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Mariotトークセッション

中島:これは住宅ですが、この住宅は特にお施主さんがオーディオビジュアルに非常に凝られていまして、シアタールームを充実させたいということで、そこの部屋を中心としながら全体の照明計画をさせていただきました。
天井が少し高くなっていますので、そこに蛍光灯の間接照明を入れています。
本当は白熱灯で調光ができれば一番よかったんですけど、いろいろメンテナンス面も考慮し、蛍光灯で間接照明をして、高い天井をより強調しております。
それから4灯のペンダントが下がっておりますが、このペンダントは絞られた光が出ます。スクリーンが手前に来ますので、そのスクリーンに光が当たらないようにしました。
映画を見ている時には、何かパンフレットを見たり、その映画の説明なんかも見たりしますから、全く光がないと見えないので、天井の光は消してペンダントの光を調光で少し落として、字が見える程度の明るさにしながら映画を楽しむという形になっております。

この家のいわゆるダイニングルーム、ダイニングキッチンです。
シンクがありまして、シンク兼ここで簡単な食事ができるようなカウンターになっています。
そこに三つのペンダントがつり下がっています。
1灯の光だけですと影になっていて作業しにくくなりますので、このカウンターの長さですから、小さな器具を3灯ぐらいが適当だということで、そのような器具を選ばせていただきました。
この器具の光とは別に、つり戸棚の上とか、収納家具にスペースがあれば間接的な光を入れて、全体の照明をとりながら、アクセントとして食卓のカウンターを照らしているという形になっております。

これは私が今年の夏、4日間ほど体調を崩しまして入院したときの写真です。
私が入っていた部屋にはダウンライトがありまして、写真で見ると白い光ですけど、実際は色温度が高い青白い光でした。
天井の真ん中に蛍光灯が煌々と光っていました。
仰向けになって天井を見ているわけですけど、昼間は自然光が入ってくるので点灯せずにいました。
点灯して写真を撮ってみるととてもその光がイヤでした。
多分お医者さんが検診に来たときも、私は天井の光を切って昼間は自然光を入れていましたので、4日間のうちに1回も天井の光はつけてない。夜もこの光で過ごすのはちょっとつらいなということで、家内に照明器具を持ってきてもらって、足もとのところにクリップ式のスポットライトをつけていました。
そうしたらなぜかわからないけど、4日間のうち10人ぐらい違う看護師が来まして、この雰囲気を体感したかったのかどうかは分からないんですけど、何するわけでもなくちょっと点滴の針を見たり、点滴スピードを速めてみたり、遅めてみたり、そんな作業しかしていないんですけど、珍しそうに見て帰っていきました。
おそらく他の病室はこんなふうに照明されておりませんから、珍しかったと思うんです。
天井の照明を切ったらとても快適でした。
明かりだけではもの足りないと思い、お香を持ってきてちょっと香りも入れたんですね。さらに雰囲気がよくなりました。
特に昼間の明かりは別としても、夜なんかもこれでいいんじゃないかと思うぐらいなことをちょっと体験しまして、看護師さんに今回照明を変えたことを何も言われなかったので、多分彼らもその良さを感じ取ってくれたんじゃないかなと思っています。
もう少し病室の照明を考えてもらいたいなという気持ちになったわけです。

某社長さん宅です。ご夫婦とも高齢の方です。
ここは内装にほとんど木を使っております。
ですからその木をより温かい形で強調するためにも、白熱灯もしくは蛍光灯の電球色を使って照明しております。
普通は電球色も白色もしばらくそこにいると色順応といい目がその色に慣れてしまって、最初に入ったときの印象ほど電球色の感じとか、白色の感じがなくなるんですね。
目がその色になれてしまうと、どちらも同じような感じの白っぽい光に見えてしまう体験を我々しています。
ところが内装にこういう強い色味の、特に木を使っていますと順応しないんですね。
ですから本当に温かさがそのまま残った状態でいつもでも落ち着いた雰囲気でこの中で過ごすことができます。私もこの空間で長い時間居させてもらいましたけど、なかなか順応しないという体感をいたしました。

これは実際にかえた器具なんですけど、基本的にはやっぱり食卓で食事をするときに、テーブルを見るわけですけど、実際にはそのテーブルだけを見てるんじゃなくて全体を見ている。
その全体を見ている中で、そのペンダントの中のランプが見えてしまうということは非常に不快な思いをするし、せっかくテーブルデザインとか料理がセットされても、それが非常によく見えない、まぶしさのほうが気になってしまう状態になる。

