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Mariotトークセッション


遠藤:皆さん、こんばんは、遠藤です。

今日はMARIOT EVENTということで、僕は初めてお邪魔したのですが、アーティストの森脇さんとお話をする機会を作っていただきました。
森脇さんは東京にお住まいで活動されています。
僕は地元というか大阪に事務所があって活動しています。
基本的には建築の分野で、多少ランドスケープも活動の範囲にしています。
今日は建築空間とアートというところで、実際に森脇さんと一緒にコラボレーション出来たものはまだ無いのですが、森脇さんが作られている作品を見せてもらい、将来実現するかもしれないプロジェクトを一緒にやっていますので、そんな話をしていきたいと思います。

大阪の千里の方にIMIというIT関係とか情報デザインを教えている学校があり、そこに教えに行っています。
その学校に森脇さんも教えに来られていて、去年ぐらいから少し話をしたり、顔を合わすようになりました。
その中で、建築を考える上で非常に課題だなと思っている建築の固定性、つまり「1回出来てしまうと動かない・あるいは変化しない」ことが、時代の要請あるいは時代の気分と合っていないなぁと思っていて、森脇さんが活動されているようなインタラクティブ、まさに使う人や訪れる人あるいはそこで出会った人たちによって状況が変化したり、建築空間が変化したりする、そんなことが必要なのではないかなと思っているところです。

将来的にどんなことが可能なのかはちょっと分かりませんが、可変性というか、あるいは開放系というか、閉鎖・固定した空間や建築ではなくて、もっと可変性のあるものを考えていきたいなと思っています。
今日は多少、照明のことも意識をして、それに関連する仕事を紹介します。


これは97年に福井県のほうで作った無人駅舎の一部です。
建築ではあまりお目にかからないと思うのですが、コルゲート鋼板という材料で、土木分野において水路とかトンネルとかに使ったりする材料です。
それを使って変化のある空間を作りました。
この駅舎は常時開放していて、雨が降ったり風が吹いたりする時に来たり、あるいはここで町の人が散歩をしたり集まってもらったり、そんなことを考えて設計しました。
内側から外が見えたり、外から風が吹いたりします。
通常の建築だと、柱や梁があるのですが、そうではなくて波形の鉄板だけで出来ています。
そういう空間性ですので、照明器具をくっ付けたりぶら下げたりする方法で光を考えるのではなくて、反射光・間接光によって空間全体が照明器具のようになったら楽しいのではないかなとつくりました。
昼の空間と夜の空間は、やっぱり変わったほうがいい。
建築というのは1回作ると変わらないのですが、光をそこに持ち込むことによって昼と夜で変わる。
そういったことをより印象的に出来ないだろうかと考えました。
なかなか女子高生に評判が良くて、すごく話題になっているようで、ここを楽しんでくれているというような話を聞いています。



これはよく似たプロジェクトですけれども、場所は名古屋で、輸入車のディーラーショップです。
ここでも同じように鉄の材料を使っています。
これは先程のものとは形状が異なっていて、波形ではなく四角いでこぼこになっているものです。
表面全体が亜鉛メッキでできているような建築は、あまりないかと思いますが、ここでは全て亜鉛メッキで仕上げています。
亜鉛メッキというのは反射性があるものですから、夜になると光をよく拾うのですね。
この色は人工的な色ですけど、例えば夕焼けになると、その夕焼けの色が反射してとてもきれいな色になります。

最後になりますけど、今月完成したプロジェクトを二つご紹介して、森脇さんにバトンタッチしたいと思います。 

これは大阪城です。
皆さん、よくご存知だと思いますが、ここに天守閣があります。
その南の公園の一部にトイレを作ろうという、小さなプロジェクトです。
それからこれは来年完成しますけど、小さなレストハウス、カフェを作ろうというプロジェクトです。
やはり鉄板を使っています。
柱や梁で構成したものではなく、板状の薄いもので厚みが15ミリの材料を使っています。
壁の所は30ミリでこれらの板材を現場で溶接して、ぶら下げて空間をつくろうというプロジェクトです。
このスライドは、屋根の所が真直ぐになっていると思いますが、これが設置をされると重力を受けて、たわんでいく。
建築というのは、完成したら変わらないけれども、その仮定で重力に対抗したり、あるいは抵抗したり、そういうことである意味頑丈ではあるけれども、過剰に強くなってしまう。
そうではなくて、もう少し重力の影響をそのまま受けて建築というのは出来ないだろうかと考えたプロジェクトです。
こっちから見てもらうと分かりますが、若干15センチほどたわんでいます。
ここのところ、マンションで構造耐力があるとかないとか話題になっていますので、一つだけ言っておかないといけないのですが、別にこれで壊れるわけではありません。 地震が来ても大丈夫です。
そういう自然の力を受けて、なおかつ建築の一つの姿になるというプロジェクトです。

