| HOME>トークセッション>MARIOT EVENT vol.18 TOKYO P.1/2/3/4/5/6 |
| 金田:ここ5年か6年くらいプロジェクトで多かったのが、リノベーションでした。 ホテルもビルもそうなのですが、外資系のホテルがこの5年で日本に異常にやってきました。 日本の資本ではなくて海外の資本が東京になだれ込んできたときに、これは今のままではまずいということがあって、一斉にホテルが改装をはじめました。 東海林:それは日本のホテルが、ちょっとまずいぞというふうに思って手を入れようと? 金田:そうです。 |

| 今、見て頂いている写真は京王プラザホテルの改装なんですが、マーケットの一つは、外人の方です。 円の力が弱くなって、中国、韓国含め、西洋の方も非常に多くなってきて、インターナショナルに改装してくれというのが一つのテーマでした。 逆にこれはインターコンチネンタルホテルの改装ですが、今まで外人が非常に多かったところは、日本の美を見せてくれと。 外資系のホテルと日本のホテルで言われていることが真反対の状況でした。 東海林:これは横浜ですか? 金田:東京のインターコンチネンタルホテルですね。 あと都ホテル。これは一番古かったですね。 改装したのが6年前くらいから始まりました。 ここは外国人の総支配人だったんですが、テーマは、アジアンミックスとヒップホップと言われました 。東海林:何だって(笑)?? 金田:アジアンミックスとヒップホップ。 東海林:アジアン・ヒップホップね。 金田:ちょうどアメリカでデザイナーズホテルがはやり始めた状況があって、こういう改装です。 最近、森田恭通さんがやられているホテルに採用されたり、また今までオフィスビルだったところをホテルにしていることが海外では通常化され、そこにヒップホップというコンセプトがあり、同じようにと、コンセプトが施主のほうから指定されてきました。 でも、やっていて非常に楽しかったのは、外国人が施主だと、デザイン自体を非常にリスペクトしてくれる。 そういった意味では、幸せなプロジェクトの一つでした。 東海林:こういう改装の場合というのは、照明のハードウエアにかけるコストは十分にあるものですか? 金田:いや、改装はないですね。 それは新築のほうがボリュームも違うし、改装はオープンさせたまま改装するので、レストランを一つつくりかえるたびに、一つの場所の照明器具を納品するので、決して安くはならないし、新築のほうが全然有利ですね。 ただ、お金があるないにしても、こういうときこそ照明デザイナーが役に立つということを、逆にアメリカ人から言われて。 お金がないからおまえらに頼んでいるんだ、という話がありました。 最近の日本の施主も、そう思ってる人が増えてきたと思います。 東海林:少し知恵を買おうと。そういうことですかね。 金田:そうですね。そういうことが非常に多かったですね。 東海林さんは最近、どんな仕事をやってらっしゃるんですか。 東海林:そうですね、いろんな仕事をやってるんですけど、僕が多いのは建築の仕事ですね。 ホテルとか店舗というよりも、建築の表現としてどういうふうに光を使っていくかというようなスタンスの仕事が多いですね。 ![]() これは銀座のミキモトです。 ミキモト自体は商業というか店舗ですけれども、伊東豊雄さんという建築家の一つの作品ですよね。 金田:これ、説明されなくてもわかるというのがすごいですよね。 東海林:これはスイスチーズとかって言ってらっしゃる方もいて。 チーズを切ると空気の穴が出てくる。 そういった不定形の開口部があり、構造は鉄板を2枚。 その間にコンクリートを注入した壁構造になっているそうです。 伊東さんという建築家は僕自身が好きな建築家で、そういう方と一緒に仕事をさせていただくのは嬉しいです。 最初に100分の1の模型を見たのですが、その瞬間に、光はどうしようかというのは「これだな」っていうのが出きましたね。 ほかにも選択肢がないことはなかったんでしょうけれども、これしかないなと思いました。 窓枠といいますか、開口部の小口の部分に光を当てています。アップですとこんな感じです。 この開口部は、スラブとか関係なしに開いているので、窓によってはスラブが横切っていたりするのもあります。 金田:なるほど。 東海林:大きさは、階高よりも大きいようなものもありまして、高さで5メートルくらいのものもあります。 大体、四角形の変形、台形みたいなものが多いのですが、それの一番底面に当たる部分、これだと青く光っている部分に、光源が入っています。 コールドカソードランプというやつです。冷陰極管ですね。 平たく言うとネオンで、工場でつくったパッケージ化されたネオンですね。 これがLEDなどよりもパワーがあり、コストも安くて、寿命は同じなんです。 ![]() 金田:そうですね。 東海林:大体4万時間ということになっていまして、それを使いました。 3色入っていまして、これをブレンドしていろいろな色をつくっています。 大体、夜8時になりますと、こういう薄いパープルにかわって、深夜になるとブルーになって消灯するというようになります。 金田:この色のコンセンサスというのは、事前に頭の中にあったんですか? 東海林:これはね、難しいですね。 プレゼンテーションのときには、例えばこんな色とかって振っておくわけですよ、やはり。「例えばですよ」とか言って。 なぜパープルなのかということではなくて、最後に決めていこうと。 金田:調整しながら。 東海林:本当は決めているんですよね、多分。 ただ、自分自身もできてみないと、どういう色がふさわしいかというのはわからなかったりするところもありますので、最後にブレンドしていくという感じですね。 金田:なるほど。多分そういうテイストを皆さん知りたいんだと思うんですよ。 つまり照明デザイナーって、最初の時点でそれを決め込んでいるのか、それとも、できてから本音のところで決めるのか。 東海林:僕の場合、ほとんど、やりながら決めるっていう感じですね。 金田:ああ(笑)。 