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Mariotトークセッション

森脇:これなんかも、その例ですが、羽田空港からちょっと行った天王洲アイルという所で、クリスマスツリーを作りました。
円錐になっているからツリーの面影は少し残っていますけれども、ディスプレイ状に変化するのです。
クリスマスツリーがディスプレイになったら面白いだろうなあという発想から始まっています。
この三角形が四角形になったり、いろいろ変わったりするというものです。
ツリーのイメージをかろうじて残しながら、けれどもクリスマスツリーがディスプレイになったことなんか無いじゃないか、そういうところがアートとしてのチャレンジというかね。

遠藤:なるほど。これはある固定された形がまさにツリーっぽいけれども、単に光っているだけでは惹きつけるものにはならない。それがこれだけ変化する。

森脇:通常はこういう所にサンタクロースのイメージだとか、天使のイメージだとか、そういうものが貼り付けられたり、光で形作られたりしてある。
けれども、やっぱり私の作品の中で光というものは、常に変化して動いていってほしい、そういうふうに思っています。

遠藤:さっきから拝見していて思ったのですけど、音と光の関係というか、その辺は何かイメージされているものはありますか?

森脇:連携は非常に重要だと思っています。先程の「Lake Awareness」という作品は、1個1個に音が付いています。一つ反応したら一つ音が出る。だからわーっと連携しますと、たくさんの音が重なり合うわけですね。

遠藤:非常に複合化されるのですね。

森脇:はい。やはり参加する観客の行為がビジュアルで入ってくるものと、サウンドで入ってくるもの、そういったものが相乗効果で総合的な作用として現れるものであると思いますので、非常に重要視はしています。
ただ、やはりこういう公共空間ですと、許される場合と許されない場合が出てきますね。

遠藤:そうですね。まさに建築空間でも音というのは非常に重要で、日常は雑音に囲まれています。
僕は建築の中で重要だなと思っているのは、やっぱりそこに訪れた人の足音ですね。


森脇:ああ。

遠藤:足音がちゃんと自分に返ってくるというか。日常はあまりそうではないですけども、美術館とかヨーロッパの教会なんかに行くとまさにそうですが、ちゃんと音が自分に返ってくるんですよね。
自分の行為が、そのまま自分に返ってくる。
そういうものをもう少し日常の建築空間の中で生かしたい、例えば森脇さんがやられているアートワークが空間の中にあって訪れた人に語りかける、逆に自分の行為が語りかける。そういうことがもっとできないかなと思っています。


森脇:そういう意味では建築家の方は、単純に建物を建てるということころから、もっと人が入り込んでどういう行為をするか、何が行われるか、そういうような状況を考えるようになってきている訳でしょうね。

遠藤:そうですね。箱や空間を用意するだけであった時代が、ずっと続いていたと思うのですが。

森脇:やっぱり昔はそういうところから入っていますか?

遠藤:強かったと思います。
しかし、やっぱり建築の原点というのはヨーロッパの教会だと思いますね。
神殿や教会を作る、それがいろいろなプログラムや機能に分割されていった。
その原点があって、その後100年程前にヨーロッパから日本に来て、今はその延長上にありますので、人の存在というのはちょっと希薄だなとずっと思っている部分ですね。
それを今はまさに、もうちょっと回復するというか入れ込むというか、そんな時代に来ているのかなと思います。


森脇:この後、我々の接点と言いますか、プロジェクトの話をしたいのですけれども、やはり従来からの建築の考え方では、なかなか僕は入り込めないなという感じがありました。
アート・美術の立場も、やはり昔ながらの絵画、彫刻というのはクローズドな中で、非常に自己完結をしていて、その中で永遠性を求めていたわけです。
けれども私がやっている光のアートいうのは、そうではなくてもっと広がっていきましょう、繋がっていきましょう、ということをメインに考えている。
そういう性質を持っているのです。

遠藤:そうですね。従来にない状況づくりというのですね。そうだと思います。
今でもよくあるのですが、建築の中でアートというと、玄関にモニュメントをぼんと置いて、これがアート作品だと...