もう一つ、同じようなプロジェクトです。
スライドの「ぎゅーっ」という音がミソで、実際に工事をした時にこんな音が出るわけではないけれども、まさに重力を受けています。
平たい鉄板ですが、工場で加工してきて人工的に形を作って、それを最終的な結果にするのではなくて、自然の力、重力そのままを建築の一部にしていきたい、そんなプロジェクトです。
これは2週間ぐらい前の状態です。
表面は、先程の亜鉛メッキではなくて、さびで仕上げています。
さびで大丈夫かという話もあるのですが、表面だけさびて、ある一定以上は進まないという非常に便利な、都合のいい鉄板があります。
コルテン鋼といいます。海の上に橋を作った時に、ペンキの塗り替えはできないのですが、そういう状況なんかに使われたりする、さびても大丈夫なものです。
これは実は今日の午前中に撮ってきた写真です。まさに出来立てです。
あと1週間ほどで竣工します。
これも非常にきれいな放物線を描きますが、人工的にそれを目的として作るのではなくて、重力との相互関係を開放系にしておいて、重力を受け入れることによって建築が出来上がっていく、そんなことを試みたものです。
この辺が森脇さんのインタラクティブアートと、僕は非常に共感をするところなのです。
今日はその辺の話をいろいろ伺いながら、建築との可能性を探りたいなと思います。

僕の作品の紹介はこんなところです。では...森脇さん、お願いします。


森脇:森脇です。よろしくお願いします。

私はアーティストということで紹介いただきましたけれども、作品作りを始めたきっかけは、まさしく様々なものに出会った学生時代でした。
いろいろアートの方法を模索していく中で、光という素材が非常に面白く感じたわけです。
従来からある造形の素材として見た場合に、もう全然違う。いろいろな可能性を秘めている。そういうことで光を使った作品を作っていきたいと思いました。
ライト・アートという呼び方をします。
ライト・オブジェとか舞台照明ですかと聞かれるのですが、照明じゃないのですね。美術の中で光を扱うライト・アートという分野があります。
それを学生時代に目指しまして、いろいろ作品作りを始めたわけです。

まずちょっと古い作品。
1990年ですから今から15年ぐらい前に、ライト・アートの中でいろいろな表現を模索していて、まず作ったのがこういう作品です。
「レイヨ=グラフィー」というタイトルが付いています。
踊っているのは私ではないのですが、前から光が当たりますと後ろに影が出来ますよね。
その影の部分が光るという作品を作りました。
当時、僕はこれを「電子の鏡」だと、姿が映るのではなくて光が映り込む、影が光るという不思議な言い方をしていましたけれども、そういう作品を作ったのですね。
この時に、先ほど遠藤さんの方から何度も出ていました、作品と観客が関わり合うということ、そこに新しい光の可能性というのがあるのではないのかと思いました。
絵の具で絵を描きますと、もうそれはそれで完成しておしまいなのです。
けれどもこの場合は違って、このパネル上に観客が出会うたびにリアルタイムで、その都度その都度、形がいろいろと投影されるわけです。
それを見る側が見て、また面白いねと。そういうことって、昔、影絵でみんな遊んだりした非常に当たり前の行為として持っているものを現代風に光の状態に置き換えて、一つの方向性を示せるのではないかと思って制作しました。

この作品から発展をしまして、最新作をご紹介したいのですが、「Lake Awareness」というタイトルが付いています。
今ちょうど、スペインで「日本の知覚展」という日本を紹介する展覧会で展示中です。
すり鉢状になっていて、中に人が入って体験をするというもので、手を近づけたりすると、そこが反応するのです。
それぞれの光が全て、相互接続で繋がっていまして、そこの反応が周りへ周りへと伝わっていくわけです。
タイトルに「Lake Awareness」と付けたように、水面を手で戯れるように、水の波紋が広がるような感じで光が広がっていく。
実はこれは電子回路の接続でできている、非常に電子的な構造を持ったものですが、そういうイメージはあまりなくて、非常にアナログ的な感じで光が広がっていくことを心掛けています。

