| HOME>トークセッション>MARIOT EVENT vol.19 NAGOYA P.1/2/3/4/5 |
| 中島:先ほども佐川さんのほうで紹介がありましたけれど、久成寺という横浜駅から歩いて15分ぐらいのところにお寺があるんですけど、そこのお寺を見ながらまたお話ししていただきたいと思います。 佐川:一番手前が客殿です。右側の通路を渡って正面が本堂です。右側のヴォールト屋根になっているところが庫裏です。敷地としては550坪ぐらいあります。檀家さんが大体700軒ぐらいです。 中島:佐川さんの建築でこういう形が多いなと気がついたのは、ヴォールト天井なんですね。 結構よくデザインされると思うんですが、それは住宅に限ってですか。ほかの空間に対してもやられますか? 佐川:そのときの地形とか、山並みの風景とか、周辺の環境とか、そういうのを含めて考えます。 中島:でも基本的には住宅が多いということですね。 佐川:多いですね。これはちなみに銅板で0.4を使っています。 学会基準なんかだと0.35と言いますけど、ここでは0.4を使っています。 正面に唐破風の屋根があるのは、あれは昔あったものをそのまま形を残して、そのまま同じようにつくったものです。 ですからあれは全部本物で、木もあの曲線もそのとおりにつくっております。 軒裏は木組を見せないで軒板を張れないかな、全部貼物にしてくれないかなとか、集成材にしてくれないかなっていうことは現場サイドからあったんですけども、それは断じてだめで、昔のつくりをそのまま同じ組み方に復元しました。 中島:そのときも何か正面に花頭窓みたいなのはあったんですか? 佐川:正面花頭窓はなかったです。 中島:それは今回新築されたときに、こういった窓を設けようということで。 佐川:そうです。 中島:ちょっと夜景を見ていただくと、こんな感じですね。 |
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中島:花頭窓の後ろは廊下です。 廊下の照明は、たしか蛍光灯で電球色のダウンライトでしたよね。 その光が花頭窓から漏れて今こういう形で見えている。 左側の客殿の床材は何ですか? 佐川:床材はカバ材です。 中島:カバ材の特徴というのは何かあるんですか? 佐川:もちろん本堂の方はクリを使ってるんですけども、これは床暖房をしてありますので、そういったものに対応できる、同じ素材感になる、傷つきにくいものと多用途に考えました。 あとは客殿ですけども、文化ホールといったらいいんでしょうかね、新しいお寺の形みたいなものもちょっと出したいなという思いがありました。 中島:私たちはこういう建築デザインとか、内装の状況を受けて照明を考えたときに、どういうふうに照明したらいいかということを考えます。 一つ天井が傾斜になっていますよね。 せっかくデザインでそうされているわけですから、この傾斜天井の傾斜の感じを強調する意味で、手前のほうに間接照明的なブラケットを入れています。 入口からできるだけ目立ただないような感じでブラケットを取りつけて、蛍光灯の電球色を入れています。 日本の電球色というのは色温度が3000K(ケルビン)、やや白い電球色になっています。 ちょうどこの天井が、白い塗装と木。 その白と木の両面を生かすということになると、それが一番生きるのは電球色だし、ここで白色を持ってくるとちょっとおかしいと思い、あえて蛍光灯電球色にしました。 ただ、それだけの光だけじゃなくて、これは今四つのペンダントが下がっていますけれど、このペンダントは中にダイクロイックハロゲン球60Wがついていて、これは色温度が少し高めで3100K。 ここでちょっと蛍光灯の色とこのペンダントの色味を合わせて、違和感がないようにしました。100Kぐらいの色温度の違いは、人間の目は、普通に見た場合はあんまりわからなくて、間接照明の蛍光灯の光とペンダントの光が光色的に調和されてきているかなという感じを受けたわけです。 ![]() このペンダントはアクリルの板が4枚ありまして、アクリル一枚一枚の板の表面に光沢があって、裏側がマット仕上げになっています。 ですから光が光沢のある面に当たって反射したのが、裏側のマット仕上げに映り込んで、全体に光の輪の形態が強調され、目には優しい光をもつ照明器具です。 