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Mariotトークセッション

東海林:これは実は友達の家なのですが、編集者です。
こちらもコーポラティブハウスなんですが、インテリアと照明も含めて彼の思うようにつくっていました。
とにかく明る過ぎるので、暗くしようというので、いわゆる調光システムも入れて暗いシーンをつくっています。

ちょっとした庭がありまして、バーンと強い照明を入れて庭を明るくしてインテリアを暗くしました。そうすると、空間がズーッと広くなるわけです。

金田:まさにホテルですよね。

東海林:そうですね。
すごくおもしろかったのは、知り合いでもあるので、世田谷区のほうに住んでいるんですけれども、たまたま夜8時くらいに近くに来たんでと電話して行ったんです。
光のシーンって竣工直後に組むじゃないですか。
こんな感じで、暗い感じで、いいねって言ってつくったんだけど、行ってみると全然変わっているというというのがよくあるパターンですよね。
なんでこんなに明るくしちゃったの、というのがあるかなと思って恐る恐る行ったんですけれども、真っ暗でそのままになっていたんですね。

金田:今おっしゃっていることはよくわかりますね。
僕は六本木の、今話題のマンション棟をやりまして、誰が住んでいますとTVで紹介されるんですが、それを見るたびに、全然自分たちがデザインしたものと違う様相になっているのが、非常に寂しいというのがありますね。
こういったクライアントだと幸せですよね。

東海林:そうそう。それで、大丈夫なの、こんなんで暮らせるのって、自分でつくっておきながらちょっとびっくりしたんですけれども、こういう方もいらっしゃるんですよ。
本当に光と暮らすのが好きという感じで。
「これはちょっと電球低くしてもいい?」とか、「ワット数下げてもいい?」とか。
個人的にはライティング・フリークな方というふうに言っています。
このように、例えば東急ハンズにせっせと通って、電球なり調光器を買い込んで、こういう楽しみ方をされる人がもっともっと増えてくるといいなと思ってます。
そうやっていくと、住空間というのは、変わるんじゃないかなと思っています。

金田:僕もそう思いますね。
照明のレベルというのは、国民の文化レベルじゃないですけど、文化レベルに上がってくれば、照明に対しての意識も高いものになると思います。
東京はまだ高いほうだと思うんですけど、いろいろな海外で仕事をやっていると、やはり低いところと高いところというのは、イコール文化水準のような気もしなくはないですね。

東海林:そうだよね。
彼はここでワインをゆっくり飲む事がきっとあると思うんですが、光のインフラというか、光量としては、このくらいのほうがいろいろな可能性があるということにきっと気づいているんでしょうね。

これはある雑誌なんですけれども、「光の劇的ビフォー・アフター」みたいなのをやってくれというのがあって、それはおもしろいなと思いまして、やったときのものなんですけれども、ここにホームライティングキットという箱があります。
この中にあらかじめ選んだソケット、レセップというんでしょうか。
こういうソケットとケーブルがついている、一番簡単な照明器具と何種類かの電球、それから延長コードだとか、スポットライト2台とか、ガムテープとか入っていまして、これを持っていって、この部屋を2時間で劇的ビフォー・アフターすると。
それでいろいろなシーンをつくって写真を撮って撤去、みたいな企画だったんです。
そのときに、こういったホームライティングキットというパッケージが売っていたら、ちょっとおもしろいかなと思いましたね。

金田:なるほど。デザインは自分で決めろっていうことですよね。

東海林:鉄道なんか、線路とか電車とか、踏み切りだとか駅舎だとかがパッケージになっている、非常にシンプルなキットがあるじゃないですか。
ああいったライティングの箱といいますか。
そういうものがあったら、ライティング・フリークと言われる人も悩んでいるだけじゃなくて、少し新しいステップに上がれるんじゃないかなと思いました。