遠藤:触っているわけではないのですね。

森脇:触っているわけではないです。赤外線のセンサーみたいなものが付いていまして、手を近づけたりすると反応するのです。
構造的にも、それぞれがゴムで繋がっていまして、自然重力でこのすり鉢状が出来上がっています。
支えている骨の部分は上のリングだけです。
遠藤さんがおっしゃるような、あまり構造体を持ちたくないという感じで、重力により非常にきれいな形を作り出したいと思いました。
これはちょうど展覧会の会場で、レセプションの時に撮影しました。
いろいろな人が遊んでいるという状態です。何を意図しているのかということですけれども、我々の脳細胞だってお互いが反応し合って、それでいろいろなことが起こっているわけですよね。
その状態で不思議なことに、我々だったら意思が生まれたり意識が生まれたりするのですが、Awarenessな状態というのは反応するだけの状態なんですよ。つまり「あ、熱い」と思って、そこで意思が働いて熱いから手をどけよう、じゃなくて、まずもう「熱い」ということが伝わっている。
そういう感覚だけの状態を作り出したくて、こういう作品になりました。
直径5mありまして、基板が3000枚。
つまり3000個のニューロンを持っている。なまこが5000個のニューロンを持っているので、かなりいい線いっているかなと。つまりすごく生物的なものを、電子回路によって目指したいなぁという意図があります。


遠藤:どんなものが光っているのですか?

森脇:LEDですね。

遠藤:1個、1個が一粒ですか。

森脇:ブルーとイエローのLEDを組み合わせています。
私が作品作りを始めた時、LEDがちょうど出始めた頃だったんです。
最初の作品は超高輝度赤色LEDが出始めた頃です。
これはブルーのLEDを使っています。リアクションに対して、すぐに反応が返ってくるという意味で私にとっては非常に使いやすい素材だったので、もっぱらLEDを使っています。

遠藤:これだけたくさんあると、全体の中での明るさの違いというのは出ませんか?

森脇:これもやっぱり滑らかに動くように調光をしていまして、徐々に消えていくとか...

遠藤:ああ、なるほど、なるほど。

森脇:今までお見せしたのはLEDによる反応の作品ですが、そこから光による反応・光が観客のリアクションを直接反応してくれるということに非常に興味を持ったのです。
光というものが反応するだけではなくて、もっと反応したものが記憶していかないかなということを、ちょっと考えたのですね。
その別な素材として蓄光塗料というものを使いたいと思いまして、こういう作品を作りました。「時花
(トキハナ)」というタイトルが付いています。
蓄光塗料って、皆さんご存知ですかね。
光を当てると、そこに少しのあいだ光が残っている。
その塗料を、直径6mの円盤の上に塗りまして、円盤がゆっくり回転しています。
その一部のちょうど扇形になった部分に、プロジェクターで映像を与えると写真を焼き付けるのと同じような原理で、映像が焼き付けられるのです。
花びらの映像とかを焼き付けて、最初は非常に鮮明に残っているのですが、それがだんだん回転していくと同時に、うっすらと消えていくわけなのです。
人間の記憶もそうですけれども、覚えたての時はしっかり覚えているけれども、だんだんぼやけて薄れていく。
ちょうど円盤が1周してくると、全て消えてしまっている状態になります。


遠藤:ちょうど1周で?

森脇:はい。だいたい4分ぐらいありますが、4分間のあいだに消えてしまう。

遠藤:これは映像がないと真っ白な状態ですか?

森脇:この状態だと真っ暗。

遠藤:真っ暗ですか...

森脇:だた、戻ってきた時に、また新しい映像が焼き付けられる。
つまり「生まれては消え、生まれては消え」というのが、長い循環の中で行われているわけなのですよ。
この時は宇宙をテーマにした展覧会で、宇宙の生成と消滅というんですか、そういう時間感覚・輪廻と言いますか、何度も回っていくような、そういったものです。
生まれては消え、生まれては消える中で、宇宙の時間にとっては短い時間ですけれども、その中で記憶というのがあるのじゃないのかと。
そういう私自身の宇宙観といいますか、そういったものを表現できないかと作りました。


遠藤:ちょうど1周で消えるというのは、やっぱり何度かスピードをコントロールして設定をされたのですか?

森脇:蓄光塗料の種類を選びました。それぐらいで消える性質のものを。何種類かあるのですよ。

遠藤:なるほど、なるほど。

森脇:これはちょっとテレビで放映された時のものですが、人が乗れるようになっていまして、焼き付ける真上に乗っかると、そこは影になりますから人影が残ってしまうんですね。

遠藤:なるほど...

森脇:「時花」というのは、花をイメージしたんですが、花の命は短くてじゃないですけれども、儚いものじゃないですか。

遠藤:消えていく。

森脇:宇宙感覚で言うと、われわれの文明だって、そんなものかなという感じがあります。このスライドは子どもたちが、こうやって手形を付けて遊んでいる。

遠藤:海辺の砂の所を歩いていって、足跡が付いて、また波が来て、こう引けていく。まさに自然の動き、生命というのですか、そういうのを感じますね。

森脇:無常観といいますかね。そういったものを表現できたらなと思いました。
私の活動というのはライト・アートという美術の分野に留まらず、先程から遠藤さんがも開放系とおっしゃっていますけど、私も光というものを基軸にさまざまな展開をしていきたいと思っていまして、次はその中で現れてきたものをご紹介したいと思います。