光の輪というとちょっと宗教的な感じになるかもしれませんけど、これは仏教とはあんまり関係ないかもしれないですが、キリスト教では天使の輪といって頭上にリングを設けた天使がいっぱいいますけど、そういうことも少しイメージしながら、あまり照明器具で宗教色を出すのも嫌だなという感じもあって、これが一番適しているんじゃないかなということで4灯つけさせていただいたわけです。 ダイクロイックハロゲン球ですので、実際に見るとやや温かい感じに見えます。 向こうに見えるのが間接照明の蛍光灯で、非常にうまくマッチングしているかなという感じを持っておりますが、どうでしょうか... 佐川:そうですね。 入った瞬間に天井を真っすぐにしてバーンと空間をただ広く見せるよりは、やや閉じ込んでいくようなところと、木で温かさもちょっと出していきたかったんですね。 このお寺はそれ程ここではお葬式をしなくて、どちらかというとやや法事的な利用の方が多いものですから、ここに悲しんで来るという人はそんなにはいない。 それよりはちょっと和ませる、ほっとさせるというか、そういう「体感の温かさ的」な素材で木を使ったらどうなのかなというイメージで、天井は全部板を張らないで、逆に時の流れというか、そんなことを表現したかったのでここがずっと曲線になっています。 気がつかないかもしれないですけど、正面の木のラインを見ると、半円になっています。 中島:半円になってるんですね。 佐川:これなんかも、こっちをパッと見たときに、少しでもやわらかい感じが出ればなということでやっています。 中島:なるほどね。私は直接住職さんとはお話ししてないんですけど、ここの景観が照明的にも一つのポイントになると思っていました。 佐川:意外と男の人って来たときにあんまり感想を述べないみたいで、女性の方が感想をよく述べるそうです。 とても新しいモダンな感じのお寺さんですねとか、夜の明かりがとってもきれいだわねとか、そういうことを女性の方が多く話すと言っていました。 中島:このお寺さんは歴史的には.... 佐川:明治に入ってからすぐで現在第四世、宗派は日蓮宗です。 ![]() 中島:これは応接室になるんですが、照明はコーブ照明といいまして、天井と壁のすれすれの中に蛍光灯を入れて、ここも電球色で統一した形で、やわらかい光になっているのですが、ちょっとここで興味があったのは、この腰壁の部分です。 これは銅ですよね。何かそこに銅を使う意味はあったんですか。 佐川:お寺なので、あんまり洋というよりは和っぽく、しかし和だからということであんまり和室、和室としたくなかったので。後で本堂にも使ったんですけど、尊厳が感じられる素材って何かなと思ったんですね。 そのときに銅が何かそういうことを感じさせてくれるんじゃないかなと。 あと我々形というのは、丸と三角と四角しかないですよね。 あとはどういうふうに組み合わせるかだけですけれども、そのときにどうしてもできないデザインというは、やっぱり「時がつくるデザイン」ができないと思うんですよね。 そうすると銅は時をつくってくれるんですよね。 鉄の場合には自分をさびさせていくんですけども、銅の場合には保護させて緑青をつくって強度を増していくというのかな、非常におもしろい特性を持っているんですね。 中島:腐食すると逆に強度が増す。 佐川:膜をつくっていくんですよね。だからあれは毒だという人がいるんですけど、決して毒でなくて、むしろヨーロッパの一流のホテルに行くと、必ずドアノブなんかは真鋳とか銅が多いんですよ。銅には抗菌作用があるのです。 中島:例えば子供がなめても大丈夫なんですか? 佐川:ですから10円玉は95%銅で、5%ニッケルですよね。あれはなめても大丈夫ですよね。 10円が赤銅、5円が黄銅、100円が白銅ですよね。 中島:なるほどね。それはさびても大丈夫なんですか? 佐川:大丈夫です。 中島:じゃあこの部分も将来的にはさびるんですか? 佐川:室内ですから、外と比べればそんなに変化はないと思うんですけど。 ちょっと黒っぽい感じで硫化処理させてるんです。 それでちょっと和の感じを出させています。 これは、工場に行って、こういう仕上げにしてくれとお願いしました。 中島:昼間は昼光が窓から入って、その銅の部分がよく見えてくると思うんですけど、これは間接照明だとどうなんですかね。銅の質感とかがわかりますかね。 佐川:日本人の持っている肌の反射率は大体50%ですから、素材の持っている反射率も50%以下に抑えると大体落ちつくんですよね。 ステンレスとかアルミというのは非生命感で反射率が70%ぐらい、だから意外と落ちつかないけれども都市的な感じがする。 ここは使う素材は全部50%に落としています。 