしています。
そういうことによって、こういう評価実験というものの評価が非常に上がるという傾向があるので、しっかりやりました。

実は同じようなことを真冬にもやりました。真冬のバージョンです。
この時は、10Wの電球を使いました。
雪景色のところだと、10Wでも明る過ぎるぐらいでした。
当然真っ白ということもありますが、光の感覚という意味では、非常に低いレベルでいろいろなものが認識できることが、私自身もわかりました。

このようなことを、幾つもある町内会に対して地道に説明していったりしています。
この八尾で、僕がどういう光環境を提案しているかというと、まず一つは「人々の生活をちゃんと表現していきましょう」ということです。
何を言っているかというと、AさんとBさんの性格は違う。
Aの家とBの家も生活スタイルは違う。
そういう人たち、家並みがまとまった町は、きっと二つと同じ町はないはずです。
だから、まずはこの八尾の人たちの生活というものを、光でちゃんとわかるようにしていってあげようと考えたのです。

次に安全です。
安全というのは、いま言った防犯性の話です。
道路照明に関しても同じようなことが言えますが、ここの八尾にとってどういう性能が必要かということに、ちゃんと回答を出していくことが大切です。

次に健康ということ。
健康は精神的な健康と、例えば、今ウォーキングみたいなのがすごくはやっているので、そういうふうな道を夜歩いていても、第三者の存在がわかるだとか、そういうことをちゃんとすることを言います。

次に地形的財産。
これは川とか橋とか山とか道とかいう地形的な財産も、そこの地域特有のものが非常に多い。
こういうものを、光によって素直に表現していくと、実はそこの地域らしさがあらわれるんじゃないかと思います。
 
また同じようなことを、相倉集落という富山県の合掌造りのところでやりました。
ここも近くにダムができて、補助金がばさっとおりて街路整備だとか道の整備とかが、街路灯がずらっと並んでいる現状です。
でも、きっと「これは違うな」という地元の声があって、ここでも、まず同じように、人けをつくっていくことはどういうことですかとか、入り口をちゃんと認識できることはどういうことですかというふうな、最低限、屋外で必要な光をちゃんとつくっていこうということを実験しています。
結果、それがこの村特有の光の環境になればいいとは思っていますが、ただただ全体をライトアップするというよりも、人けをつくってちゃんと建物の入り口がわかる、自分の方向がわかるというような光をつくっていくことがいいんじゃないかと提案しています。

次は岐阜県の平瀬でやったプロジェクトです。
ここも300戸ぐらいしかないような集落ですが、同じように道だとか防犯性だとか空間認知だとか、そういうことを助けるような光の環境を提案しました。
また、家の前を飾っているものに光を与えて、そこの雰囲気を高めてあげようだとか、道に対しての空間がちゃんと連続しているようにしてあげようだとかそんなようなことを実験したりしています。
 
次は、「TOKYO夢あかり」というプロジェクトですが、ある街区のファサードのアクティビティーを全部まず調査しようとしています。
要するに、窓から漏れる光、店舗からこぼれる光、またそこにどれだけ人がいるんだとか、そういうことを調査し、「らしさ」だとか「にぎわい」だとか、「高度な安全性」だとか「交差点の交通事故をなくすための危険予知を促進するための光環境とは何なのか」を考えています。
そして周りの店舗がまだまだあいているときは、街路灯はあんまり点灯しなくて、そこが閉まったら初めて街路灯が点灯し始めると、そういうふうなオペレーションができたらどうか等の提案をしています。
 
別のプロジェクトの話をしましょう。
大阪の駅前にでき上がったヒルトンプラザウエストという建物の、当初のプレゼンテーションのドローイングです。
僕が最初に思ったのは大阪の駅前に、新たに建つこの建物が、ランドマーク的に何か特徴的に光ることはしなくても良いんじゃないか。
そうじゃなくて、例えばオフィス、飲食、物販等の、ここの建物に入っている人々のアクティビティーが、夜になったらそのまま表面に感じられる。
そういう固まりがこの建物のシンボル性になったらおもしろいんじゃないか、というような計画をしました。
オフィスで人がいなくなったところは、建築がライトアップされます。要するに、人のオンとオフをうまくコントロールしてデザインしていこうということをここではやっています。

あとは地下に人をおろすために、どうやったらいいんだということで、床が光ったり、これも土木的なところですが、無垢材の鉄の柱を使って、今まで600φとか1100φとかになってしまうような柱を非常に細くしたりだとか、共有廊下部分に関しても、一般的なショッピングセンターは、廊下は間接照明にして何か光らせたりとかしているとは思いますが、ここでは一切そういう光をなるべく感じさせないようにしました。
要するに、廊下にぽんと立ったときには、店舗のファサードがそのままぽんと感じられるようにすることがいいんじゃないかと、外観と同じようなコンセプトで内部も計画しています。

あとこれはQ-AXという北山 恒さんとやった映画館です。
これなんかも少しわかりづらいのですが、実は、コンクリート打ちっ放しの中に全部ソケットが入っていて、表面に電球だけ出ているようなディテールを開発しました。
 
またこれは竹中工務店とやった京都にあるオムロンという会社のオフィスビル研究所です。
これは何か違うと思うかもしれませんが、実は私なんかはこれを畑ライトと呼んでいます。
ワンブロックごとに蛍光灯の配列を、ちょこちょこっと変えています。
それによって、何か畑っぽいリズムがつくれないだろうか。要するに60m角のオフィス空間で、300人ぐらいの人がここへごそっと入る。
どうしたものかということで、こんなような提案をしたりしました。
 
次はトヨタパビリオンです。
これなんかも実は、外観には工事用の1個3000円ぐらいしかしないような投光器がずらっと並んでいます。
だから、照明にはお金がかかっていません。
私のほうは大体こんなことをやっています。

今ざあっと走ってしまいましたが、次はディスカッションタイムにしたいと思います。
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