森脇:ええ、そうですね。

遠藤:まあ確かに、それはそうなのですけども、その価値観というのは、もうだいぶ老朽化しているのではないかなと思いますね。

森脇:建築家と美術家がコラボレーションした例というのは、そういうのが多いですよね。

遠藤:多いですね。例えば昔で言うと、岡本太郎が壁画を描いたみたいなところで、「建築とアート」となっていた。
今でもそういう範囲のことが多いのですが、もう少し空間そのものや、空間を組み立てていく段階でのアートワーク、そういうことが必要だし、まさに僕は森脇さんの活動がそういうものじゃないかなぁと思っています。

森脇:ええ。僕もイメージしていますのは、建物の中に僕の作品を「はい、納めました、どうぞ」みたいな、そういう状況じゃないのだろうなという風に思っています。
やはり遠藤さんの建築コンセプトをお伺いして、そこから私なりに何が返せるかと。そこでやっぱり建物を使う人のこと、自然環境・建物が立っている場所とか、そういったものが如何に関連してくるかということも含めて、考えていきたいなと思いますよね。


遠藤:そうですね。僕らが建築を設計し考える場面でも、そのへんは少しずつ変わってきているし、多少努力をしているところもあります。
いわゆるスペックが決まっていて、予算はこれだけで面積はこれだけで、こんなものを設計してください、という事があります。まさに数字を形にするだけですよね。

森脇:(笑)辛いですね。

遠藤:どの世界でもそうですよね。そこで「じゃ、分かりました」とささっとやればすぐ出来るのですけど、「何でそうなんですか」と。これは非常に面倒で、嫌がられる時もあるのですが、「じゃ、それは本当に要るのですか。それだったら、もうちょっと、こうじゃないですか。」
そういうコミュニケーションをやっていくことによって、随分と結果って変わると思うのですね。そういう経験をいつもしています。
だけどそのことは、非常に状況を変えていく。単に数値やお金というものを物質に変えるのではなくて、状況を変える。
そのことがもっともっと出来たら良いのになと思っています。なかなかハードルや壁も多いのですけどもね。

森脇:ちょっとそろそろ、どうですか、プロジェクト。
先ほどご紹介がありましたように、このコンビではまだ実現したものはないのですけどね。


遠藤:そうですね。

森脇:いろいろディスカッションはしている段階ですけれども、非常に可能性は感じていまして、今たまたまちょうど...ですね。

遠藤:はい。ちょっと僕のほうから説明をさせてもらいます。
つい先月、あるコンペに応募したところ、運よくファイナリストの5人に残って、来月の12月15日に提出をしなければならないというものがあります。
台湾の台中市にできるオペラハウスの国際コンペです。
オペラハウスという非常にある種の賑わい、あるいは日中よりは夕方から夜にかけて行われるエンターテイメント、そういう所にぜひ光の表情とういうのでしょうか、そういうものが建築に単に取り付いているのではなく、建築と一体になるような、あるいはこのオペラハウスが光の空間というか光のエンターテイメントになるような、そんなことができないだろうかと思いました。
そこで森脇さんにお願いをして、こういうアイデアですけれども協力してもらえませんかと。そういうことが先々週ですかね?

森脇:いきなりでしたね。(笑)

遠藤:いきなり。(笑)
実は今日のMARIOT EVENTのミーティングを、事前に東京でやりましょうという事があって、その場で、実は今こんなことをやっている、とスタートしました。

森脇:それこそプロジェクトじゃないですかということで。(笑) 

遠藤:まだディテールあるいはデザインまでは出来て無いのですが、オペラハウスという非常に大きい建物で、2000席の大ホールと、800席の中ホールと200席の小ホール、この3つを1ヶ所に集めるというようなプロジェクトです。
敷地は長さが400mぐらいあって、今は公園になっていますけど、非常に大きいです。
その中に3つのホールを入れると、こんな感じですね。
これはまだアイデア段階で最終ではないですが、こういうのをある程度出来上がったら森脇さんに投げて、どうですかと。
少し変わると、またちょっと変わりましたと。
そういうふうに、今やっているところです。
このスライドは中ホールが地面に埋まっている所です。

森脇:緑の所は芝生ですよね?