色ばっかりじゃなくて、反射率から素材も選んでいるということです。 中島:壁や、床も含めて、人間の肌に近い反射率や色合いのものを選んでいると... 佐川:そうです。だから障子もそうですね。 中島:そうですね。大体明り障子なんかはその和紙にもよるけど、40〜50%ぐらいの反射率がありますよね。家具や何かは佐川さんが選んだんですか。 佐川:これは後で住職が選んだんですね(笑)。 ![]() 中島:こちらはさっきの客殿から本殿に向かうところの廊下の写真になりますけれど、左側の奥のほうにさっきの花頭窓というのがありまして、ここの壁にダウンライトの光が映るわけです。 その映った光で外から花頭窓が光って見える。 ですからその花頭窓から外に漏れる光を意識して、このダウンライトが壁にかかる光を計算してやらなくちゃいけない。 ダウンライトの配光がありまして、例えば絞られた配光だと壁に映る光が下のほうに映っちゃって、写真のような花頭窓の光り方をしないです。 ですから、ちょうど花頭窓が全体的に光って見えるようにするためには、ダウンライトの遮光角というか、それをどのぐらいにするかと。 30度だとちょうど天井に近いところの壁に光が映るから、外から見たときに花頭窓が全体に光って見えるという、そういうことを計算しながらダウンライトの選定と配灯をしました。 よくダウンライトは全般照明に使われる場合、いわゆる床面の照度がどのぐらいの出ればいいかという単純な計算だけで、ダウンライトの器種と配灯が選ばれてしまうんですが、問題は壁際に配灯された光がどういうふうに壁に映るか、それは視覚的にとても重要なんです。 人間の目というのは通常視点では、床を見ているわけじゃなくて、どちらかというと鉛直面。人間というのは二足歩行です。 犬や猫は四つ足ですから床を見ていますけど、人間は鉛直面――つまり室内でいえば壁面ですが、その壁面にかかる光をどうデザインするかがとっても重要なのだけど、なぜかダウンライトを配灯する人はそこまで考えないで、ただ作業面の照度が出ればということを配灯してしまう。特にこういうような窓が来たときには、壁に映る光がすごく影響を受けるので、計算をしながら配灯しなくちゃいけないと考えています。 どっちにしても通路の真ん中にダウンライトを配灯しますから、そのために、壁のどの高さまでに光が来るような器具を選んだらいいかを考えてやっています。 ![]() まずこの花頭窓ですけど、これは下がフロストになって上が透明で、これは意識的にやられたんですか? 佐川:ここは横浜の駅から近いものですから、商業地域で周辺は分譲マンションと賃貸マンションなんです。 あとは京急電車が通っていたりと、環境としてはあんまりよくないんですね。 ただ、ここに入ったときに、ちょっと言い方悪いんですけど、ディズニーランドに入ったときのように、そこでもうほかの風景をあまり見せないような工夫をしています。 ここに入ったときに、周りのマンションとか、住居とかそういうのを見せないような工夫をして、心を落ちつけさせるというか、そんな空間にしたいなということで、こういうぼかしを使ったり、あとは周りの風景をなるべく取り入れないようにしたり、そんな工夫をしてるんです。 中島:なるほど。本殿のほうでも、やっぱり外のガラス窓はこういう半分ぐらいフロストになっていて上が透明ですよね。 私は外から窓を通して中を見たときに、下半分フロストで上が透明ですので、そうすると先に仏殿が見えるので、仏殿が雲に浮いているような、そんな感じに見えました。 佐川:デザインするときに、僕は境界線の美学ってあると思うんですよね。 地面があって、建物があってじゃなくて、そこにちょっと緑があっただけで建物は雰囲気が変わると思うんです。 そこの境界の部分をどういうふうにデザインするかというのも、とても空間として大事だと思っています。 中島:それもデザインの一部と.. 佐川:そうです。 中島:夜、花頭窓を離れた視点で見ると、壁に映った光がちょうど花頭窓の輪郭にあったような感じで見えてくるわけです。 ![]() 手前側がその花頭窓のある通路で、今度は逆を見ています。 そうするとこの廊下にブラケットがあって、こちらはいま閉まっていますけども、ここをあけると本殿に入ってくるわけです。 その本殿がこういうような感じになっています。ここでさっきもちょっとお話があった正面の壁ですけど、真ん中のこれは何ですか? 佐川:金箔で両サイドが銅です。 中島:これはどういう意味に? 佐川:冗談で言えば、銅は金と同じと書くので同じということですが(笑)...