金田:そういうのが出てくると、ライティング・フリークも、さらに増えますね。

東海林:金田さんはそういった四つ星、五つ星のホテル、非常に質の高い客室を丁寧にデザインしていったり、コンドミニアムをしっかりやるとか、仕事としてはそういう傾向にあるし、僕の場合も、先ほどのコーポラティブハウスみたいな、光をもっと楽しんでいこうよというプレゼンテーションをしたりしているんですけれども、もっともっとプライベートな空間では、そこを使う人が自分で決めなくちゃいけないというのが原則じゃないですか。

金田:そうですね。
お客さんの中でもフリークじゃないけど下手をしたら僕らよりも知っていることがあって、その上に僕らの技術だとか経験だとかをのせていく。相手が基本的にはわかっていらっしゃる中で仕事をやるというのは、非常にレベルの高いものができるなと思いますね。
それは個人だろうが事業者だろうが、企業の人に関しても同じで、だから、もっともっと照明を好きになってもらいたいと思いますね。

東海林:でも、本当にライティング・フリークといわれるような方、例えばインゴ・マウラーの展覧会に3回行きましたよとか、そういう人が我々プロが想像している以上にいるんだよね。

金田:いますよね、最近ね。

東海林:ジェームズ・タレルは何度も見にいきましたとか。
そういう人がいっぱい出てきているというところが、おもしろいですよね。

金田:僕らもたまに住宅をやって、インゴ・マウラーを使ってください、イタリアのテ・ラザニ使ってくださいと言われる事があります。
僕らよりも知ってるんじゃないかと思うような人がたくさんいますね。
本当にそういう人がふえていって、好きになって日本の中でももっともっと盛り上げてもらって、そうすると僕らにもある種のプレッシャーがかかりますからね。

東海林:そうそう、おちおちしちゃいられません。
じゃあ、ちょっと「食」というのをやってみますか。

金田さんは食の空間って仕事としてはどうですか?

金田:ホテルもそうでしたが、どんなメニューを出されて、どんなお客さんがどういうふうに食べていくんですか、と一番最初に聞きます。
そういうものを基本的にはよく聞いた上でデザインをしていくことが、基本的には理想ですよね。そうするとおのずと食に対しての見せ方、見え方、お客さんの食べ方、お酒の飲み方というのが、想像できてくる。
それに対して光をどうつくっていくかということを気をつけながらやっています。

東海林:僕、大抵お店とかレストランとか行って飲んだりしていて気に入らないのは、顔に光が当たる事があるじゃないですか。
まつげで光を感じるのが嫌いで。

金田:それはよくわかります。
コントラストのきいた空間というのは、食事に邪魔になるときがありますよね。

東海林:そういうの結構多いんですよね。
それって、いわゆるフード、食べ物を商品として見せているということじゃないかなと思うんですよ。
快適に食べる空間をつくってるんじゃない、あるいは、そこまでは気を使っていない。

金田:そのとおりだと思いますね。

東海林:それは許せないね。

金田:本当はインテリアデザイナーともっともっと打合せをしなきゃいけない部分があるんでしょうね。
まぶし過ぎても光がガーンと当たってもいけない部分があると思います。
最近は、和食なんかもよくやるんですけど、いかにコントラストをきかさずに雰囲気を出すことができるかというのは、プロダクトしかり、光源しかり、非常に悩みますよね。

東海林:こういうレストランとかの、ランプはどういうのを使うんですか。

金田:和食だと、基本的には白熱球を中心にしていくんですが、多少のフォーカスポイントはハロゲンを使ったりしないと、かっこよくは見えないですよね。
さっき言っていたように、間接照明とテーブルの上と、そしてフォーカスポイント。
すごく単純ですけど、組み合わせは、基本的には白熱にします。
ただ、僕なんかがやった都ホテル東京のラウンジに行ってもらったらよくわかると思いますが、基本的にテーブルに光は当てない。
それで構成できないかと考えてます。
しかし、日本の施主だと、そこに照明を当ててくださいと言われてしまう。