遠藤:そうです。これは現在制作中で、まだあまり格好が良くなくて、全体に土盛りをして芝生の公園にしようという所です。
この下に中ホールが埋まっています。
舞台のてっぺんが、ぴょこっと飛び出ています。
そしてこっちが大ホール。ここがよくある舞台の上のグリッドといわれる上に伸びている所です。こちらのほうに客席が2000席ある。
この二つが並行していて、真ん中のこの下の所に小ホールが埋もれている。
ここに、まさに光の表情というか、あるいはこの中で光というのは、どんなふうに考えられるでしょうという風なことを、少しやりとりし始めています。

森脇:オペラハウスって、やはり一番使われるのは夜。

遠藤:夕方から入って、夜出てくる。

森脇:そうですよね。だから、やっぱり夜の表情というのは、この場合、非常に重要なんじゃないかなと思いますね。

遠藤:今のアイデアとしては、この正面の壁を緑化しようとしているのです。
まさに生きたグリーン、植物が一つの簾というかレイヤーのようにあって、その背後から光が透けてくる、それも何か変化する光ですね、そういうような話を今日もしてたんです。


森脇:このプランはまだ進行中で、最初にちょっと提案していた中では、この建物が自然の中で風を受けます。
その自然の風が反応するような仕掛けを入れたいなとか、そういう話もしていましたね。


遠藤:そうですね。先程の手が動くとそれがセンサーで感知して光が動くというような感じですね。

森脇:そうです、そうです。
手の代わりに風が吹いた時に、ああいうふうに光がわーっと広がるとか。普段はそういう表情を持つ建物だけれども、夜になってオペラが始まると、今度はそのオペラの音楽に合わせて光が広がるとかですね。
そういう表情を持つのもいいのかなとも思います。


遠藤:そうですね。この周辺は、高層マンションがずっと建っています。
30階、40階ぐらいのマンションが取り囲んでいるので、住んでいる人は毎日そこから見下ろす。今日は何をやっているとか、こんな感じの音楽かなというのが出てくると面白いかなと思います。


森脇:この建物で一番特徴的なのは、上に乗っかっている、ペローンとした...何て呼んでいるのですか?

遠藤:ネーミングはあまり考えたことがありませんねぇ

森脇:「ぺろん」じゃまずいですよね。

遠藤:そうですね。(笑)

森脇:羽衣というような感じですか。

遠藤:そうですね、非常に薄いイメージを持っています。

森脇:薄いイメージは、羽衣のイメージですよね。

遠藤:動かないのですけど、何か、こう、動きを感じさせるような。

森脇:動かないけれども薄い羽衣が被っていると。
その上で、僕はもう一つ、光の羽衣をかぶせたいなというのが、最初にありました。


遠藤:ああ、なるほど。光の羽衣ですね。

森脇:そうすると緑化の所とか芝生の所とかに、もう一つ光の羽衣がね、またちょっと別な羽衣という形で、かぶさるのもいいかなぁと。

遠藤:それはやっぱり変化するわけですね。

森脇:もちろんです。

遠藤:色はどうですか? LEDの色はいくつかありますよね。

森脇:今、LEDの色というのはホワイトもありますけども、赤・緑・青と、わりと純色なのですよ。
なかなか「これだ」と選ぶのが難しい。
光の色を選ぶ、一つの色を選ぶというのは、固定をするということですので非常に難しいんですよ。


遠藤:なるほど。

森脇:何色かをちょっと組み合わせて、さまざまな色が出るようなものを作りあげたいですね。

遠藤:さっきちょっと言ったのですが、まさに演目の雰囲気や、あるいは季節でその色の組み合わせを変えて、トーンを変えるというようなこともできるのですか?