全然おもしろくないですけどね(笑)。 一つは金が高いというのと、あとは石器時代とか青銅時代とか鉄器時代とか、僕らはいつも新しいもの、何かないかなと考えるんですけども、そういうときにもう一度人間が歩んできた歴史を考えることによって、むしろそういうところにもいろんな新しい素材の使い方があるんじゃないかなと思ったんですね。 そのときに青銅はあれだけ仏像に使われて、昭和30年代ぐらいには銅の洗面器ややかん等がありました。 今はもうすっかりなくなってしまいました。 だからそういうものを何かこういうところで使えないのかなと最初思った時に、銅の持っている尊厳性みたいなものを非常に感じたんですね。 これもそのまま銅だとちょっとテカテカするものですから、少しつや消しをかけ硫化処理をして仕上げをしています。 中島:後ろの背景の銅と金のところ、本当は下からあおるような感じで間接照明を計画をしてたんですけど、それがいつの間にかダウンライトに変わってしまった。それは何かやっぱり不都合があったんですかね? 佐川:正面にご本尊様が来ますので、あんまり光で方向性をつけたくなかったというのと、あとは先ほど銅で、こういう須弥壇(しゅみだん)というのは大体金色が多いんですが背景がわき役になっていく、そういう素材でも銅を使ってみたかったというのがあるんですね。 あとは須弥壇が前の方に来ましたので、光も下からやるとちょっとおさまりも悪かったということがあるんですね。 中島:そういう建築上の問題で...なるほどね。 実際には天井に蛍光灯のダウンライトを使っています。 配灯的には我々の考え方としては、いわゆるご本尊を中心に、明るくして、あとは光というのはできるだけ両サイドの壁を照らしたり、後ろの金と銅の壁を間接的に照らしたりして、そのご本尊だけダウンライトできれいに浮かび上がるようなという、そういう考え方があったと思うんですけど...こういう光でとりあえずよかったんでしょうか? 佐川:住職はとても、全体的に女性的な雰囲気があると言っていましたね。 中島:それとは別に、いわゆる仏具としての明かり、ろうそくの光とかがありますよね。そういうものが加わってくると、また大分様子が変わってくると思いますけど。 佐川:そうですね。 祭事をやるときにはもうちょっと華があったりするので、もっと鮮やかになるんですよね。 中島:陰影になりますよね。 佐川:それがまたとってもきれいですよね。 中島:なるほどね。だからあんまり極端に演出しなくても、そのものが華やかな感じだから、均一な光で見えてくるだけでもいいんじゃないかと... 佐川:内陣との間に一段高く段差をつけたりするんですけども。 むしろここは、材料の違いで表現しました。 皆さん一体になっていくという、そういうのをちょっとつくりたかったというか、こっちでは特別で、こっちは普通のじゃなくて、とにかく一体で何かお祈りするっていうのかな。 ちょっとまた話がそれるかもしれないけど、結局、人間の人という文字は、人間が太陽に向かって祈るという姿ですよね。 結婚式の時によくもう1人が支えるんだっていうのは後でつくったことで、人間が困って「あなたはあと3カ月で死にますよ」といった時には、もうあと何をするかといったら祈るしかないわけですね。 それで祈るっていう字は、こういうふうになってこうなってそれが人ということで、古代中国の甲骨文字に書いてあるんですけども、そういうものも含めてここを表現できないかなということで、あまり死後の世界、こっち方じゃなくて、平たくすることも一つの方向かなと...ですが仏教の中であんまりそういうことはしないと思うので、説明をして。 中島:住職さんは庫裏に向かう廊下の照明をすごく気に入っているという話を聞いたんですけども、これはいわゆるダウンライトと、それから壁に光を埋め込んでいまして、それが天井に光が当たるような形で間接照明となっています。 佐川:ここの僕の感想を言っていいですか。庫裏は結局、住宅ですよね。 こっちから祭事が始まる。そのときにやっぱり気持ちの高揚から落ちつかせるというのが住職はあると思うんですよね。 住職といっても普通の人間がお坊さんになっていくわけですよね。 そういうモチベーションを上げていくような効果が、照明はあるんじゃないかなという気がしたんですね。 これはやっぱり頼んでよかったなって、そういうこと思いましたね。 ![]() 中島:なるほどね。一応その住居部のほうに入っていくわけですけど、これは天井がヴォールト天井、屋根もヴォールトですよね。 