東海林:それはやっぱり“商品”なんだよ。

金田:“商品”なんですよね。だから、説得に随分かかりましたね。

東海林:でも、ユーザーというか、実際お客さんが、これはちょっとまつげに光を感じるじゃないかというふうな感覚になってきているような気がするんですけどね。

金田:そうですね。僕らの責務として最近よく考えてるのは、ろうそくやアルコールランプも含めた照明プランをしないと、レストランなんて成り立たない。
全部ダウンライトをつけることだけが食の空間なんかをつくるわけじゃないと、そういうことは気にしながらやりますよね。

東海林さんもたまにレストランくらいはされてますよね?

東海林:これは6年くらい前にやった仕事ですが、ISOLA bluという銀座の、事務所の本当にそばにある、ピザ屋さんですね。
これは建築自体もテンポラリーで、10年でペイするようにつくってあるのでローコストです。
もともと車が2台くらいしかとまらない駐車場にいきなり建築をつくっていったんですね。
非常に間口が狭いので、やはり先ほどの住宅と同じように2階・3階に客席があって、階段を楽しくしようという工夫をしています。

食べるところは、基本的には何もしないというふうにしたくて、壁にコーニス照明という間接照明をつけました。
壁を照らすようなやつ。これも白熱です。
蛍光灯は絶対に使わないですね。
それからスリットがちょっと見えていますが、ここの中にやはり25V15Wというミラーつきの電球が並んでいます。
これは建築的なスリットの中から光を出していて、隠し味的に少しハイライトを与えるみたいなつくりですね。

金田:そういった意味では、お互いに施主も違うし、発注の仕方、それから発注のされ方も違っていますよね。

東海林:今日、実はこんなにしっかりと金田さんの仕事の説明を受けたのは初めてだし、多分、僕のやっている仕事もね。

金田:そうですね、お互いに。

東海林:何か、微妙にアプローチの仕方やプレゼンテーションのテクニックや、あるいはふだん得意とするというか、多くこなしている仕事の質、あるいはジャンルは違って、それに向けたそれぞれの固有の持ち味とかノウハウというものを出してはいるんだけれど、やはりどこかで我々は、人間がこれで本当に楽しいのか気持ちいいのか、そういうことを考えていますよね。

金田:そうですね。根底にありますね。
人間が、食べる、寝る、住む、根本的にはそこを考えますよね。

東海林:ちょっとホッとしたよ。そういう結論になって。
まあ、「住」「食」といって、「医」というのは今日は時間もなくて話は出来なかったですが、まあ、そろそろタイムアップという感じですかね。
何か言っておくことはある? 

金田:基本的に、もっともっと照明を、ここへ来ている皆さんも含めて好きになってもらいたいというのと、それから照明デザインということ、照明を使っていくということ、そういうことを含めて、こういう会を通じて、どんどん広めていけたらなと思いますね。

日本の本当の照明の歴史みたいなのをちゃんと刻んでいかなきゃいけないのかなというふうに思います。すごいまじめに答えていますけど(笑)

東海林:そうね(笑)
なんか、今日はすごくまじめな雰囲気になっちゃったけど、僕はこの仕事を始めてまもなく、あるいは始めるときだったかな、「おまえらは光の伝道師なんだ」と言われたんです。すごいと思いましたね。

金田:なるほど。そうですね。

東海林:要するに何かというと、君たちが一個一個、手で光はつくっていくんだけれど、それ以上に光がどれだけおもしろいかということを伝える仕事なんだと。

金田:そうですね。そういった意味では、責務としてはあるかなと思いますね。

東海林:これを心に刻みまして、これからも仕事をしたいと思います。

ちょっと長くなってしまいましたけれども、この辺で僕らのお話は終わりにさせていただきたいと思います。金田さん、ありがとうございました。

金田:有難うございました。



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