私たちは器具を選ぶ場合に、本当は遮光角45度、50度、つまりランプがその器具の下面から奥のほうに入っている器具を選ばなければいけなかったんですけど、この器具を選んでしまったというのは、この家はイタリアがテーマで、お施主さんも非常にイタリアがお好きでということを意識してしまいイタリアデザインのものを入れてしまったのがそもそもの失敗でありました。
結局、こういうランプが奥に入ってまぶしくないものに取り替える事で、テーブル面のところが非常にほどよいいい明るさで照明されて、これでいいと言われました。
そういう意味ではまぶしい光というのは、特に高齢の方にはよくないんでそこはちゃんと注意してやらなきゃいけないなという反省をいたしました。

これは私の友達が設計した家ですけど、この友達はインテリアコーディネーターの方で、自分で照明を勉強してこのような照明にしました。
例えばダイニングテーブルにペンダント1灯というのは、食卓に置かれたグラスに映る光も一つしか映らないんですね。
ところが食卓にたくさんの光がありますと、ペンダントじゃなくてもスポットライトでもダウンライトでもいいんですけど、幾つかの光が映り込みますから、とても華やいだ印象を空間に与えることができるのです。
できれば1灯のペンダントの光あるいは1灯のスポットライト、ダウンライトの光で食卓を演出するよりは、2灯、場合によっては3灯、そのぐらいの光で演出するとすごく華やいだ感じに雰囲気がガラッと変わりますので、そういうようなことをやってみたらという話を前にしたことがありました。

それを実践していただきまして、おかげで非常にいい感じになりましたと言われました。
その方は、光というのは、単に物を見せるだけ、環境を照らすだけではなくて、何かきれいなものを照らすことによって気持ちが和らぐという気持ちがあって、本当にさりげなく目立たないところに光をおき、そこにちょっと装飾を入れることで、その装飾と光が一体になりとてもいい空間をつくってくれていました。

これは和室です。
和室もそこでお茶を飲んだり、食事したりすることもあるかもしれませんので、やはりダイニングルームと同じような感覚で、ただ光はダイニングルームほど指向性のある光
(影ができるような強い光のこと)ではなくて、やわらかい陰影が出る4灯の光を用意しています。
そのほかに丸窓から差し込む光とか、スタンドの光で雰囲気を楽しみたいときにつけかえで、いかようにも雰囲気が変わるようにしているようです。

これは私の家なんです。
私は照明の仕事をしていますので、できるだけ新しい光が出たらその光を自分で使ってみて、自分の体で感じてみています。
照明は資料で見てこうだ、というのではなく、やっぱり自分たちで光を感じなくちゃいけないということで、できるだけ新しいものを家に取り入れる。
今はLEDが非常に流行しています。
まだそれほどパワーがないんですけど、一般照明用として使える明るさになってくるのも時間の問題だと思うんですね。
LEDで室内の全ての明るさを得るにはパワー的に弱いです。
十分な明るさがとれないので、普通の照明にLEDをちょっと付加するような形で、30%ぐらいをLEDにして生活しています。

LEDというのは実は面光源もありまして有機EL(エレクトロルミネッセンス)、これもLEDの一種であります。
ELも有機と無機の二つに分かれています。
両方とも競り合ってどっちが優位になるかわからない。
今のところ有機ELが有利なんですけど、無機ELというのは大きい発光面ができるといいます。これは無機ELを使って棚の上に置いています。
薄い、本当に紙っぺらみたいな光源ですから、それを置いて近くに電源をとってやればこういう光が簡単に出るわけです。
そういうことで新しい光を体感しながら、果たしてこういう光が私たちの生活の中で使えるかどうかを自分で確認してみたいということでやっています。
今のところまだ難しいですね。
もう少し時間がたたないと本当にいい光にならないと思います。
でも、それはさっき言ったように時間の問題で、やがていい光の質に変わってくると思いますので、これからは絶対このランプを使えるようになるかなと思っております。

医、食、住のテーマからそれますが、次に、この10月に開通する橋のライトアップの様子です。
これはベトナムのバイチャイという、ハノイから車で3時間ぐらいのハロン湾といって、海の中に小島がたくさん点在しているところです。
ここは世界遺産ですから、あまり煌々と照らすようなことはやめてほしいと。
しかし実はタワーの間の長さが世界一と、大きい橋なので、それなりに地域の人たちに夜も見ていただきたいということでした。
実際、これは開通前の照明実験時の写真で、光の角度調整もまだ十分でないので、若干ムラが出ていると思います。