屋根はどういうふうになってるんですか? 佐川:屋根はコンクリートで、外断熱になっています。 中島:コンクリートで外断熱。その内側に天井を持ってきている。 佐川:そうです。これ石膏ボードで曲げて、塗装の仕上げです。 中島:ちょっと仕上げが悪いとムラが出ますよね。 特にこの辺が難しいところだったと思うんですけど、前に私が佐川さんと一緒にやったときに... あれは芦川邸でしたっけ、あのときに天井の仕上げのむらが出ましたよね。 昼間は全然感じなかったんだけど、照明がついたときにしまったと思いましたけど、やっぱり仕上げとか、下地が悪いと間接照明はもろに悪さ加減が出ますよね。 そのときにやり直しをしまして、そのときに、たしか佐川さんは電気をつけた状態でやり直してくれと指示しましたよね。 それは要するにそういう間接照明をつけると陰影が出るから、その陰影の影響を知ってやり直さないと、昼間の光でやってもまた同じことになっちゃうからですね。今回これはどうでしたか? 佐川:これは非常に仕上げはきれいでしたよね。 なかなかこれだけの大きなヴォールトだと職人さんは大変なんですよね。 皆さんやっぱりこういうときにすぐ厚い壁紙にしてくれとか、他の材料にしてくれってすぐみんな逃げにいっちゃうんですけど、やっぱり匠のわざというか、そういうことでは成長していかないと思うんですね。 先ほどの小学校を木造でやったのも、今までの公共工事というのは、悪い言い方をするとゼネコンがある程度ピンはねしていて、「はい、下でやりなさい」っていうふうにやってしまうんですけど、やっぱり僕は本来の公共工事というのは、そこの地域に住んでいく人が自分の匠の技をつくって、それを次の世代につなげていくことが大事だと思うんですね。 それが1回きりで終わってしまうと、それこそ伝統文化って残っていかないと思うんですね。 だから先ほどの唐破風なんかでもそうですけども、わざと前のものにこだわったのは、仮にこの建物が30年、50年過ぎて壊されたときに、もう一回大工さんがそれを分解することによって、「50年前はこんな組み方でこんな知恵を使ってやっていたのか」と、それをまた50年後の先に伝えていくことができると思うんですね。 そういう伝えるものがなかったらば、本当につくって壊して、つくって壊しての繰り返しで終わっちゃうと思うんですね。 そういう工夫を、現代の素材でもつなげていくことはできると思うんですね。 中島:結局、照明もそうなんだけど、最初よければいい、それで竣工写真撮って、いわゆる作品として発表できればいいという現場って多いと思うんですね。 1年、2年後行ってみたら、ランプが歯抜けになっていたり、建築のほうのメンテナンスがよくなかったり、結局何年ももたないうちに、20年、30年で建てかえちゃうという部分があると思うんですね。 僕は照明も作品をつくっちゃいけないと思うんですよ。 やっぱり最初の年、最初の瞬間がよくて...瞬間よくてというのはそれはイベント空間はいいですよ、でも多くの建築は長期間使うわけですから、その長期間できるだけ最初の状況が容易に維持できるような、そういうメンテナンス性を考えた空間でなければいけないですね。 それは決して奇抜なものではないし、ごく自然な光だと思うんですね。 そういう建築と照明でなければ、お祭り的で結局長続きせず終わってしまうような感じがしてならないんですよね。 佐川:そうですね。 建物ってかわいそうなもので、建築家がつくると作品で、メーカーがつくると商品で、不動産が扱う建物は物件になっちゃうんですね。 3通りも呼び方ができてしまうというか。 先ほど中島さんは施主と言ったけども、施主というのはとてもきれいな言葉で、最近住宅メーカーの人は建て主と言う方が多くなったと思うんですね。 結局施す心がなくなってきちゃってるんですね。 あれつけろ、これつけろって、みんななるべくクレームを起こさないようにばっかりで、提案ができていかない、そのとおりつくればいい、あと傷のつきにくいものっていう。それはみんなつくる側も建て主になってしまった。 もうちょっと全体的にいい意味で施す心があっていいと思うんですけど、そののりしろの部分がなくなったというのかな。 だからそこら辺ももうちょっとあらためて住教育もしていかなくちゃいけないんじゃないかなって思っています。そういう建築家って意外といないんですよね。 |
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