東海林:よく思うのは、金田さんも長いですけれども、長年照明デザインをやっていて、最初からすべての光のソリューションが見抜けているかというと、そんなことはないですね。 金田:そうですね。 東海林:何がわかるかというと、やり方がわかるにすぎないと思うんです。手順とか段取りとか、どうすればうまく導くことができるとか。 金田:そうかもしれない。 東海林:そのすべを知っているからプロになってやっているということで。 ただ、そういう手順をやはり踏んでいかないとわからないということはありますよね。 金田:お互いにそうですけど、経験していないとできないですよね。 東海林:そうそうそう。経験というのは、どれだけ失敗を繰り返したかというね。 金田:そのとおり。2人ともそうだと思いますけれども、ここに出ているのは成功例ですからね(笑)。 東海林:でも、このときはかなりモックアップをつくりました。 さっき出ていました豊洲にまだ空き地がいっぱいありまして、そういったところに鉄板でモックアップをつくって、実際の光を当てたりしました。 金田:なるほど。小さな模型じゃなくて、ある程度、原寸大。 東海林:原寸ですね。 ![]() 金田:なるほど。 東海林:それから、これは一番新しく完成した伊東豊雄さんの、岐阜県の各務原市の瞑想の森市営斎場という火葬場ですが、非常にきれいです。 基本的に平屋なんですが、シェル構造の屋根がかかっていまして、非常に緩やかな曲面で覆われた空間です。 ここはすべて、いわゆる間接照明という技法で光をつくっています。 巨大な曲面の天井に対して平面に置かれたブロックですね、そこと天井の間に光源を置きました。この場合はほとんどが電球色の蛍光灯です。 金田:火葬場ですよね。 東海林:これは僕はすごいなと思ったのは、ここでおれは焼かれたいと思いましたね。この建築の強さというか、すごさは。 金田:すごいですよね、これは... 東海林:すごいです。 金田:やっぱり火葬場という事を意識してつくるものですか? 東海林:いや、それは、この建築のコンセプトがすごいんだと思うんですけれども、あるいはプロデュースをされた市長さんがすごいんだと思うんですけれども、火葬場というのをネガティブにとらえずに、これからあの世に旅立つ旅立ちの場なんだと。 それにふさわしい、非常にスピリチュアルな空間をつくりたいと。だから本当にきれいな建築ですね。 金田:なるほど。とても火葬場には見えないですね。 東海林:見えないですね。 竣工式のときに、ある女性の方が、ここでコンサートを開きたいわとおっしゃられて。それはちょっとまずいんじゃないのと思った方もいらっしゃったんですけれども、しかしながら火葬場というのは公共施設じゃないですか。 夜はほとんど使いませんから、時間差で夜の別の公共施設の使い方としてコンサートをやってもいいんじゃないということで、やったみたいですよ。 金田:へえ。それはおもしろいな。 東海林:それから、これも建築学会の作品賞をとったもので有名になりましたけれども、星野富弘さんという画家の美術館です。 これは群馬県の桐生から日光に抜ける街道の途中にある、バスとかで行かないといけないんですけれども、富弘さんの絵の美術館ですね。 コンペがありまして、ヨコミゾマコトさんとはコンペのときから一緒に組んでやっていたんですけれども、こういう丸いプランを美術館に持ってきたという、かなりセンセーショナルな空間です。 どうなっちゃうのかなと思ったんですけれども、ライティングレールって、よく使うじゃないですか。あれって基本的には直線ですよね。 金田:直線ですね。 東海林:ここではね、曲げてもらったんです。 金田:どうやってですか?? 東海林:エイヤッて!! 金田:ペンチとか使って ? 東海林:これはヨーロッパのほうで使っているアルミのやつを曲げることができるということで、曲げてもらいました。 ![]() 金田:なるほど。 東海林:スポットライトが入らなくなっちゃいますので、あんまり極端には曲げられないですけどね。 円形というもので、展示室のコーナーなども隅がないということで、非常におもしろいんですけれども、やはり一般的には建築は四角いという中では、丸くなった途端にいろいろな難しさがあったんだろうなと思いますね。 金田:ここのコンセプトは、パッと見ると普通の美術館よりは光が非常にコントラストがきいているように見えるんですが。 東海林:そうですね。美術館の場合、非常に光にデリケートですよね。 美術館というか展示照明の基準というのがありまして、基本的には50Lx以下にしなさいと。それ以上にすると、可視光だけじゃなくて、そこにはいろいろな紫外線だとか赤外線も入っていますので、絵にダメージを与えると。 絵が変色したり退色したりするということで、水彩画の場合は50Lxという基準があります。 スポットライトで50Lxをつくるためには、いろいろ調光をするんですけれども、普通に調光しますと、色温度が低くなってしまいますよね。 金田:そうですね。 東海林:赤くなってくるんですね。 しかし、星野富弘さんの作品のほとんどが、自然の野や山に咲いている草花を描いたものなんですよ。 そうすると、どうもその草花がみんな夕方の絵になってしまうという問題がある。 そこで、ここでは50Lxをキープしながら、いかに色温度を下げずにいくか、きれいにつくったというよりも、そういう美術館のリクエストにどういうふうにこたえるかというような仕事でした。 金田:でも今、何気にノウハウが露出していますけど... 東海林:そうそう。それはどうやってつくったかというと、意外と簡単なんですけれども。 これは12V20Wというランプを使って、それに調光をかけずにメカニカル調光というんですかね、こういうステンレスの板に穴をあけて、その穴のサイズで光量を決めていくという、そういう原始的なことをしました。 その穴を32mmにするのか34mmにするのかという、mm単位のところにマニアックにこだわっていく。そういう自分が好き、みたいな。そういう世界でした(笑)。 金田:なるほど(笑)。 |