ここで私は150wのメタルハライドランプを多用しています。
このぐらいの規模の橋だと、今までは1kw前後のものを使ってたんですね。
そういうパワーのものはやめまして、ぐっとワット数を下げています。
ケーブルに光が当たればいいわけで、いくら1kwあっても、空に光が抜けちゃう場合がほとんどですよね。
おそらく90何%空に抜ける。それを90何%じゃなくて80%、70%に抑えてやれば、150wでも十分にこの明るさを出せるわけです。
これは何回も実験や3DCGで計算しながら確認をして、ケーブルは150wのパワーでやらせてもらっています。

...ということで、私より医食住が混在した形でしたが、お話しさせていただきました。

佐川さんとは、先程佐川さんのスライドで、多摩川の「芦川邸」という住宅がありましたが、そこで初めて一緒に仕事をさせていただきました。
コンクリートと木、それも無垢材を多用して建築されて、しかももともと古いちょっと民家風の建物を改築したということで、全部一応取り壊してはいるんですけど、その中で大黒柱とか、欄間とかそういった一部、この建築の中で使えそうなものをうまく使ってデザインされたんで、すごく感銘しました。
そしておもしろい建築デザインをされる方だなということで、ぜひとも佐川さんの建築を意図する光を実現したいということで、いろいろ打ち合わせしながら、でき上がった現場がさっき最初のほうに出た例です。
その他幾つか仕事をさせていただきました。

たまたま佐川さんとは、久成寺という、今年の5月に竣工したお寺と、庫裏というその住職さんが住まわれる住宅の照明をちょっとお手伝いさせていただきました。
その久成寺を事例に用いまして、お話をしていきたいなと考えております。
先ほどからいろいろと建築を見させていただきまして、いくつか私たちも参加させていただいたんですけど、さっきもちょっとお話にありましたが、集成材、特に無垢材を使うということにこだわっている。
大体どこの、どんな建築でも木、しかも無垢材を使うんですか?

佐川:消防法の関係もありますけども、たとえ1本でも2本でも、必ずどこかにはそういうものにこだわっているのです。
顔の見える関係というのかな、素材としてではなくて、例えば現代建築の場合には、もちろん建築ですから哲学とかいろんなメッセージを込めてやるんですけども、例えば日本人として1000年残せる建築ってあるのかなと考えた場合に、今の現代建築は、もちろん私も含めて何もないと思うんですよね。
いくらものすごいデザイン、話題になった、世界で賞をとった建築が、本当に1000年残せるでしょうか。
せいぜい僕は100年残せるかとかいう感じがするんですよね。
そのときに1000年残せる素材って何かなと思ったときに、なんだ、法隆寺があるじゃないかとか、薬師寺があるじゃないか、日本人としての何かが、ちゃんとここにあるじゃないかと思いました。
たまたま私は、薬師寺に友人がいるのでお寺に通いながらでそんなことをちょっと思いまして、木というのはそういうきっかけもあります。

中島:無垢の木というのは、普通の合板なんかに比べるとやっぱり高いんですか?

佐川:今、40坪の家で、外材と日本の国産材でやったら多分3万とか4万ぐらいの差か、それとももう同じぐらいだと思います。

中島:そんなに違いはない。

佐川:12センチ角の60年たった木が山元で多分1本2000円ぐらいじゃないでしょうか。

中島:ただ、そういう無垢材を使うときに、やっぱり自然の木ですから、いろいろ使っているうちにそったり割れたりという問題なんかもありますよね。

佐川:あります。

中島:そういうことはあんまり心配されないんですか?

佐川:多分ハウスメーカーとか大量にやっている場合なんかだと、それはクレームになるでしょうけど。
やはり当たり前ですけども、人間も木も節があったほうが強くなるんですよ。
そういうのは多分建築家が今まで、一般の人に説明していかなかったというか、ただ床の間みたいに北山杉で1本100万ですよと、高く売るためにみんな節をなくしてしまった。
もちろん含水率を低く抑えてやることも大事ですけども、たまには木は必ず割れる音が出ますよと、寝ているときにゴーっと、ガッ、ガッと何か音出ますよってそういうのをきちっと説明すれば、次の日「佐川さん、なんかバリっとなって木から音がでましたよ」って逆にうれしく電話をよこす方なんかもいます。
それはやっぱり生きている証拠ですから....