森脇:そうですね。日常、皆さんもよく目にするLEDの光でブルーは、今は新鮮ですよね。
やはりニューマテリアルで新しく出てきたものに対しては、人間の目は慣れてないので、すごく新鮮に感じるのですね。
でも、すぐ見慣れてくるんですよ。ブルーのLEDも普及しはじめて何年か経った。そろそろみんな飽きたかな、みたいな....


遠藤:信号が一時LEDになった時、「あっ」と思いましたけど、最近慣れてきて、思わなくなりましたね。

森脇:じゃ、次は何色だという形で、新しいもの新しいものを求めていくというのは、ちょっと方向性が違うかなぁと思いましてね。
もっといつまでも飽きない深みというのは、どうやったら出せるのだろうと。それが僕のほうの課題なのですね。


遠藤:ああ、なるほど。そういう意味では、まさにこういう大きな施設が街中にできるというのは、非常に公共性の強いことなのでやっぱり飽きられない、街の中の一表情として記憶になっていかないといけないですね。

森脇:それもありますし、クリスマスのイルミネーションだったら季節ものですから1カ月ぐらいで終わってしまうのですけれども、やはり建築の中に取り込まれるとなると10年・20年は通常あるわけですよね。

遠藤:そうです。

森脇:やはり取り組み方が、そこで意識を変えなければいけないかなと。

遠藤:ここでは屋根という部分もありますし、芝生の所とか、建築とランドスケープが切れてないというのでしょうか、それを光で繋げていく。

森脇:そうですね。「すき間」というキーワードが出ていますよね。
すき間というのは何かと何かの間ですよね。普通そのあいだというのは隠れている、脇役になるものです。


遠藤:見えてないですね。

森脇:夜になると、それが主役になってくるような、何かそういうのも面白い提案かなと思っています。

遠藤:昼間は大きな存在じゃないすき間が、光を介在することによって、夜、主役になっていくというような感じ。

森脇:そうなんです。やはりすき間というのは、そうマズイものじゃなくて、ある意味、何かと何かをくっつける役目をしている訳であって、先程からのコンセプトの中で何かと何かを結び付ける役割として光があるということを考えると、これもまた意味のある提案になるのかなという気がしますね。

遠藤:普通の建築というのは、すき間をなくそうとするのが多いと思うのですが、今まで僕が取り組んできたものは、いま言われて思ったのですが、すき間が結構多いですね。すき間だらけみたいな感じかもしれませんが。(笑)

森脇:すき間産業というのはありますよね。

遠藤:アハハ。すき間建築かもわかりませんけどね。

森脇:すき間建築。

遠藤:そういう意味で、これもちょっとすき間っぽい所がありますので、その辺をまた詰めていきたいと思います。今日のところはこういう進行形の情報です。

森脇:ここで打ち合わせをしているような状態ですよね。(笑)

遠藤:来週ぐらいには、もうちょっとデザインのアイデアをやり取りして、出来上がったらぜひ何かの機会に皆さんに見て貰えたらと思います。

森脇:結果は分かる?

遠藤:そうですね。嬉しい結果だったら、もう一番に。

森脇:ああ、ここで話し合われたことが、こんな風になったのか、みたいな。 すごいですね、それは。

遠藤:運よく、もし当選したら。台湾ってやりだしたら案外早いですね。
中国もそうですけど、台湾もいま非常に経済が活性化しているのと、ある種いま国づくりをしようとしているところがある。
コンペも多いし。決まったら結構早く作りだすでしょうね。
ですから2、3年後には、ひょっとしたら出来ているかもわからないです。


森脇:ああ、そうですか。

遠藤:そんなことで、今やっています。